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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
97/100

レディー・ハロウィーン、幻影マンを導く



「カピー!」


 遠い宇宙から来た超アニマル生命体「アニマトロン」のカピバランは吠えた。


 何だか知らんが、宝くじのCMにカピバラが登場しーー


 あまつさえ「カピー!」という間違った雄叫びを上げる様は、元ネタここだろうと、感慨深いものがあったのだ。


「あ、ここにいた!」


 十才くらいの女の子が現れ、カピバランの側に来た。


「もーう、ちゃんとおりこうさんにしててよ!」


「あなたたち、ご飯よ~」


 カピバランと女の子を呼ぶのは、割烹着姿の婦人である。美人である。女の子の母親だ。


 ここは未亡人の美人女将が経営する小料理屋である。


 地球人のアニマトロン狩りから逃れたカピバランは、今ではこの店の客引きであり、マスコット的存在であった。


「……は!」


 女の子に従って店内に戻ろうとしたカピバランは、異様な気配を感じて振り返った。


 庭の隅の暗がりにいたのは、謎のUMAトロンのアマビエンだ。


 アマビエンは、謎のUMAトロンであるモスマーンと同一の存在である。


 伝承によれば妖怪アマビエは疫病を予言し、UMAのモスマンも事故を予言した。


 それは人々を平和へと導く、大宇宙の大いなる意思の顕現けんげんではないか。


 そのアマビエンは、カピバランを見つめながら、ハンカチを噛みしめ、引きちぎらんばかりにうめいている……


「な、何! どうしたんだよ!」


 カピバランは慌ててアマビエンをなだめるが、何の答えもなかった。


 超越の存在であるアマビエンは、カピバランに嫉妬しているようだ。


 ーービ、ビエ~……


「いや、ちょっと待とうよ!」


 カピバランは慌てる。彼の女難は尽きる事がないのだ……



   *****



 人知を越えた力を持ち、人の世の経済を司る存在……


 人は彼らを「正義商人」、「悪魔商人」、「完璧商人」と呼んだ……!





 完璧商人始祖パーフェクトオリジンである幻影マンーー


 「サマー誘惑テンプテーション」は、己の居城で体育座りしていた。


 夏だというのに、人々から活力は失われている。それがたまらなく悲しいのだ。


 なぜなら「サマー誘惑テンプテーション」は、夏を司る商人だから。


 彼とは敵対する商人「蝶人バーベQ」も、夏がメインの活動であるから、いずこかで意気消沈していることだろう……


 ーーバァン!


 その時、扉を開いて姿を現したのはレディー・ハロウィーンだ。


 妙齢の欧州系美人のレディー・ハロウィーンは、キャミソールにハーフパンツという姿だ。


 ピーチ・○ョンの女性モデルという噂もあるレディー・ハロウィーンは、身長百六十センチ前後の細身の美人である。


 その、きつめの眼差しが、まっすぐに 「サマー誘惑テンプテーション」を見つめている……


「何をやってんのよ! あんたは完璧商人始祖パーフェクトオリジンの一人でしょ!」


 レディー・ハロウィーンの一喝が 、「サマー誘惑テンプテーション」の憂鬱を吹き飛ばした。


 彼女はレジャー大帝GWを救えなかった。


 普段は敵対している正義・悪魔・完璧の三属性の商人達だが、その根底には、人々の笑顔と平和の実現という理想があるのだ。


「……俺を侮るか、レディー・ハロウィーン!」


 「サマー誘惑テンプテーション」は、体育座りの姿勢から立ち上がった。


 その瞳には炎に似た決意が燃え上がっている。


 病と天災に人々の活力は奪われてしまったが、それを越えて、笑顔と平和を造り出す事こそ商人の使命ーー


 レディー・ハロウィーンと「サマー誘惑テンプテーション」の使命なのだ。


「いくぞ、レディー・ハロウィーン! 我こそ最強の商人だ!」


 「サマー誘惑テンプテーション」は、勇ましくレディー・ハロウィーンに突き進む。


 その顔には微塵の迷いもない。


「フ、そんなセリフは私の首をってからにしなさいよ!」


 レディー・ハロウィーンの顔にも笑みが浮かんだ。


 きつい、厳しいと言われるレディー・ハロウィーンだが、彼女の厳しい愛によって「サマー誘惑テンプテーション」は立ち上がったのだ!


「カレイド・スコープ・ドリラー!」


 「サマー誘惑テンプテーション」は左腕にそなえられたドリルでレディー・ハロウィーンを襲った。


「はあ!」


 レディー・ハロウィーンは踏みこみながらドリルを避け、「サマー誘惑テンプテーション」の右膝を踏み台にして跳躍した。


 そして空中で右後ろ回し蹴りを放つ。


 レディー・ハロウィーンの放つ蹴りは、究極のキックと呼ばれるーー


昇天アセンション!」


 レディー・ハロウィーンの右後ろ回し蹴りが、「サマー誘惑テンプテーション」の延髄に炸裂した。


 崩れ落ちる「サマー誘惑テンプテーション」。


 だが、負けて尚、彼の顔には満足があった。


 全身全霊を尽くした果ての、清々しいまでの完敗であった。


「一瞬の隙、私の目は逃さないわ!」


 着地したレディー・ハロウィーンは、「サマー誘惑テンプテーション」にウインクした。


 女性の明るさ、そして生命力は全てを救うのだ。



   *****



 ところ変わって、北の大地ーー


 サンタさんのログハウスでは、精神マンとガンマンが言い合っていた。


「ニャガニャガー、海ですよー!」


 完璧商人始祖パーフェクトオリジンの一人、精神マンは海に遊びに行こうと主張していた。すでに水着と浮き輪も用意していた。


「シャババババー、山だー!」


 すでにリュックを背負った登山スタイルの眼マン。


 彼もまた完璧商人始祖パーフェクトオリジンの一人だが、とにかく昔から精神マンとは仲が悪かった。


 今では二人揃ってサンタさんのトナカイ役を務めているがーー


「…………海」


 サンタさんはーー


 完璧商人始祖パーフェクトオリジンの一人である白銀マンは、腕組みした尊大アロガントな態度で二人を眺めていた。


「海……!」


 白銀マンは鼻血をダラダラ流しながら行き先を決定した。白銀マンの脳裏には、海で遊ぶ水着姿のうら若き乙女達の姿が思い浮かんだ事であろう。


 奇しくも今、海にはレディー・ハロウィーンと侍女フランケン・ナースが向かっていた。


 細身でスレンダーなレディー・ハロウィーンと違い、長身グラマラスなフランケン・ナースの水着姿を見られたなら、男として本望であろう。


「ニャガニャガー、海ですよー!」


「シャババババー、くそー!」


 喜ぶ精神マンと悔しがる眼マン。


 それには構わず、白銀マンはさっさと身支度して海へと出かけるのであった。めでたし、めでたし。

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