帝都を覆う混沌32 ~男は最高~
鬼子母神様の館の前は騒がしい。
仏法の守護者ーー少年?の阿修羅様をはじめ、韋駄天様や弁財天様のお姿もあるーーが召集され、今にも出陣しそうな勢いだからだ。
「ーーあら」
鬼子母神様の胸元の装甲板が弾けた。
これは鬼子母神様の胸が豊かすぎるために、後ろで鎧を繋ぐ紐が切れたのだ。
天女らの一部は「少し分けてよ……」と顔を蒼白にしていたが、当の鬼子母神様は慌てた様子もない。
「全く、大きすぎるのも考えものじゃ…… ん?」
鬼子母神様がふと気づけば、通りすがりの知多星ゴヨウと目があった。彼は顔を赤くしていた。鬼子母神様の胸の迫力を、目の当たりにしてしまったのだ。
「ご、ごめんなさあい! でも凄いのをありがとうございました!」
ゴヨウは深々と勢いよく頭を下げた。
「そ、それはいいから、早く行け!」
鬼子母神様も照れ臭くなり、ゴヨウを追い払った。
百八の魔星の超時空要塞「梁山泊」の方へ駆けていくゴヨウを見送り、鬼子母神様はおつきの天女に声をかけた。
「あれは誰じゃ、存じておるか」
「い、今のは百八の魔星の軍師、ゴヨウ先生です」
天女は鬼子母神様の背後で、鎧の紐を結びながら答えた。
「ほお、今のが知多星ゴヨウか? 役立たずと聞いていたが……」
鬼子母神様はそう言って苦笑された。果たして意味があるのかどうか。
ーー朝からなんてラッキースケベなんだ!
ゴヨウは「梁山泊」へと駆けた。
嬉しいやら恥ずかしいやら、鬼子母神様の豊かな胸を直視してしまった。
ーーあの美しい方のためならば死ねる! 男って最高だ!
ゴヨウは「火事場の馬鹿力マシーン」に飛びこみ、変身を開始した。
円筒形の棺にも似た火事場の馬鹿力マシーンの中で、ゴヨウは変身を終える。
最近このマシーンは、自動武装マシーン的な役割しか果たしていない。
なぜならば、ゴヨウは自らの意思で、己の力を引き出せるようになってきたからだ。
何のために生き、何のために死ぬのか。
その答えが定まった時、ゴヨウは己の内に宇宙を感じた。
「準備完了!」
武装を終えたゴヨウは、火事場の馬鹿力マシーンから飛び出した。
腰には聖剣「花鳥風月」を差し、武装した今のゴヨウはまるで別人だ。
そしてゴヨウは新たなる戦場へーー
秘密兵器「ヘッドガン」なる戦車に乗りこみ、時空の裂け目、混沌の中心へ出陣した!




