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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
90/100

帝都を覆う混沌49 ~世界は一つ~



   *****



 暗き空と地平線まで続く広野。


 その戦場でチョウガイは混沌カオスの尖兵と戦っていた。


「覇王飛竜剣!」


 チョウガイは手にした黄金の剣で必殺の突きを放った。


 その黄金の一閃は、混沌カオスの尖兵たる巨人の胴体に風穴を開けた。


「燃え尽きろ!」


 更にチョウガイは左手に握った炎の鞭を、別の巨人に投げつけた。


 鞭は巨人の首に巻きついたと見えるや、炎で巨人の体を包みこみ、一瞬で灰にした。



「お前らがしてきた事の…… 報いを受ける時が来たぞ!」



 チョウガイは残った巨人の群れへ、黄金の剣を振るった。


 途端に生じた驚くべき光の帯が巨人の群れを包みこみ、全てを消失させていた。


 今のチョウガイは魔を降伏する不動明王のごとしだ。


 チョウガイは尚も戦場を見回した。すでに動くものは何もなかった。


「終わった……のか」


 復活した黄金の剣を握りしめ、チョウガイは目を閉じ瞑想した。


 病魔そのものを討つために異空間に飛び込んだチョウガイ。


 命と肉体を捨て未来を守る戦いに臨んだ、世界中の多くの人々。


 彼らが共に手を取り助け合い、大きな脅威に立ち向かったからこそ世界は救われたのだ。


 いや、これは一時の勝利なのだ。


 チョウガイにとって倒すべき敵はまだ残っている。彼は四千年を百八の魔星の守護神として存在してきている。


 倒すべき敵も、未来を守る戦いも、まだ始まったばかりかもしれない。


 そしてチョウガイは思う。


 病魔によって世界中の人間が、心を一つにした。


 この大いなる奇跡は、必ずや未来に善い結果を残すだろう。


 それをもたらしたのは混沌カオスであった。


 そして超越の存在たる天母は、混沌カオス秩序コスモは一つの存在だとも言っていた。


「どういう事なのだ、それは…… 混沌カオス秩序コスモは一つだと? わからぬ…… 何もわからぬ事が恐ろしい!」



   *****



 百八の魔星の超時空要塞「梁山泊」では、女首領のショウコが朝から酒を飲んでいた。


「ええい、ゴヨウのやつめ……」


 忌々しげにつぶやきながらショウコは酒をぐいぐい飲む。


 病魔を討つために派遣したゴヨウは、未だ生還しない。


 そして脳裏にはゴヨウの事ばかり思い返されてくる。


 ーーショウコ様、燃えるゴミと燃えないゴミは分けてくださいよ!


 ーー俺は役立たずのゴヨウ先生なんで!


 ーーショウコ様あ、女子力低下してますよ?


 ゴヨウを思い出すだけで、ショウコはイライラしてくる。


 長い銀髪の憂いを帯びた美女であるショウコだが、残念な女性ひとに間違いはない。


 ーーピピピ


 その時、ショウコの部屋の巨大スクリーンが勝手に起動した。


 配下からの急な連絡には反応するスクリーンには、ゴヨウからのメールが写し出されていた。



“ヘッドガン大隊は任務を遂行せり”



 やったのだ、ゴヨウは鬼道界での戦いにも勝利したのだ。


「ゴヨウ先生が帰ってくるか……」


 ショウコは苦笑し、そして安心した。



   *****



「さて、帰ろうよブルックリン」


“了解しました、ゴヨウ”


「ゴヨウ先生、私が協力したからうまくいったんですからね」


 ゴヨウとハードゥを乗せたヘッドガンは、戦車形態で時空を越えて帝都への帰路に着いていた……

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