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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
58/100

帝都を覆う混沌17 ~クリスマスの追憶~

※サンタクロースのモデルとなった聖人は双子説があったり、商人の守護聖人であるらしい。すごい偶然だ……



 話は前後するがーー


 クリスマス当日、レディー・ハロウィーンとフランケン・ナースの元にサンタさんが訪れた。


「わあ、サンタさんだー!」


 フランケン・ナースはバスタオル一枚巻いただけの艶姿で、部屋のドアを開けてサンタさんを出迎えた。


「ちょ、ちょっと何事よー!」


 レディー・ハロウィーンも湯上がりだったらしい。彼女は慌てて浴室に戻ってしまった。


 ーーボタボタボタ


 サンタさん(220cm、162kg)は銀のマスクのごとき顔に、大量の鼻血を流していた。


 フランケン・ナースのバスタオル一枚巻いた艶姿に興奮しているのだ。


 赤く分厚いナイトキャップに身を包んだ若く精悍な超人ーー


 それがサンタさんの真の姿か。


「メリークリスマス……」


 サンタさんは右手でプレゼントを差し出しながら、視線はフランケン・ナースから離さない。


「わあ、ありがとうございます~」


 フランケン・ナースは嬉しそうにプレゼントを受け取った。


 彼女は人造人間として生まれ変わって数年だから、サンタさんからプレゼントをもらう資格があるかもしれない。


「シャバババ~……」


 「一つ目のトナカイ」であるガンマン(302cm、580kg)は面白くなさげだ。


 彼とサンタさんは永きに渡って二人で子どもたちにプレゼントを贈ってきた。


 それはいいが、戦友とも相棒とも呼ぶべき二人の仲に、フランケン・ナースという色気が混じるのが面白くなかった。


「ニャガニャガ~……」


 「二人目のトナカイ」たる精神マン(206cm、102kg)も面白くなさげだ。


 元はバレンタインの守護者ガーディアンたる「バレンタイン・オメガ」だった精神マン。


 彼は養娘のバレンタイン・エビルに守護者ガーディアンの使命を譲り、愛するサンタさんの元にやってきた。


 サンタさん(真なる名は白銀マン)と一つ屋根の下に暮らしーー


 眼マンよりも料理が上手で家事もこなし、正妻(何)の座はいただいたと思っていた精神マン。


 それがフランケン・ナースというイレギュラーな存在に、サンタさんの心を奪われるとは。


「おかわゲフゥり」


 サンタさんはフランケン・ナースに勧められるままに、テーブルについてチキンをいただいていた。


「きゃー、尊大アロガント! わたし、亭主関白なひとが理想なんです~」


 楽しげなフランケン・ナース。彼女によって、サンタさんの心も胃袋もがっちりつかまれていた。


「きゃ」


 更にフランケン・ナースの胸に巻いたバスタオルがハラリと落ちた。素早く拾って胸に巻き直すフランケン・ナース。


 フランケン・ナースの裸身を、一瞬とはいえサンタさんは見てしまった。次の瞬間、サンタさんは「ブバ!」と信じられない量の鼻血を吹いた。


 相次ぐラッキースケベによって、サンタさんの心は完全にフランケン・ナースに奪われていた。


「あんた達、何しに来たのよ!」


 レディー・ハロウィーンは頭にタオルを巻いたバスローブ姿で浴室から出てきた。


 いかにサンタさんとその従者だろうと、三人まとめてぶっ飛ばしてやろうと思ったが、


「シャバババー!」


「ニャガニャガー!」


 マジ泣きした眼マンと精神マンが抱きついてきたので、彼女は硬直してしまった。


 レディー・ハロウィーンは性格きつめの美女だが、秘めた母性は聖母のごとくだ。


「さ、サンタさんがー!」


「私というものがありながらー!」


 泣き叫ぶ眼マンと精神マンの二人を、レディー・ハロウィーンは眉をしかめて慰めた。





 別の場所ではーー


 暗黒ブラックサンタが柔道場を訪れ、一人で修練に励む少年を叱咤していた。


「それが貴様の全てなのか!」


 突然やってきた暗黒ブラックサンタと従者サンシャイーンに怯む少年は、小学校低学年だろうか。


「悔しかったら!」


 暗黒ブラックサンタは従者サンシャイーンの巨体を片腕で肩に担ぎ上げた。


「その技一つで、こいつを倒せるくらい! 徹底的に磨いてみせろー!」


 暗黒ブラックサンタは少年に向かってサンシャイーン(300cm、1,000kg)を投げつけた。


「貴様は何を為す者だ!」


 暗黒ブラックサンタの檄によって、少年の心から恐怖は消えた。


 少年自身を押し潰さんとするサンシャイーンの巨体を前にし、すばやくその両腕に抱きついた。


 そして次の刹那には体を回して、サンシャイーンの巨体を畳の上に投げ落としていた。


 凄まじい衝撃に柔道場が揺れたーー


「ゲフォ……!」


 サンシャイーンは畳の上でうめく。暗黒ブラックサンタと少年、二人の投げの勢いと自身の体重によって大きなダメージを受けていた。


 体を砂に変えてダメージを受けなくする事ができるサンシャイーンだが、それすらできぬ刹那の一本背負い投げであった。


「覚えたか!」


 暗黒ブラックサンタは少年に言った。


 今、少年が放った刹那の一本背負い投げこそ、暗黒ブラックサンタからのクリスマスプレゼントであった。


「しかと充分に!」


 少年は涙をはらはら流して暗黒ブラックサンタに敬礼した。


 彼が命がけで体得したものこそ、真なる最高の一手であった。


「ありがとうございました!」


 深々と頭を下げる少年に背を向け、暗黒ブラックサンタはサンシャイーンと共に柔道場から去っていく。


 完璧商人始祖パーフェクトオリジンの黄金マンにして、闘争の神たる暗黒ブラックサンタ。


 彼から祝福を受けた者は、必ずやその前途を切り開いていくと言われている。

なんだこれ。

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