ゴヨウ先生、冥府魔導
ゴヨウ先生の日常は忙しい。忙しいのはいい事だ。
「ショウコ様、燃えるゴミと燃えないゴミは分けてくださいよ!」
「うるせえー!」
ネグリジェ姿の麗しき天魁星「及時雨」ショウコから、ジャンピングニーパッドを叩きこまれるゴヨウ。男はつらいぞ。
百八の魔星の軍師として、今後の活動に様々な提案を考えるゴヨウ。
病魔、地震、大雨ーー
その救助活動もある。人材配置に予算の決定と、ゴヨウは頭を使う事ばかりだ。
「気晴らしにカフェでも行くか?」
そう誘うのはサポートロボットのチョウガイだ。
このサポートロボットは、百八の魔星の守護神であるチョウガイの意識がダウンロードされている。
いわばチョウガイの世を忍ぶ仮の姿だ。
「うん、ちょっと行ってみよう」
ゴヨウは頬を押さえながら超時空要塞「梁山泊」から帝都の町中へ出た。
「あ、あら、偶然ね」
ゴヨウがチョウガイと共に行きつけのカフェの店先でお茶していると、声をかけてきたのは、戦乙女の気の強そうな小柄な少女シルキーローズと、品のあるお嬢様風の少女セレーネだ。
彼女達二人はゴヨウの事がちょっとだけ気になるのだ。今もこっそりストーキングしていたが、知らぬはゴヨウばかりだ。
「いろいろあるよね~……」
ゴヨウはアフタヌーンティーを楽しみつつ、シルキーローズとセレーネにケーキのセットもおごる。
彼はいつも金欠だ。他人に使ってばかりだから。
「あら、ゴヨウ先生。両手に花ですね」
通りすがりのハードゥが何か秘めた笑顔でゴヨウに声をかけてきた。
シルキーローズとセレーネは敵対心丸出しでハードゥを見た。
ハードゥは異次元でゴヨウと共に戦い抜いたから、不思議な絆が産まれていたのだ。
「なによ、この女」
シルキーローズはゴヨウの頬をつねりあげた。
「ゴヨウ先生、おっぱい大きい方が好きなんですね」
セレーネは笑顔で皮肉を言う。小さなテーブルに殺気が満ち、チョウガイは早々と逃げていた。
「ーーそうねえ、ゴヨウ先生のせいで少女ではいられなくなっちゃったの~」
ハードゥはニコニコしながら言った。意味深な発言だ。
異次元で共に戦った戦友ならばこそ、少女ではいられないとの意味だろうがーー
「どういう事よ!」
シルキーローズは椅子を倒しながら立ち上がった。
「ゴヨウ先生、どういう事ですか!」
セレーネにいたってはゴヨウの首を細い指でしめている。危うしゴヨウ先生。
「お、男は最高だ……」
涙まで浮かんだゴヨウの首を、セレーネはなおも締めた。温厚なセレーネが怒ると怖かった。




