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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
72/100

帝都を覆う混沌31 ~未来を守る総力戦開始~



   ******



 ゴヨウが訪れてもソンショウの応えはなかった。


 ソンショウは部屋にこもり、即身仏の修行を行っていた。


 外部からの呼びかけには鈴を鳴らして応えるが、それもなくなった。


 ゴヨウはソンショウの修行が終わり、即身仏への成就が成った事を知った。


「ソンショウ老師……」


 ゴヨウは涙をこらえた。


 世界中に病魔が蔓延する少し前に、ソンショウは突如として即身仏への修行に入った。


 その理由が今ならばわかる気がする。


 ソンショウは病魔を鎮め、未来を守るために、己を捧げたのだ。


 仏陀が沙羅双樹の下で苦しみに耐えたように。


 主が十字架にかけられたように。


 勇士らが国の未来を守るために、大空の戦場に命を散らしたように……


「……老師、俺はやります!」


 涙をぬぐい、ゴヨウはソンショウに誓った。


 脳裏には「開拓者」カーレルの声が聞こえてくる。


 ーー目に見えぬ道に従って、少年がやがては父親になるようにだ……


 今ゴヨウは目に見えぬ道に入ろうとしているのだ。


 ソンショウもまた目に見えぬ道に従ったのだ。


 大いなる未来のために……





 帝都のスーパーヒーロータイムといえば、現在は「ヒーリングっど・戦乙女プリピュア」、「柳生十兵衛ゼロワン」、「魔進剣隊キラ忍者ニンジャー」である。


 そして柳生十兵衛もまた、帝都を守る戦いに臨む。


「死んだ者に分け前はない」


 十兵衛は配下の剣隊隊員ーー


 俗に言う「裏柳生」らに告げた。


 冷酷な発言に聞こえるが、彼の真意を知る者達には反発などない。


 どこか愉しげですらある。彼らは、自分達のような無頼漢が、世のため人のために、死に花を咲かせられる事を喜んですらいた。


 ある意味では狂人かもしれぬ。


 が、まともな者ですらが混沌カオスの波動を受けて、自己欲求を満たすために悪を成している事例もある。


 どちらが正しいか、などはどうでもよい。


 己を捨てられるか否かだ。


「張孔堂を倒さねばならぬ」


 國松は十兵衛の隣で配下の「江戸城御庭番衆」に告げた。


 國松の正体は尾張大納言忠長である。


 三代将軍家光の弟でありながら、切腹を命じられて果てた。


 世間ではそのように信じられていたが、実際には秘密裏に生かされ、江戸城御庭番衆を率いて江戸の治安を守っていたのだ。


 その武芸の腕前は十兵衛以上である。


「余も叔父として、甥のために一肌脱がねばな」


 國松は不敵に笑った。


 すでに死したる忠長だが、家光の子のためにーー


 未来のために死ぬのならば本望であった。


「正雪は悪くないのです」


 十兵衛は苦々しく言った。暴走し、江戸の市中に火を点けようとしているのは、混沌カオスの波動を受けて暴走した一部の者達だ。


 その混沌カオスの尖兵を討たねば、江戸に明日はない。


「ーーいくぞ!」


 迷いを振り払い、十兵衛は國松と共に剣隊隊員らを率いて、夜の江戸に出陣した。





 男達ばかりではない。


 女性陣もまた命がけであった。


 鬼子母神様の元に一通の挑戦状が届いた。


 差出人は混沌カオスとの事である。


 鬼子母神様は眷属の天女らと共に、いぶかしみながら封を解いた。


 そこには「ババア」と一言だけ書かれていた。


「ババアじゃとー!」


 鬼子母神様の怒りのオーラが天を衝いた。


 手紙からは僅かに聖母様の神気が漂っていたが、怒り心頭の鬼子母神様には、それに気づく余裕はない。


「おのれ混沌カオス! 殲滅じゃ! サーチアンドデストロイじゃー!」


 鬼子母神様の館はにわかに活気づき、混沌カオス殲滅のための準備を開始した。


 鬼子母神様の眷属らが総力を挙げて、混沌カオスと共に病魔をも打ち払うかもしれぬ。


 子どもの未来を守るために……





 聖母様の館では、戦乙女のグレース、フォンテーヌ、スパークルらが聖母様の企みに顔を青くしていた。


「これぞ駆虎呑狼くこどんろうの計…… いいこと、混沌カオスも病魔も打ち払うのよ! 戦乙女プリピュアも総力戦よ!」


 聖母様の神算鬼謀、果たして成るか。


 世界中の病魔を退散させることができるか。


 宇宙の意思は、世界をどこへ導こうとしているのか……

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