帝都を覆う混沌22 ~戦いの聖地へ~
「少しはね」
ゴヨウは苦笑した。カーレルに褒められたような気がして、照れ臭かったというのもある。
「さ、まだまだ続きがあるぞ」
「ギャ……」
ゴヨウは顔から血の気を引かせながら、開き直りの笑みを見せた。
彼はすで体感時間で数億年の擬似体験を経ていたが、先はまだまだ長いのだ。
「せっかく、この星の命はここまで来たのだ。未来へ繋げなければならぬ。ゴヨウ、希望にあふれた未来の守護者と成れ」
カーレルは言った。宇宙最古の生命体である「開拓者」の彼がゴヨウと遭遇したのは、道を示すためかもしれぬ。
「目に見えぬ道に従って、少年がやがては父親になるように…… ゴヨウよ、天の機を知れ」
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チョウガイは果てしない荒野へとたどり着いた。
暗い空に草一つない枯れた大地。
暗黒と静寂、命の気配なき寂寥の地。
この地で秩序と混沌は四千年の間、戦いを繰り広げてきた。
ここは大いなる「聖地」であり、戦場なのだ。
「む……」
チョウガイが暗き空を見上げれば、そこには青い星が浮かんでいた。
それは地球であった。
ならば、この聖地とは月の表面なのか……
次の瞬間、チョウガイは雷鳴のような轟音を聴いた。
チョウガイは瞬時にゴヨウの荷物を地に落とし、黄金の剣を振るった。
剣先からほとばしった閃光が闇を切り裂く。
そしてチョウガイは見た。闇に浮かび上がる、輝く龍の姿を……
「ーー待ち詫びたぞ、チョウガイ」
チョウガイの前方、数十メートルの大地に白い服をまとった人影が立っていた。
その人影の右手には、一振りの剣が握られていた。
人影は混沌の重鎮、魔大公ネロであった。




