帝都を覆う混沌49 ~世界は一つ~
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暗き空と地平線まで続く広野。
その戦場でチョウガイは混沌の尖兵と戦っていた。
「覇王飛竜剣!」
チョウガイは手にした黄金の剣で必殺の突きを放った。
その黄金の一閃は、混沌の尖兵たる巨人の胴体に風穴を開けた。
「燃え尽きろ!」
更にチョウガイは左手に握った炎の鞭を、別の巨人に投げつけた。
鞭は巨人の首に巻きついたと見えるや、炎で巨人の体を包みこみ、一瞬で灰にした。
「お前らがしてきた事の…… 報いを受ける時が来たぞ!」
チョウガイは残った巨人の群れへ、黄金の剣を振るった。
途端に生じた驚くべき光の帯が巨人の群れを包みこみ、全てを消失させていた。
今のチョウガイは魔を降伏する不動明王のごとしだ。
チョウガイは尚も戦場を見回した。すでに動くものは何もなかった。
「終わった……のか」
復活した黄金の剣を握りしめ、チョウガイは目を閉じ瞑想した。
病魔そのものを討つために異空間に飛び込んだチョウガイ。
命と肉体を捨て未来を守る戦いに臨んだ、世界中の多くの人々。
彼らが共に手を取り助け合い、大きな脅威に立ち向かったからこそ世界は救われたのだ。
いや、これは一時の勝利なのだ。
チョウガイにとって倒すべき敵はまだ残っている。彼は四千年を百八の魔星の守護神として存在してきている。
倒すべき敵も、未来を守る戦いも、まだ始まったばかりかもしれない。
そしてチョウガイは思う。
病魔によって世界中の人間が、心を一つにした。
この大いなる奇跡は、必ずや未来に善い結果を残すだろう。
それをもたらしたのは混沌であった。
そして超越の存在たる天母は、混沌と秩序は一つの存在だとも言っていた。
「どういう事なのだ、それは…… 混沌と秩序は一つだと? わからぬ…… 何もわからぬ事が恐ろしい!」
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百八の魔星の超時空要塞「梁山泊」では、女首領のショウコが朝から酒を飲んでいた。
「ええい、ゴヨウのやつめ……」
忌々しげにつぶやきながらショウコは酒をぐいぐい飲む。
病魔を討つために派遣したゴヨウは、未だ生還しない。
そして脳裏にはゴヨウの事ばかり思い返されてくる。
ーーショウコ様、燃えるゴミと燃えないゴミは分けてくださいよ!
ーー俺は役立たずのゴヨウ先生なんで!
ーーショウコ様あ、女子力低下してますよ?
ゴヨウを思い出すだけで、ショウコはイライラしてくる。
長い銀髪の憂いを帯びた美女であるショウコだが、残念な女性に間違いはない。
ーーピピピ
その時、ショウコの部屋の巨大スクリーンが勝手に起動した。
配下からの急な連絡には反応するスクリーンには、ゴヨウからのメールが写し出されていた。
“ヘッドガン大隊は任務を遂行せり”
やったのだ、ゴヨウは鬼道界での戦いにも勝利したのだ。
「ゴヨウ先生が帰ってくるか……」
ショウコは苦笑し、そして安心した。
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「さて、帰ろうよブルックリン」
“了解しました、ゴヨウ”
「ゴヨウ先生、私が協力したからうまくいったんですからね」
ゴヨウとハードゥを乗せたヘッドガンは、戦車形態で時空を越えて帝都への帰路に着いていた……




