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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
51/100

帝都を覆う混沌10 ~命の恵みと喜び~



「こ、これが命……」


 チョウガイを見つめるルシアンナは泣き笑いの表情だ。


 彼女ならばわかる。一度死して肉体を失った身だからわかる。


 命というものが、これほどに尊く、暖かく、柔らかく、素晴らしいものであることを。


 それは生ある者には決して理解できぬ喜びだろう。


 目をみはるチョウガイの前で、ルシアンナは自分の髪を撫で、そして豊かな胸にも手を添えた。


「うわあー、感激ー! おっぱいあるよー!」


「う、うむ」


 チョウガイは咳払いをした。彼は色気には弱かった。そんなチョウガイを見つめてルシアンナは愛しそうに微笑した。


「さあ、命のお裾分けだよ!」


 ルシアンナは頬を濡らす涙に両手をつけて、そして店内へと涙のしずくを飛ばした。


 店内の骸骨たちがルシアンナの涙のしずくに触れた途端、あちこちで光が生じた。


「うおおおお!」


 骸骨たちの歓喜の声が店内に響き渡った。


「お、俺の上腕二頭筋があ!」


「ベンチプレスで鍛えた大胸筋が!」


「彼女に自慢するために鍛えた腹筋が!」


「俺の×××が!」


 骸骨たちの歓喜の声。彼らはルシアンナの涙のしずくによって、己の肉体の一部を取り戻したのだ。


 店内にはデビットもいたが、彼もまたルシアンナの涙のしずくによって、両拳のみ肉体を取り戻した。


「俺は…… 俺はまた戦えるのか……!」


 デビットが取り戻した肉体は両手のみだが、それでも彼は満足そうだ。


 男の本能とも言える「戦う魂」を取り戻したデビットは、暗い眼窩にギラギラする輝きを放たせた。


「ありがとう…… あんたは何者なの?」


 涙の跡を乾かせて、ルシアンナはチョウガイに向かって輝かしく微笑んだ。


「ーーただの通りすがりだ」


 チョウガイもまた微笑した。ルシアンナのおかげで、チョウガイも暖かい感情を取り戻したのだ。

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