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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
元年
36/100

ゴヨウの新たな災難

 猫格闘家のサモニャンはつわもの隊長とブロークンハートがオメガの刺客を打ち破ったことに感動していた。


「ニャン、ニャン……」


 感無量であった。ブロークンハートが選ばれたことには意味があったと納得した。


 恨みを捨てて、未来を望んだブロークンハートだからこそ選ばれ、そして勝利に貢献できたのだ。


 残念ながら実力は、敵からザコと称されてしまったがーー


 要所要所で底力を発揮、更には「ゲルマンの赤い雨」で敵を切り裂く鮮烈なかっこよさを見せた。


「ウニャ、ウニャ……」


 サモニャンはたかがマンガに涙ぐんだ。


 死を覚悟した先にこそ、充実や栄光がある。


 ブロークンハートは、それを証明した……


「まあ、ブロークンハートなら彼氏にしてもいいかニャ?」


 と♀の悪魔猫ニャンドロメダも感心していました。ニャン、ニャン、とサモニャンもうなずきました。


 しかし、ブロークンハートを軽視してきたファンには面白くない展開です。長きに渡って見下してきたキャラが、まさかまさかの大活躍。


 ブロークンハートの女性ファンは更に増え、熱量も上がっています。


 今は兵隊長という至高のキャラが出ているから落ち着いていますが、今後はどうなるのか……



   ーーーーーーーーーー



「サモニャンもどうなるのかなー」


 知多星ゴヨウはテレビを消しました。サモニャンの今後の展開が気になりました。更新は来年とか、とんでもない罰ゲームです。


 さて「混沌カオス」と戦うためには、己を高めるしかないと悟ったゴヨウ。


 彼はサポートロボットのチョウガイと共に、トレーニングセンターへ出向きました。


 ランニングマシンの近くへ来てみると、人だかりができていました。


 何事かと近寄れば、身長150cm前後の少女が両肩にバーベルを担いでスクワットを繰り返しています。


 バーベルは重りが100kg分、バーが20kgほどですから、120kgを小柄な少女が担いでスクワットしているのです。


 細く華奢な体で…… それはいいのですが、彼女のスパッツのお尻、破れてます。


 力を入れた際に破れたのでしょうが、本人は気づいてません。


 艶かしくも笑みがこぼれる珍光景を男性たちは興味津々に眺めていました。


「あ、あの、お尻破けてますよ」


 勇気を振り絞ったゴヨウの結果はーー


 赤面した少女のビンタでした。





「さっきはごめんなさいね」


 ゴヨウの前の席についた少女は謝りました。場所はトレーニングセンター隣の喫茶店です。


「いや、いいよ」


 頬に手形を残したゴヨウは苦笑しながらパフェを食べています。少女のおごりでした。


「男が甘いものなんて」


「いいじゃん別に」


「ふふふ、それもそうね。あなた、面白い」


 少女は戦乙女の副官、ミルキィローズでした。


 闘神の眷属である彼女は、花嫁修業の一環として戦乙女の副官をしているのです。


「ああ、可愛い子と一緒にいると落ち着くなあ」


「え、なにそれ? 口説いてるの?」


 ゴヨウとミルキィローズが親しそうに仲良くしているテーブルに歩み寄ったのは、帝都に一時帰還していたバレンタイン・エビルでした。


「ゴヨウくうん、何をしているのー?」


 バレンタイン・エビルは無表情でゴヨウに呼びかけました。


 ゴヨウは顔が青ざめました。


 ミルキィローズはバレンタイン・エビルにメンチを切りました。


 新たな三角関係の予感でした。

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