聖夜の超人決戦
人知を越えた力を有し、世の経済を支配する超越の存在……
人は彼らを「正義商人」、「悪魔商人」、「完璧商人」などと呼んだ……!
クリスマスイブにサンタさんと暗黒サンタは対決した。
サンタさんの正体は完璧商人始祖の白銀マンである。
そして暗黒サンタの正体は、完璧商人始祖にして白銀マンの実兄、黄金マンである。
「世界中の子どもを祝福したい」
それが白銀マンの主張だ。分け隔てなく子どもを祝福するべきだと。
「選ばれし者にこそ祝福がある」
と主張するのは黄金マンだ。己が未来に確かな目標を持つ者にこそ祝福が与えられると。
「衝突は避けられぬなゴールド、シルバー」
市場経済における「神の見えざる手」であり、闘争の「裁きの神」である正義マンがレフェリーとなり、黄金マンと白銀マンの対決は始まった。
「ニャガニャガー、白銀マンさーん!」
サンタさんに生暖かい声援を送るのは、「バレンタインの守護神」の座を養娘に譲った精神マンであった。
こうして三大イベントの一つハロウィンはレディー・ハロウィーンがーー
バレンタインは、レディー・ハロウィーンの双子の妹バレンタイン・エビルが司るようになった。
双子の姉妹によってハロウィンとバレンタインが支配され、クリスマスは兄弟によって支配されるとは。
この世は実に面白い。
「行けー、白銀マン!」
リングの外からサンタさんを応援する「一つ目のトナカイ」こと眼マン。
暗黒サンタの戦いを見守るのは、世界の鶏肉市場を司る完璧商人始祖・鴉マンと、悪魔商人にして商人血盟軍の一人・残忍者……
他に猛牛マン、ミス・パーコーメン、阿修羅マンといった悪魔商人たちであった。
「ツアー!」
白銀マンは得意のパーフェクトディフェンダーで黄金マンのミドルキックを受け止め、弾き返し、更にエルボースマッシュで反撃に出る。
黄金マンはそれを受け止めるや、白銀マンをつかみあげて、ボディスラムでリングに叩きつけた。
白銀マンはすぐさま立ち上がり、黄金マンをロープに振った。
返ってきた黄金マンへ白銀マンは左腕のシールドでぶち当たる。
が、黄金マンはすぐさま体を軟体化させて、白銀マンの攻撃を受け流した。
更に黄金マンは白銀マンの首に己が両足を絡ませて、ヘッドシザースで投げた。
ダダアン!とリングが揺れた。
黄金マンも白銀マンもすぐさま立ち上がり、リング中央で対峙した。
二人の金属じみた面には、充実の笑みが浮かんでいる……
兄弟揃って、互いに互いを最大の難敵と認めあっているのだ。
尚も続いた熱き戦いには、商人の神である「ザ・漢」も言葉を失った。
「グロロロオ~……」
ザ・漢は目元を拭った。彼が望んでいたのは、このようなものではなかったか。
愚かさゆえに絶滅させられそうになった商人だが、運命は味方した。
商人は数億年の時を経てなお健在であり、そしてその魂を輝かせている。
黄金マンにいたっては、ザ・漢を倒し、彼を隠居に追い込んでいる。
ザ・漢は望んでいた光景を目の当たりにし、魂の慟哭を抑えきれぬ。
商人は素晴らしい。
戦う魂は永遠の形――
信じた道の正しさを黄金マンと白銀マンは証明した。
ザ・漢はそれに感動したのだ。
「将軍様ー!」
猛牛マンの声援に力を沸かせた黄金マンは、ラリアットで白銀マンをガードごと吹き飛ばした。
「サンタさーん!」
精神マンの(少々気色悪い)声援に、白銀マンは無心の力を発揮し――
黄金マンの眼前に踏みこみ、タックルして捕らえた。
そしてブリッジの勢いで、黄金マンを宙高く浮かせた。
「こ、この技は……!」
黄金マンは空中でうめく。白銀マンも跳躍し、ブリッジの連続で黄金マンを空へと放り上げていく。
これは白銀マン最大の必殺技「尊大なる閃光」へのプレリュードではないか。
「よくぞここまで……!」
窮地に陥った黄金マンだが、彼は満足していた。
ザ・漢も黄金マンの成長と、自身の敗北を心地よく受け入れた。
そのザ・漢の気持ちが、今の黄金マンにはよくわかる。
弟の白銀マンは、兄である黄金マンを越えようとしているのだ。
「ツアー!」
白銀マンは空中で黄金マンを複雑な固め技にとらえた!
「こ、これは!」
「『尊大なる閃光』ではない!」
「あ、あれは『筋肉の閃光』だー!」
白銀マンは黄金マンに最大の慈悲たる技、自身の目指した理想である『筋肉の閃光』をしかけていた。
黄金マンと白銀マン、二人の祝福が世界中を包んでいった。




