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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
91/100

混沌(カオス)の追憶 ~はぐっと球団・一試合完全燃焼~



   *****



 ゴヨウやチョウガイらが混沌カオスと戦っていた一方では、聖母様に仕える戦乙女らも戦いに臨んでいた。


 彼女達もまた概念や存在の意義を守る「守護者ガーディアン」なのだから。





 戦乙女エールが率いる「はぐっと球団」は、混沌カオスの波動を受けて悪と化していた「アスクライ球団」と試合に臨んでいた。


「うう、肩がオーバーヒートしました……」


 九回表、戦乙女アムールは右肩をおさえてうめく。


 初のアンドロイド戦乙女たるアムールは、怪力を活かして相棒の戦乙女マシェリを空に放り投げるという超人プレーを披露していたがーー


 マシェリはアキレス腱を切るという大怪我を負って一塁ベースで気絶していた。


 エールはピッチャー、三塁を戦乙女アンジェ、外野はアムールと二塁につく戦乙女エトワールで守っていた。


 子どもなマシェリと違い、背も高いエトワールを投げてホームランボールすら捕球していたアムールだが、その右肩からは白煙が立ち上っている……


 キャッチャーのハリー(見た目はチャラいイケメンだが正体はハムスター型妖精)は役には立たず……


「ひどいやないかい!」


「どうする、アンジェ?」


「大丈夫です、私にいい考えがあります!」


「お前ら、わいを無視すんなや!」


 作戦タイム終了後、バッターはアスクライ球団のリーダー、蔵井くらい譲二じょうじである。


 彼の決死の覚悟は、自身が混沌カオスの波動を受けて悪と化したために、四人の部下を失ってしまったからだ。


 若いチャラ男のチャラリートン。


 美魔女(かな?)のバップル。


 中年太りな中間管理職のダイアン。

 

 ナイスミドルなリストール……


 自分を信じてついてきてくれた四人の部下は、恨み言一つなく、ただ一試合に完全燃焼するために、熱いプレーで観客を魅了し、そしてグラウンドに散っていった……


「おい、これは野球じゃないんかい!」


 ハリーのツッコミは絶妙だ。


 だが当初、蔵井譲二はデスマッチ野球を提唱し、エールらは敢えて受けて立った。


 それが正道であるからだ。


「まあ、それはいいんやが……」


 ハリーのぼやきは放っておきーー


 途中、デスマッチ野球もチャリートンの命を懸けた同点満塁ホームランによって終息した。


 先発のバップルはエールに大ダメージを与えた後、すっぴんになってしまったため自主的退場。


 ダイアンは大きな腹で打球を受け止めるが、ダウンした。


「野球やろがー!」


 ハリーと旧知のリストールは、フェンス際でホームランボールをキャッチするも血を吹いて倒れた。


「おーい、野球なんやろ!」


「私はやる! みんな見守っていてくれてくれ!」


 ハリーのツッコミを無視し、蔵井譲二は満身創痍ながら決死の覚悟でバッターボックスに立つ。


 すでに彼は混沌カオスの波動から解き放たれていたようだ。


 エールの包みこむような愛と、部下達の活躍によって……


「くっ!」


 ピッチャーのエールが球を投げた。エールもすでに満身創痍、その球速は落ちている。


「ぬん!」


 蔵井譲二も決死の覚悟でフルスイングした。


 カアンと甲高い音を発して白球は高く上がった。


 勢いこそないが、ホームランコースである。通常ならばフェンス際で捕れるか微妙なところだろう。


 だが、これは超人たちの野球なのだ。


「いくよ!」


 エトワールが外野のアムールの方へ駆け出した。


「ええ!」


 アンジェもである。彼女達には秘策があるのだ。


「了解!」


 外野のアムールは膝を屈めた。一見すると短距離走のクラウチングスタートの姿勢であった。


 そのアムールの背にエトワールが飛び乗り、膝を屈めーー


 更にエトワールの背にはアンジェまでが駆け上がった。


 三人の姿は人間トーテムポールのごとくだ。


「な、なんだ!」


 一塁へと早足で駆けていく蔵井譲二。すでに全力疾走する余裕もない。


「た、頼むよ、捕って~……」


 顔を蒼白にしたエールもピッチャーマウンドからアムールらへ振り返っている。


「ーー第一弾発射ー!」


 アムールは勢いよく立ち上がった。アンドロイドたる彼女は、背筋力から生み出された瞬発力で、エトワールとアンジェを空中高く放り上げたのだ。


「第二弾発射ー!」


 更に空中からエトワールが瞬発力を利用してアンジェを空に放り投げた。アンジェの体は空中十メートル以上の高みに浮いた。


(これを捕らなくちゃ、ここまで頑張ってきたみんなの思いが無駄になる!)


 アンジェは空中で必死にグローブをはめた左手を伸ばす。


(やらなくちゃ!)


 アンジェの背から天使に似た光の翼が生えた!

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