表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
65/100

帝都を覆う混沌24 ~始まりの終わり~



   **********



「さらばだ我が友よ」


 宇宙最古の生命体「開拓者」であるカーレルは、ゴヨウに別れを告げた。


 彼は「開拓者」の内では最も幼く、非力で無知なのだという。


 早く仲間の元に追いつきたい、とカーレルはゴヨウに言った。


「これを授けよう、汝が成し遂げた行いを忘れぬように。我は人々の記憶の中に刻まれ、命ある限り語り継がれていく。それこそが我らの永遠の証」


 カーレルはゴヨウの手のひらに、光り輝く何かを渡した。


 それは赤ん坊のようであり、光りの玉のようであり、原初の地球のようでもあった。


「有限生命体も見上げたもの」


 そう言ってカーレルは笑顔を見せた。宇宙最古の生命体の見せた、親しみの笑顔であった。



   **********



 帝都の時は動き出した。


 誰も、何者も、混沌カオスの意識下への侵略を覚えてはいなかった。


 混沌カオスと戦ったゴヨウですらがーー


「ーーこれあげるわ」


 はにかんだバレンタイン・エビルが差し出したのは、小さな包みのチョコレートだ。


「お、俺に?」


 ゴヨウは心臓がドキドキした。童貞だから仕方ない。


「い、言っておくけど義理だからね、義理!」


 頬を赤らめ、ツンツンした様子のバレンタイン・エビルがなんと可愛らしいことか。


 ゴヨウはもう死んでもいいとすら思った。


 それほどの満足だった。


「あ、チョウガイ様!」


 バレンタイン・エビルは百八の魔星の守護神チョウガイに駆け寄っていく。


 そしてゴヨウに渡したチョコレートより、ずっと立派な包みをチョウガイに差し出していた。


「う、受け取ってください!」


「う、うむ」


 うつむいたバレンタイン・エビルと、照れ隠しに咳払いしながらチョコレートを受けとるチョウガイ。


 その光景自体は微笑ましいが、バレンタイン・エビルに好意を抱くゴヨウにはたまったものではない。


(うー、宇宙がー!)


 白目を剥いてのけぞるゴヨウ。嫉妬も多分にあった。


 しかし、好意を抱くバレンタイン・エビルの幸せは祈る。


 そして、父のように尊敬するチョウガイの幸せも祈る。


 それが男の生きざまである。


 が、彼の報われぬ思いはどうすればいいか。


混沌カオスめへえー!」


 ゴヨウは再び混沌カオスとの戦いに臨んだ。八つ当たりに近い闘志を胸に、彼は死をも恐れず死線に踏みこんだ!





「速き風よ!」


 ゴヨウは右手を高く掲げた。途端に周囲の風が渦を巻いた。


「光と共に解放されよ!」


 ゴヨウの右手が光って唸る。


 圧倒的な暴風が吹き荒れ、混沌カオスの尖兵たるマンクロイを飲みこんだ。


 闇の僧兵たるマンクロイの体は突風に巻き上げられて、悲鳴と共に数十メートルの高みから大地へ落ちた。


 今のゴヨウは風の勇者であった。


 鳳凰の羽ばたきのごとし風を操り、全てのものを吹き飛ばすのだ。





 混沌カオスの尖兵アフロディアもまた、ゴヨウの前では力を封じられた。


気流ストリーム……! この空気の流れは貴様が造り出したのか!」


 美しきアフロディアの周囲は、ゴヨウの産み出した気流に包まれていた。


 この気流は今は相手の動きを封じるだけだが、ストームと成った時には全てを吹き飛ばすのだ。


「そうだ、気流ストリームストームと成った時、あんたの最期だ」


「ふふふ、面白い」


 血の気の引いたアフロディアだが、彼は不敵な笑みを見せて右手に握った白い薔薇を高く掲げた。


「この白薔薇は君の血を吸い上げて深紅に染まるだろう……」


 アフロディアの決死の覚悟、敵ながら天晴れだった。


 ならば、とゴヨウも覚悟を固めた。


 守るために戦い死すならば、たとえ破れても本望であった。


「さあ受けろ知多星!」


 アフロディアの右手の白薔薇が放たれた。


「吹き荒れろ嵐よ!」


 ゴヨウの雄叫びと共に嵐が生じて全てを吹き飛ばした。



   **********



 ゴヨウの戦いは続くーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ