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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
元年
5/100

カピバラ、温泉宿で客をもてなす




 「帝都」では、ハロウィンの女帝レディー・ハロウィーン(十代後半の欧州系美少女)が、秘密結社「血のバレンタイン」の刺客と戦っていた。


 近年ではハロウィンがバレンタインの経済効果を上回っている。


 世界を統べる「完璧パーフェクト商人」たる彼らは、人の目の届かぬ世界で戦いを繰り広げている……


「テック・セッター!」


 レディー・ハロウィーンがクリスタルを掲げれば、光が彼女を覆い変身させた。


 レディー・ハロウィーンは先祖から受け継いだクリスタルの力によって、「宇宙そら翔ける騎士」に変身するのだ。


「ボル……! テッッッカアアアアッー!」


 レディー・ハロウィーン、いきなりの最強攻撃。


 両肩の粒子砲「ボルテッカ」を発射し、刺客を消滅させた。彼女の悪いくせだ、初手に最高の技を出すのは。後が続かない。


 なお、レディー・ハロウィーンの侍女フランケン・ナースはバレンタインの準備をしていた。


 欧州系のスタイルのよい長身美人ナースの彼女が誰にチョコを渡すのかは不明だ。大勢に配る気かもしれない。


 戦死した後に人造人間フランケンシュタインとして復活した彼女は、頭部に左右一対の電極を持ち、肌は土気色で全身に無数の縫合痕が刻まれているが、穏やかな微笑(と豊かな胸)に魅了させられる者は多い。





 とある温泉宿では、浴室からカピバラを見る事ができた。


 カピバラたちは古い映画の、土曜の夜のフィーバーのように踊っていた。


 浴室の窓から見えるカピバラ達の躍りに子どもたちは大興奮。大人は怪訝な眼差しで見ていた。


 ディナーショーはさらにすごい。


 ーーんっ、んっ、んんんん、ンーンンンー


 ディナーショーの主役はカワウソだ。某水族館でもカワウソの赤ちゃんが産まれた関係で、一時的に人気が高まっているのだ。今年もカワウソ総選挙が行われるに違いない。


「カワウソさん、すごーい!」


 ディナーショーに参加した子どもたちは大興奮。ステージではカピバラが投げたリンゴを、カワウソが手にしたレイピアで突き刺して受け止めた。


「……本当にカワウソか?」


 眉をひそめるのは、御存知「百八の魔星」の首領、天魁星てんかいせいだ。


 長い銀髪の美人である天魁星は、珍しく浴衣姿でディナーショーを眺めている。湯上がりの火照った顔がセクシーだ。


「さあ……」


 隣に座った天威星てんいせいは、さほど興味はないらしい。長身スレンダー美人の天威星は、手酌でワインをぐいぐい飲んでいる。


「カワウソすげー!」


 と子どものように喜ぶのは天殺星てんさつせいだ。百八十センチを越える大柄な彼女は、浴衣のサイズが合っていない。


 胸元ははだけて谷間がのぞいているが、本人は気にした様子もない。敵の撃破数は魔星一の彼女だが、今は純粋にディナーショーを楽しんでいる。そういう純粋さを天魁星は気に入って、側に置いていた。


 なお、この温泉宿の名物であるカワウソもカピバラも、ただ者であるはずがない。


 カワウソ、カピバラの姿をしていても、彼らの正体は宇宙の果てからやってきた超生命体「アニマトロン」である。


 機械と生物の融合した存在である彼らは、地球を狙う「UMAトロン」のカパーンやツチノコンらと戦っていたが、最近ではその力を恐れた地球人の「アニマトロン狩り」によって数を減らしていた。


 やむなく、この温泉宿で隠れ住んでいるのであった。カワウソにそっくりなカワウソン、カピバラにそっくりなカピバラン。彼らに安息はあるのか。





 メイド喫茶の広大な地下室に殺気が満ちていた。学校の体育館よりも広い空間に、巨大ながらも見目麗しい姿が足を組んでイスに腰かけている。


 これは最近出番がないために、怒りのあまり巨大化した吸血鬼の姫ペネロープであった。


「失礼いたします!」


 メイド服を着た欧州系の少女たちが数人がかりで、巨大な「午後の緑茶」のペットボトルを運ぶ。彼女たちはペネロープに仕える狼女である。かよわい女に見えても、人間をはるかにこえる身体能力に加え、獣人形態へ変身することもできる。


「うふふふ…… わたくしの出番ないわねえ…… こうなったら無理矢理にでも登場しないと……!」


 深紅のミニドレスに身を包んだ妖艶なペネロープ(身長約十メートル)は午後の緑茶を飲みながら、怪しい笑みを浮かべるのでした。めでたし、めでたし。

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