表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
86/100

帝都を覆う混沌45 ~混沌(カオス)の闇に飲みこまれた者~



秩序コスモの使命に目覚め、少女のままではいられなくなったんです!」


 ハードゥはドヤ顔で言った。手足も長く、スレンダーな体型はモデルのようだった。


「ええ~?」


 ゴヨウは冷や汗を流した。ハードゥの言葉の意味はよくわからぬが、彼には思い当たることがあった。


 たとえばそれは高校時代、夏休み明けの変化だ。


 ゴヨウはアルバイトしたり、文化祭実行委員の一員として、それなりに充実感を得ていた。


 しかし、クラスには微妙な変化がある。地味だった女の子が、急に大輪の華を咲かせたがごとく綺麗になっていた。


 彼女の周りに群がる女子たちの質問責め、やがて「彼氏できたんだー!」という羨望の声…………


「そういうのと違いますから!」


 ハードゥは眉をしかめてゴヨウをにらみつけた。ゴヨウは蛇ににらまれた蛙のごとく萎縮した。


 何にせよ、ゴヨウはハードゥのおかげで窮地を脱することができた。


 しかし、鬼道界での戦いはまだこれからである。



   ******



 魔空空間でレディー・ハロウィーンとフランケン・ナースの戦いは始まった。


 フランケン・ナースが打ちこんだロケット弾が大爆発を起こす。


 レディー・ハロウィーンの射った数十本のエンジェル・アローが光輝く。


 帝都の繁華街はーー


 否、魔空空間には土埃が舞い上がって視界も悪く、そしてむせる。


「……やりました?」


 ロケットランチャーを構えたままのフランケン・ナースがつぶやくと同時に、土埃の中から無数の触手が伸びてきて、彼女を捕らえた。


「きゃあー!」


「く!」


 フランケン・ナースは触手に足首を捕らわれて宙に吊り上げられーー


 レディー・ハロウィーンはホウキに乗ったまま空中を移動して触手を避けた。


 サーファーがサーフボードを操って高波に乗るように、レディー・ハロウィーンもホウキを操り空を飛ぶ。


 数十メートルの距離を進んで振り返れば、フランケン・ナースは触手によって逆さ吊りにされていた。


 彼女の両手はスカートを押さえるためにふさがっていた。


「く、卑怯だわ!」


 レディー・ハロウィーンは舌打ちした。


 フランケン・ナースはミニスカートだ。逆さ吊りにされたら、めくれてしまう。


 そうなれば男子中学生が喜びそうなラッキースケベの発生だ。


「お、お嬢様~……」


 フランケン・ナースは触手に足首を掴まれて逆さ吊りになりながら、スカートを押さえて頭部の電極を激しく点滅させていた。


 彼女にしては珍しく焦っているようだ。


「き、今日はTバックなんです~」


 さすがは帝都ナンバーワンの女性キャラだ。誰得な展開である。


「なんでそんなのはいてるのよ!」


「だ、だって勝負下着ですから~」


「……あ、それもそうね。うまいこと言うわね」


 だが、さすがはレディー・ハロウィーンとフランケン・ナースだ。


 この侍従は、ピンチすらチャンスに変えてしまう。それは男はあまり持っていない、女性ならではの明るいパワーであった。


 命を懸けた戦いに臨むからこそ、フランケン・ナースは勝負下着だったのだ(見せる相手がいるわけではないが)。


「ふもうー!」


 触手の先で巨大な何かが動いた。土埃が晴れた先、歓楽街の建物の陰から現れたのは、異形の巨体だ。


 ーーのっし、のっし


 古典的な効果音と共に現れたのはサメーー


 いや、上半身はサメで下半身がタコという奇妙な生物だ。


 B級モンスターパニック映画に出てきそうな姿である。


「お前たちを見てると調子が狂う……」


 蛸サメは忌々しげにつぶやいた。その声にレディー・ハロウィーンは聞き覚えがあった。


「レジャー大帝GW!」


 そう、この蛸サメはレディー・ハロウィーンのライバル商人の一人、レジャー大帝GWであった。


 昨年は十連休で過労死寸前まで追い込まれたレジャー大帝GWは、今年は利益90%減という災難に見舞われていた。


混沌カオスの波動を受けて、人ではいられなくなったのだ!」


 レジャー大帝GWは混沌カオスに飲みこまれ、変貌してしまったのだ。


 本来、商人という存在は人の世の平和を願う存在だ。


 それなのに、今のレジャー大帝GWからは圧倒的な負のオーラしか伝わってこない。


 レディー・ハロウィーンは憂いに眉をしかめた。いかに悲しいからとはいえ、レジャー大帝GWが混沌カオスに飲みこまれたことが哀れだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ