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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
67/100

帝都を覆う混沌26 ~新たなる武神、誕生す~



   **********



 異空間での戦いも続いていた。


 この国に侵入しようとしていた邪神と戦い続けていた武神フツヌシ。


 そのフツヌシが力尽きかけんとした時、小さな魔の群れを追い払ったのは邪神であった。


 邪神は武神フツヌシとの戦いで、何かが変わった。


“貴様らのような卑小な魔に、この武神を嘲笑する資格があるというのか!”


 邪神はフツヌシを背にかばい、無数の小さな魔を打ち払う。


 その様子をあえて例えるならばーー


 五条大橋で刀狩りをしていた弁慶が牛若丸によって成敗され、その後は命を尽くして仕えたようなものか。


 フツヌシは片膝ついた姿勢で動かなかったが、いつの間にか全身は塩に変わっていた。


“……ば、馬鹿な”


 邪神は見た。己が認めた偉大なる男がーー


 この国を守るために戦っていた武神フツヌシが力尽き、消滅した瞬間を。


 塩と化したフツヌシの体は崩れていく。


 邪神の目に涙があふれた。あまりにも意外だったに違いないが、邪神は泣いた。


 その涙が邪神の魂を、清らかに洗ったかもしれない。


 次の瞬間、奇跡が起きたからだ。


“な、なんだこれは!”


 邪神の周囲を光の帯が取り囲んだ。


 そして吹いた強い風ーー


 邪神は一瞬で分解され、再構築された。


 邪神というおぞましい姿から、人間の少年のような外観に。


 邪神だったものは、全く別の存在へと造り変えられていたのだ。


 邪神だった少年の全身を激しい炎が覆い隠した。


 炎が消失した時には、少年の体を煌めく鎧が包んでいた。


「こ、これは……」


 少年は呆然と己が両手を眺めた。


 小さな魔の群れは、新たな武神の誕生に畏れおののいていた。


 そう、邪神だった存在は新たな武神へと造り変えられたのだ。


 あるいは転生だったかもしれぬ。


“任せたわね~”


 彼方の光の中に浮かぶ人影は、優しくも気の抜けそうな声で少年に命じた。


 人影は、腰に二本の剣を提げた女性の姿であった。


 その人影の脇から猛烈な勢いで飛び出した獣は、武装した虎のようであった。


 その虎は小さな魔の群れに向かって、威嚇の咆哮を上げた。


 見れば小さな魔は集合・同化して、強大なる魔へと転じていくではないか。


 少年はかつての自分と同じだと思った。


 この強大なる魔が侵入すれば、国は滅ぶ。


 それを防ぐために武神フツヌシは戦ってきたのだ。


「ーーいくぞ!」


 少年は煌めく鎧に身を包んだまま、虎へ呼びかけた。この虎は獣神であり、少年の新たな相棒なのだ。


 そして、この少年は新たなる武神フツヌシなのだ。


 虎の背にかけられた二刀を両手で鞘から抜き放ち、武神フツヌシは強大なる魔を見据えた。


 その瞳に恐れも迷いもなかった。


“やっぱり私の目に狂いはなかったわ~”


 彼方から聞こえる明るい女性の声に、武神フツヌシは兜の奥で微笑した。


 元々、武徳の祖神には女性説があるが、それはひょっとすればーー


「双炎の剣を受けてみろー!」


 武神フツヌシは炎を発した二刀を手にして、強大なる魔へと斬りこんだ。


 その炎は病魔をも燃やし尽くさんとす。


 果たして戦いの行方は……

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