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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
52/100

帝都を覆う混沌11 ~剣神タケミカズチ奮闘す~



 「幽霊の酒場」に活力が満ち、ゴヨウが宇宙の始まりを知った頃ーー


 時の止まっていた帝都では、ごく少数の力ある者だけが活動していた。


「ーーミラクルよ、次元の乱れを解明するために、混沌カオスの渦に飛びこむのです」


「イエッサー!」


 厳かな顔で命を下す聖母様と、明るい笑顔で了解する戦乙女ミラクル。


 八頭身美人の戦乙女ミラクルの笑顔は一級品だ。


 だが心配である。幾多の戦いにおいて、文字通りの奇跡ミラクルを起こした戦乙女ミラクル。


 だが、その反動は必ずやってくるのだ。それを思うと聖母様は頭が痛いのだ。


 それでも、この混沌カオスの渦を解明するには彼女の力が必要かもしれぬ。


「おまかせください、聖母様! わたしがついています!」


 戦乙女ミラクルの隣では、相棒の戦乙女マジカルが鼻息荒く応えていた。


 ミラクルと同じく八頭身のマジカルは、理知的で涼しい目元のクールビューティーな女性である。


 だが、彼女はドジっ子だ。


 魔神の眷属だけにその力は高いが、ドジも凄まじいのだ。


 戦乙女ミラクルとタッグを組んで異界の魔導師軍団を退けたが、ドジがやたらと目立つ。


「大丈夫です、聖母様!」


 戦乙女フェリーチェも優雅に微笑んだ。彼女は「大宇宙の大いなる意思」の分身にして、代行者だ。


 戦乙女フェリーチェは「やる時ゃマジ」、「異常に強い」、「ギャップが魅力的」と三拍子揃っている。


 だが、ミラクルとマジカルに引っ張られたフェリーチェは、たびたび本来の崇高な精神性を失い、子どものような性格になってしまう……


「と、とにかく頼みますよ」


 聖母様に見送られて、ミラクル、マジカル、フェリーチェの三人は魔法のホウキにまたがって出陣した。


混沌カオスの中心!」


「ワクワクもんだあ!」


「計算通りだし!」


 まるで遊びに出かけるかのような、フェリーチェ、ミラクル、マジカルの会話。聖母様は目をむきそうだった。





 地下の異空間では剣神タケミカズチが「地の龍」と戦い続けていた。


 地の龍が暴れる時、この国には大地震が起きるのだ。


 それを阻止するためにタケミカズチは孤独な戦いを続けている。


 そして地の龍は大地の命であり、滅ぼせば、あらゆる命も死に絶える。


 滅ぼしてはならぬ。


 負けること許されぬ。


 使命を背負い戦い続けるタケミカズチだが、今日は劣勢も劣勢だ。


 彼は地の龍の九つの首から同時攻撃を受けて、満身創痍であった。


(ダメかもな)


 そう思ったタケミカズチだが、彼の脳裏には一人の女性の顔が思い浮かんだ。


 異国の超級女神、聖母様である。


 つい今しがた聖母様はミラクルらに命を下したが、タケミカズチは無論そんなことは知らない。


「へへへ……」


 タケミカズチは大太刀を手にして立ち上がった。


 刃渡り二メートルを越すこの大太刀は、鹿島神宮の神宝とそっくりであった。


 タケミカズチは地の龍を前にして、大太刀を構えた。


「俺の命なんかくれてやるぜ!」


 叫ぶと同時に、タケミカズチの手にした大太刀が光輝いた。

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