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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
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帝都を覆う混沌20 ~女も男も化ける~

「シャオラア!」


 聖母様はダルイゼーに突き進んだ。突然の奇襲にダルイゼーは戦いのリズムを崩された。


 聖母様は両腕でガードを固めたまま、ダルイゼーにぶち当たる。


 そして体勢を崩したダルイゼーに素早くミドルキックを放った。


 咄嗟に腕を下げてガードしたダルイゼーは戦慄した。聖母様という可憐なイメージには似つかわしくない、荒々しくも華麗な攻めーー


 ガードしたダルイゼーの腕がビリビリと痺れている……


「いい顔をしてるわね」


 聖母様はダルイゼーから距離を離し、リング中央付近で構えていた。


 彼女もまた活力に満ちた輝かしい笑顔を浮かべていた。


「ふん」


 ダルイゼーはやや体勢を低くした。得意のグラウンドからの攻防で早々と勝負を決する気だろう。


 聖母様とダルイゼーの闘志がリング上に満ち、その活力が観客達をも否応なしに巻きこんでいく……


「フ、ファイトー!」


 その時、観客席にいた腐女子の一人が立ち上がってダルイゼーにエールを送った。


 鬼子母神様に畏怖していた腐女子だが、それでも彼女は気になる男子を応援せずにはいられなかったのだ。


 それをきっかけに、観客席のあちこちからダルイゼーへの声援が沸き起こった。


 腐女子らもまた何かが変わった。


「ふ、見事に女は化けたものよ」


 鬼子母神様は穏やかな微笑を浮かべた。かつては鬼子母神様もまた変わったのだ。


 悪を為す存在から、子どもの未来を守る存在へと……


「うひょ」


 タケミカズチ様は、熱気に満ちた観客席の中でただ一人、聖母様の後ろ姿に見とれていた。


「かわいい尻してるよな~……」


 タケミカズチ様は満足げな顔つきである。デレデレした少年のような顔で、気になる異性のお尻を眺めていらっしゃるようだ。


「ウリヤアアアア!」


 リング上の聖母様は観客席のタケミカズチ様めがけて飛び蹴りを放った。


 あまりにも意外な事態にタケミカズチ様は十メートル以上も吹っ飛んだ。


「わたくしはあんたのそういうところが嫌いなのよ!」


 怒り頂点の聖母様は拳を固く握りしめた。


「そうじゃ、この女の敵が!」


 鬼子母神様も怒りを露にして、聖母様と共にタケミカズチ様に攻撃をしかけた。


 突然の場外乱闘に、観客席は阿鼻叫喚の混沌カオスと化した。


「「クロスボンバー!」」


 聖母様と鬼子母神様のツープラトン技、クロスボンバーを受けてタケミカズチ様はダウンした。


「悔い改めよ姦物!」


「全ての男は、わらわ達の前に膝まずくのじゃ!」


 勝利のヒロインインタビューを受ける聖母様と鬼子母神様。リング上のダルイゼーは、すっかり忘れ去られていた。


 が。


「タケミカズチ様……」


 ダルイゼーはなぜか頬を赤く染め、場外に倒れたタケミカズチ様を見つめていた。男心はよくわからない。


「タケミカズチ様、しっかり!」


 ダウンしたタケミカズチ様の側には戦乙女マジカルが屈んでヒーリングを行っていた。


「な、なんで……?」


 倒れたままマジカルを見上げるタケミカズチ様はつぶやいた。


 それは聖母様と鬼子母神様にボコられた事か、それともマジカルへの問いであったか。


「わ、わたしの勝手です!」


 戦乙女マジカルはそっぽを向いた。ツンツンした態度が可愛らしいといえば可愛らしい。


 女心は宇宙よりも広いのだ。


「ははは……」


 カニマルとポークの「ナザレ・ウォーリアーズ」の二人は、愉快?な光景を眺めて苦笑していた。


 これもまた彼らの望んだ平和な光景であるからだ。





 そして帝都の混沌カオスは未だ晴れぬ。


 知多星ゴヨウと守護神チョウガイは何をしているのか。

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