帝都を覆う混沌27 ~愛の光と希望の勇気~
秘密裏に混沌と戦うゴヨウとチョウガイ。
彼らが触れたのは戦乙女エースの意識であった。
ーーヨウジに会えて良かった……
エースの意識はなんと優しく暖かいことか。
聖母様に仕える戦乙女のNo.3にして「エースの切り札」たる戦乙女エース。
才色兼備を体現しながら生きてきた戦乙女エースだが、その高い能力ゆえに、男は誰も近寄れなかった。
ただ一人、百八の魔星の剣士たる天暗星「青面獣」ヨウジだけが彼女に近寄った。
敵対していたからか、それともヨウジの生来の性格ゆえか、とにかく二人は出会った。
軽い気持ちでナンパしたヨウジとしては、エースの手強さに闘争心を駆り立てられたのかもしれない。
ーーこ、こんなにうまいカレーは初めてだぜ!
ヨウジはエース行きつけの激辛カレー店にもつきあった。
泣きながら辛さ百二十倍カレーをエースと共に平らげたヨウジ。
その男気にエースは心を奪われ、ヨウジに恋をしたのだーー
「ーー幸せのお裾分けだね」
ゴヨウは苦笑した。彼の意識はエースの「愛」に触れて、いくぶんか救われた心地がした。
「男女の仲とは宇宙の真理か…… 人間はそうやって命を繋いできたのだ」
チョウガイもまた珍しく苦笑した。不治の病たる妹の治療費を稼ぐために、傭兵として戦い続けたチョウガイ。
エースの愛はチョウガイすら救われた心地がする。
「男は命を守る」
チョウガイは顔を引き締めゴヨウに言った。
「女は命を繋ぐ…… それを守るのが守護者だよね」
ゴヨウは笑みを見せた。彼は宇宙最古の生命体「開拓者」たるカーレルに出会った事を忘れてはいなかった。
「『概念』や『存在の意義』を守るーー それこそが守護者だ」
チョウガイは彼方まで続く闇の中を歩きだした。ゴヨウも後へ続く。
百八の魔星の守護神チョウガイ、百八の魔星の軍師ゴヨウ。
二人はまるで父と子のように、混沌との戦場へ向かった。
チョウガイは黄金の剣を振るった。生じた光の波が、混沌の重鎮・魔大公ネロを呑みこんでいく。
「な、なんだ、この驚くべき光の波は……!」
ネロの姿は、光の波の中に消えていく。それは春の陽気に病魔がかき消されていくがごとしだ。
「如意!」
ゴヨウは手にした鎖を振るった。
この鎖はラグナロクといい、物理的限界も、空間も時間も越えて、敵を討つのだ。
混沌の闇の中に、ラグナロクははっきりと敵を感じ取ったのだ。
戦うべき敵に挑むゴヨウに、恐れも迷いもない。
「サンダーウェーブ!」
ラグナロクの鎖は、一筋の稲光のごとく闇を突き進んだ。




