帝都を覆う混沌23 ~輪廻~
「ネロ……」
チョウガイは刮目した。
会った事はないというのに、何処かで会ったような気がする。その既視感の正体は何だ。
「それがお前の輪廻だからだ」
ネロはチョウガイへ歩を詰めてきた。
長く白い髪の、美女と見紛う青年であった。
右手に提げた七支刀のごとき剣にもチョウガイは見覚えがあった。
それは雷鳴剣だ。
雷鳴剣は雷龍を召喚・使役し、万を越す大軍すら翻弄する。
「輪廻か」
チョウガイはつぶやいた。彼は四千年の間、百八の魔星の守護神として存在し続けてきた。
それを輪廻と呼んでいいのかはわからない。彼は人間から守護神へ生まれ変わった存在だから。
人知を越えた大いなる意思に選ばれたチョウガイ。
彼の生あるは、百八の魔星の使命のためだ。
悪の力を以て悪を討つ、仏敵を降伏する阿修羅のごとき定めのゆえだ。
そしてネロもまた混沌と共に在り続ける。なるほど、そこまで考えれば輪廻と呼ぶのもうなずける。
チョウガイとネロは、この宇宙の概念ーー
秩序と混沌に選ばれた者として、光と闇の戦いを続けるのだ。
「ーーいくぞ、ネロ!」
チョウガイは黄金の剣を構えた。闘志全身に満ち、一分の隙もない。
「さあ見せてやるぞ、雷鳴剣の真の力を!」
ネロは雷鳴剣を振りかざした。
刀身の左右から生えた六本の枝刃が輝いたと見えるや否や、召喚された雷龍がチョウガイめがけて襲いかかった。
「ーーマカロシャダ!」
チョウガイは不動明王真言の一部を唱えた。彼の持つ黄金の剣は、不動明王の手にする降魔の利剣に等しい。
「覇王飛竜剣!」
チョウガイは黄金の剣を振るった。
一直線に放たれた黄金の軌跡が雷龍を貫いた。




