表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
88/100

帝都を覆う混沌47 ~軍神、暗黒竜を討つ~



   ******



 混沌カオスの闇の底で、軍神スサノーと暗黒竜メデュースの戦いは続いていた。


 幾度となく殺神されながらも、スサノーは復活してきた。


 スサノーはただの神ではない。


 天帝が人間の魂と、宇宙コズミックフォージから造り出した新造神だ。


 この宇宙の力を無限に引き出す事ができるスサノーを、滅ぼす事はできぬ。


 彼は使命を全うするまで復活し、戦い続けるのだーー


「はあっ!」


 決死の覚悟をみなぎらせたスサノーは、鞘から光皇神剣を抜き放つ。


 抜刀と同時に放たれた居合の技だ。


 スサノーの神気を秘めた刃が闇を切り裂き、メデュースの右目を傷つけた。


 ーーグオオオオ!


 混沌カオスの闇の底に、メデュースの悲鳴が響く。


 そしてスサノーは左手に握った鞘を投げ捨てた。


 これは彼の覚悟の現れだ。


 刀は魂、鞘は戻るべき肉体。


 その鞘を捨てたという事は、スサノーは死をーー


 否、この宇宙からの完全消滅すら覚悟したのだ。


「はあ!」


 スサノーは右手の光皇神剣を高く掲げた。


 刃が光輝き、瞬間、混沌カオスの闇の底を明るく照らし出した。


 そのまぶしさと熱がメデュースを怯ませた。


「覚悟っ!」


 スサノーは光皇神剣を手にして跳躍した。


 そして光皇神剣を逆手に握り、メデュースの額に突き刺した。


 両手で突き刺した光皇神剣の鋭い切っ先は、メデュースの額を貫き、その魂までをも傷つけた。


 ーーギョオオオ!


 メデュースの断末魔の叫びが、混沌カオスの闇の底にこだましたーー


“……汝ハ何ヲ支エニ戦ウ?”


 メデュースは薄れ行く意識の中、最後にスサノーに問う。


「俺は……」


 その時スサノーの脳裏には、三人の女性が思い浮かんだ。


 聖母様に仕える戦乙女の一人、戦乙女サニー。


 外宇宙からの侵略者だったアウター。


 軍神の秘密を探る淫魔サキュバスのアルフォンシーヌ……


 彼女達三人はスサノーをめぐる恋敵同士だが、彼のためならば命すら惜しまなかった。


 そこでスサノーは気づいた。


 サニー、アウター、アルフォンシーヌ、彼女らの愛が彼を支え、そして今も勝利に導いたのだと。


 それが理解できた時、スサノーの両目から涙が流れた。


 新造神として造り出されて、初めて流す純粋な涙であった。


 今スサノーは新造神ではなく、真の軍神となったのだ。


“……ソレデコソ天道ナリ”


 メデュースは満足したかのように消失した。


 そして混沌カオスの闇の底は、空間そのものが歪み、消滅を開始した。


「スサノー、早く来て!」


 スサノーが女性の声に視線を持ち上げれば、いつの間にかサニー、アウター、アルフォンシーヌの姿があった。


「さ、スサノー。帰ったら、うちのお店でご飯食べよ」


 サニーははにかんだ笑みで、スサノーの左腕に抱きついた。


「スサノー、お帰り。一緒に帰ろ!」


 アウターもまた泣き笑いの顔で、スサノーを背から抱きしめた。


「三人とも早く! この闇が崩壊するわ!」


 艶かしい姿のアルフォンシーヌは、脱出を促しながら右手を差しのべた。


 スサノーはアルフォンシーヌの右手を強く握った。


「ありがとう、三人とも」


 スサノーは照れ隠しだろうか、軍帽を目深にかぶって表情を隠した。


「さ、行くでー!」


「私、ハンバーグがいいなー」


「うちの店はお好み焼屋や! ハンバーグなんかあるかい!」


「スサノー、帰ったらまずお風呂よね? 私が背中流してあげるわ」


「アルフォンシーヌは抜け駆けすんなや!」


 騒々しい三人の声を聞きながら、スサノーは心を安らげて混沌カオスの闇の底から脱出した。


 混沌カオスそのものが滅んだわけではないが、この場での戦いには勝利できた。


 混沌カオスの浸食が弱まった事で、地上の帝都にも良い影響があればいいのだがーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ