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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
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帝都を覆う混沌15 ~平衡の守護者~

「死ねえ!」


 イプエロンの駆るブルーアーマー騎兵の右手が動いた。


 その右手は近接戦闘用の鉤爪となっている。


 鋼の引き裂かれる音と共に、リンチュウの搭乗したアーマー騎兵の頭部が吹っ飛んだ。


 コックピット内のリンチュウの姿が露になった。


 彼は手に銃を握っていた。


「終わりだ、イプエロン」


 リンチュウは静かに引き金を引いた。


 銃弾はイプエロンのブルーアーマー騎兵の、頭部のカメラを貫いた。


 そして大地が揺れ、リンチュウとイプエロンは搭乗したアーマー騎兵と共に、割れた地の底へと落ちていった。





 地の底からリンチュウとイプエロンの二人は地上を目指す。


 リンチュウの生存本能が無意識に彼を動かしていた。


 彼にとって死の覚悟と生きる勇気は、同一のものかもしれない。


 イプエロンは生きてプロト1ーー


 女王アウターの予備である女性に会うために、今はリンチュウと行動を共にしていた。


 プロト1は今では百八の魔星の超時空要塞「梁山泊」で居候していた。


 瓦礫の山を登っていくリンチュウとイプエロン。


 疲労感は募っていくが、空腹も覚えず、大小の生理現象も、眠気も起きない。


 なぜならここは混沌カオスの中心、無限の虚無空間だからだ。


「さあ、手を伸ばせ」


 リンチュウは瓦礫の山をイプエロンより先に登っていた。


 そのリンチュウは、イプエロンへと上方から手を差しのべた。


 イプエロンは手を伸ばしたが、彼は慌てて手を引いた。


 イプエロンのパーフェクトファイターとしてプライドが、リンチュウを拒んでいたのだ。


「意地を張るな、俺には見えてきたぞ」


 リンチュウの言葉の意味が、イプエロンにはわからない。


 今この星は危機に瀕している。


 世界を覆う病、人の悪意、そして宇宙からやってきた混沌カオスの闇……


 昨年は星辰の乱れを「星の輝き」を持つプリピュアが正した。


 今年は「善き癒し」のプリピュアが、この星を救うために病と混沌カオスと戦っているが、力だけでは救えない。


 善と悪が力を合わせなければ、この星は救えないのだ。


「俺のような悪人と、お前のような善人が力を合わせることが必要だ……」


 リンチュウは言った。彼は自分を悪と断じた。


 妻を救えず、裏切ったとはいえ親友を手にかけた自分が善のはずがないのだ。


「会いに行くんだろ?」


「く…… り、リンチュウ、貴様……」


 心中を見透かされたイプエロンは歯噛みしながらも、リンチュウの手を取った。





 「平衡の守護者ガーディアン」たる巨龍エブレスは感じていた。


 善と悪が調和した波動を。


 光と闇、昼と夜、善と悪、男と女……


 完全なる調和なくして、この星は救われぬ。


 リンチュウとイプエロンが手を取ったのは、調和の大きな一歩なのだ。


“汝らの道程が易からんことを”


 エブレスは星の調和を祈った。リンチュウは剣神タケミカズチの後継者の一人ーー


 選ばれた「守護者ガーディアン」の一人なのだ。



   **



 混沌カオスの侵攻は続く。


 それは夜のようにごく自然にやってきて、人々の意識を覆い包んでしまう。


 ほとんど全ての人々は、己の意識が混沌カオスに包みこまれたことになど気づかない。


 やがてはこの惑星全体が混沌カオスの空気に包まれるかと思われた。


 それを食い止めるために戦う者もいる。


 百八の魔星の知多星ゴヨウと、守護神チョウガイ。


 武神フツヌシ、剣神タケミカズチ。


 バレンタインの守護者ガーディアンバレンタイン・エビル。


 そしてバレンタイン・エビルの双子の姉にして、ハロウィンの守護者ガーディアンであるレディー・ハロウィーンだ。


 そして、彼女には作中人気ナンバーワンのフランケン・ナースという侍女が仕えている。


 彼女達ハロウィンの守護者ガーディアンの元にも、混沌カオスの尖兵が現れた。





「は、ははは、あんたビビって声も出ねえかあ?」


 レディー・ハロウィーンの城門に現れた混沌カオスの尖兵は、正気を失った顔をしていた。

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