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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
二年
40/100

真(チェンジ)! ブッダー黄巾力士



 広大な宇宙空間を宇宙戦艦「梁山泊」は進む。


 義の旗の下に集った「百八の魔星」は、人々を守るために全滅覚悟で宇宙へと出撃したのだ。


 梁山泊の指令室には緊張が満ちていた。


「進めえ、梁山泊は無敵だ……! 何も恐れるものはない!」


 天空星の声が指令室に響いた。彼の叱咤によって、指令室内の重苦しい雰囲気はいささか軽減されたようだ。


 そして指令室の大スクリーンに写し出された宇宙空間に、敵の姿が確認された。


「出撃する!」


 巨体の天空星は大急ぎで指令室を出ていった。


 急先鋒のあだ名の示す通り、天空星は最前線での指揮官なのだ。


 指揮能力と統率力に関しては、天雄星や天暗星以上だ。


「総攻撃開始!」


 羽毛扇を手に、筆頭軍師である知多星は命を下した。


「ーー撃てえい!」


 首領の天魁星(彼女は長い銀髪の美女であった)の号令一下、梁山泊の主砲である日輪砲が閃光を放った。


 宇宙の闇を切り裂いた日輪砲の閃光は命中したが、敵はこたえた様子もない。


「まさか神巨兵か!」


「左様。あれこそ、この宇宙の混沌カオスが産み出した、神を喰らうもの」


 驚く天魁星の隣に立つ小柄な老人、天間星が告げた。


 スクリーンに写し出された敵の姿は、人間に少しだけ似ていた。


 胴体からは二本の腕と足、そして頭が生えている。


 その肌の表面は赤みを帯びた白であり、顔には小さな目が二つに、異形の牙をむき出しにしたおぞましい口腔部があった。


 この敵との距離はまだ相当あるのだが、全長一kmを越える宇宙戦艦である梁山泊よりもはるかに巨大だ。


「日輪砲のエネルギーは吸収されてしまいました」


 天魁星の隣に、もう一人の軍師が控えていた。


 長い金色の髪を持つ美しい少女である。彼女は天魁星の妹、神機軍師・地魁星だ。


「遠距離からの攻撃は通じません。接近して直接攻撃を行わなければ、敵を倒すことはできません」


 地魁星の目に大きなゴーグルが取りつけられていた。彼女は体の大部分を機械に改造しているのだ。


 今も彼女の電子脳は、秒間数億回の演算を行っているのだ。


 そして導かれた答えは、


「神巨兵の内部に侵入し、コアを破壊する。それしか神巨兵を倒すすべはありません」





 百八の魔星の勇士が駆る黄巾力士ロボットが、次々と梁山泊から出撃していく。


「死ぬにはいい日だ……」


 アーマー騎兵の狭苦しいコックピットで、天雄星はつぶやいた。


「何言ってんだ、ムッツリスケベが!」


 無線で連絡してきたのは天暗星である。


「俺は生きて帰って、あいつを幸せにしてやらなくちゃいけねえんだよ!」


 天暗星の声は弾んでいた。これは開き直りかもしれない。


 しかし、その心意気は見事ではないか。無線で聞いていた勇士らは、みな心を軽くした。


 天雄星はマスクの奥で苦笑した。


「結婚式には呼んでくれ」


「け、まだそこまでいってねえよ! 金がねえんだ、金が!」


「二人ともおしゃべりはそこまでだ、来たぞ!」


 天空星の声に、出撃した数十体の黄巾力士ロボットが武器を構えた。


 広大な宇宙空間の前方に、神巨兵のおぞましい姿がある。


 更に神巨兵から分裂した無数の怪物が、黄巾力士ロボットに殺到した。


「行くぞ、コノヤロー!」


 天暗星の操縦する可変戦闘機は人型に変形すると、ガンポッドを射ちまくった。


「……」


 天雄星は無言でトリガーを引いた。人型の黄巾力士ロボットであるアーマー騎兵、その肩にそなえつけられたロケットランチャーが火を吹いた。


 百八の魔星の女剣士、地慧星(あだ名は一丈青)は両手に剣を構えた黄巾力士ロボットで宇宙怪物の群れに飛びこんだ。


 天猛星の乗りこんだ黄巾力士ロボットは全身に火気をそなえていたが、それが全て発射された。


 宇宙空間に光が散り、そこは戦場となった。


 その戦場へ、梁山泊の方角から凄まじい速さで接近するものがある。


「何だあ!?」


 天暗星は激戦の最中で宇宙怪物をすでに十数体撃破していた。


 彼の眼前を三機の戦闘機が飛び去っていく。


 音速をはるかに越えるスピードで、三機の戦闘機は宇宙怪物の群れを突き進んだ。


「チェェェンジッ!」


 戦闘機の一機を操縦していたのは、非戦闘員であるはずの軍師、天機星だった。


「真! ブッダー1(ワン)!」


 天機星の雄叫びは産声だ。


 三機の戦闘機は合体し、一つの人型黄巾力士ロボットになった。


 赤い機体の背にはコウモリを思わせる翼が広がった。


「ブッダーの力を信じるのだ!」


 百八の魔星の守護神、チョウガイもコックピットで叫んだ。彼は二号機に乗りこんでいた。


「感情をこめてパワーを上げろ!」


「うおおお!」


 チョウガイの叱咤激励を受けた天機星は、レバーに力をこめた。


 そして彼らの駆る黄巾力士ロボット「真ブッダーロボ1」の両手の間に、光球が出現した。


 小さな太陽のごとく輝く光球を、真ブッダーロボ1は宇宙怪物の群れへ投げつけた。


「消えろ混沌カオス!」


 天機星と、いや百八の魔星と宇宙怪物の戦いは尚も続いた……



   **



「今のが二千年前の記録映像だ」


 チョウガイはゴヨウに告げた。ゴヨウはVRゴーグルを外した。二千年前の戦いに、動悸が早まっている。


「この宇宙は…… 光と闇、秩序コスモ混沌カオス、そして男と女なんだ……」


 ゴヨウは額の汗をぬぐった。


 混沌カオスとの戦いの行方を思うだけで、ゴヨウは気が遠くなりそうだ。

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