表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
98/100

ヒーローショー



   *****



 帝都の日曜日朝のスーパーヒーロータイムでは、9月から「柳生十兵衛セイバー」が放映される。


「ようやく俺らしくなったな!」


 十兵衛は浮かれていた。彼は長年「柳生十兵衛シリーズ」を務めている武人であり文化人でもあった。


 兵法の達人にして、書にも優れる。


 そんな十兵衛だからこそ「柳生十兵衛セイバー」が楽しみで仕方ないのだ。


「さあて、今日もやるか…… 子どもの未来を守るためにな!」





 本日は某遊園地にてスーパーヒーローショーである。


 「魔進剣隊キラ忍者ニンジャー」、「柳生十兵衛ゼロワン」、「ヒーリングっと戦乙女プリピュア」、全てのショーが開催された。


 これも未来のためにであった。


 女性が命の象徴ならば、子どもは未来の象徴である。


 男は命と未来を守るのが使命なのだ。


 キラニンジャーショーが終了すると、柳生十兵衛ゼロワンとヒーリングっと戦乙女プリピュアの合同ショーが行われた。


 舞台はなぜか四角いジャングル……


 リングの上だ!


「さあ来いいい!」


 ヒーリングっと戦乙女プリピュアの敵幹部の一人、グアイワルーがリングの上で吠えた。


 身長は百九十センチ前後、体重は百キロ以上だろうか。グアイワルーは自粛の空気を吹き飛ばす勢いだ。


「いくぞおおお!」


 十兵衛はトップロープに手をかけて飛び越え、リングに立った。


 グレース、フォンテーヌ、スパークルの戦乙女プリピュア三名は、暑い上にマスク着用なので熱中症の恐れがある。


 敵幹部の美少年ダルイゼーと美女シンドイーワも、やる気はなさそうだ。


 だからこそ、まさかのプロレス展開だったが、幼児のお父さん方は少しだけ興味深げだ。


 ーーカアーン!


 ゴングと共に踏みこんだ十兵衛。


 疾風のような速さでグアイワルーに右ローキックを放つ。


 ーーパアン!


 グアイワルーの左太股に炸裂した十兵衛の右ローキック。グアイワルーは目をむいた。


「このお!」


 グアイワルーは体格差を活かして十兵衛に組みつこうとする。


 十兵衛はグアイワルーのタックルを避け、ロープに飛んだ。


 そしてロープの反動を利用して跳躍しながら、体を前方に回転させーー


 十兵衛はグアイワルーの背後に飛びつきながら組みついた。


「ぐおお、こ、これは!」


 グアイワルーはうめく。彼の腰に乗った十兵衛は、内腿へと足を絡ませーー


 更に両腕は下方から上へと押し上げられている。


 グアイワルーがパワーで返そうとしても、力の入りにくい体勢なので難しい。


 いや、それよりもこの技の方が問題だ。


 この技こそ伝説の正義商人、戦争マンの必殺技ーー



「パロ・スペシャルだ!」



 十兵衛はパロ・スペシャルでグアイワルーを攻めた。


 グアイワルーは全身の力を振り絞って、パロ・スペシャルを跳ね返そうとする。


 リングを囲んだパパさん方の興奮の熱気が、会場を包みこむ。


 正義商人の熱き闘いの物語は、四十才前後の男性には青春の一ページだ。


「さ、行きましょ」


 そんなパパさん方を放っておいて、ママさん方はお子様を連れて食事に行ってしまいましたとさ。めでたし、めでたし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ