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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
元年
28/100

火を吹け重装改

 帝都を乱していた「外宇宙から来た女たち」だが、ハロウィンを機に落ち着いてきた。


 これはレディー・ハロウィーンによって、外宇宙から来た女たちがハロウィンを楽しんだからだ。


 平均身長2・5mに及ぶ外宇宙から来た女たちは、仮装してハロウィンパーティーに参加し、ある者は楽しみ、またある者は彼氏ができたり……


 外宇宙から来た女たちも、帝都に活力を与えていた。女性の生命力が世界を活性化させるのだ。


 なお、レディー・ハロウィーンと侍女フランケン・ナースは自分達へのご褒美として、しばらくバカンスに出かけていた。


 そしてレディー・ハロウィーンの双子の妹バレンタイン・エビルは、早くも来年のバレンタインに備えて動き始めーー


 サンタさんと暗黒ブラックサンタも、クリスマスに向けて本格的な活動を開始した。


 更に「百八の魔星」の筆頭軍師ゴヨウ先生は、武闘派の面々と共にトレーニングセンターで鍛練に励んでいた。


 柔道着に着替えたゴヨウ(イメージcv:草尾毅さん)は、天暗星ヨウジ(イメージcv:山崎たくみさん)と乱取りを行う。


 ヨウジはゴヨウに向かって踏みこみ、組むや否や小外刈りで体勢を崩しーー


 刹那の間に背負投でゴヨウを背から畳に落とした。


「どうした、ゴヨウ先生?」


 ヨウジはニヤニヤしてゴヨウを見下ろした。彼は技の勢いは手加減するが、攻め方には容赦がない。


「く!」


 ゴヨウは素早く立ち上がり、ヨウジと再び組もうとするが、そこを出足払いで転がされた。実力は桁が違った。


 倍率数百倍の役人試験に合格したヨウジは、八十万天軍のエリート中のエリートであった。


 が、彼は同僚から妬まれ、上役からは疎まれーー


 挙げ句の果てに上役と同僚から無実の罪を着せられて、処刑されそうになった。


 ーーて、てめえら全員地獄へ落ちろ……!


 処刑場に手足を縛られて引き出されたヨウジは、悔しさのあまり憤怒の形相で血涙を流した。


 彼が処刑されそうになったところを、天魁星ショウコ率いる「梁山泊(※これは彼らの超時空要塞にちにんだ呼び名である)」のメンバーが助けた。


 今ではゴヨウは「百八の魔星」No.1の剣士であり、天雄星リンチュウや天威星コーエンらと同じく最強メンバーの一人である。


 ゴヨウはヨウジが好きではない。口は悪いし、態度も悪い。


 それでいて敵対する「戦乙女」のNo.3である戦乙女エースの彼氏なのだ。


 女にもてないゴヨウとしては、嫌いなタイプの男であるヨウジが、超美人の戦乙女エースとつきあっているのが面白くないがーー


「うりやあああ!」


 汗をかいたゴヨウは、無心に突き進みヨウジに背負投をしかけた。


「よーし、よし!」


 ヨウジは畳の上でバアン!と受け身を取るや、素早く前回りして立ち上がった。


「それだ、今のだ! それが最高の心技体だ! 忘れんじゃねーぞ!」


 ヨウジは不敵なーー今にもケンカをしかけてきそうなーーがらも、さわやかな笑みをゴヨウに向けた。


 最高の心技体ーー


 それこそが、あらゆる武の真髄だとヨウジは説く。


 どんな相手であろうと、どれほど強かろうと、己の信じる技で、全身全霊で挑めと言う。


「あ、ありがとうございました!」


 ゴヨウはヨウジに一礼した。百八の魔星においては、役職はゴヨウの方が上だが、彼には謙虚の気持ちくらいはある。


(粗にして野だが卑に非ず、か……)


 ゴヨウは畳から出て、板の間に腰を下ろし息を整えながら、ヨウジやリンチュウらの鍛練を見学した。


 柔道、空手、少林寺拳法、レスリング……


 「百八の魔星」の武闘派の面々と鍛練したら、命がいくつあっても足りないなと思うゴヨウであった。





 トレーニングセンターから帰ろうとしたところで、ゴヨウらは戦乙女のメンバーと遭遇した。彼女達もトレーニングの帰りらしかった。


「リンチュウさん……(はあと)」


 戦乙女のリーダー、ルミナス(外見は十代前半のツインテールの美少女)はリンチュウの側に寄ってきて話し始めた。


「あら、偶然ね」


 戦乙女エースはーー


 外見は乙女に相応しからぬ妙齢の超美人たる長く赤い髪の戦乙女エースは、天暗星ヨウジの側に立った。


 きっと偶然ではない。戦乙女エースはヨウジがトレーニングセンターに行くのを知っていたので、仲間を誘って来ていたのだ。


「…………お、俺、先に帰るから」


 ゴヨウは寂しくなったので、先に帰る事にした。他の「百八の魔星」のメンバーも、戦乙女らに話しかけたり話しかけられたりーー


 あちこちで会話が弾んでいるようだ。どうやら自分は仲間外れだとばかりに、ゴヨウはトレーニングセンターから走って帰った。





 外宇宙から来た女たちの社会性は蟻に似ていた。


 女王を頂点にして、労働や戦闘を担当する数多くの女達が仕え、ごくごく僅かの男達がいる。


 女王だった存在アウターは今や軍神スサノーの元に居候し、女達の大部分は帝都で恋愛活動に励みーー


 一度は逃亡した男達だが、彼らは宇宙戦艦の元へ帰ってきた。


 全長一kmを優に越える宇宙戦艦は、内部にまだ秘密を隠しているようだ。


 超時空要塞「梁山泊」の主砲である日輪砲のエネルギーを吸収してしまうなど、ただ事ではない。


 その秘密を知るのは「百八の魔星」においては、ただ一人ーー


 筆頭軍師、天機星「知多星」ゴヨウその人だ。


「ーー行くぞチョウガイ!」


「おおよ!」


 ゴヨウの駆る黄巾力士ロボットは、地中から突如として姿を現した。


 帝都郊外の空に浮遊する蟻の巣型の宇宙戦艦、その下には拓けた大地が広がっていた。


 外宇宙の男達が操縦する人型兵器によって、建造物は原型を留めぬほどに破壊され、周囲は荒野と化したのだ。


 その荒野の戦場へ、ゴヨウとチョウガイ(イメージcv:千葉繁さん)の駆る「重装改」なる黄巾力士は、地中を掘り進んでやってきたのだ。


 ーーガシャン、ガシャン


 重装改を発見した無人の四つ足戦闘ロボットーー


 半人半馬のケンタウルス型ロボットの群れは、腹部のビーム砲を次々と発射した。


 が、ゴヨウとチョウガイが乗り込んだ重装改は怯まない。


 重装改は赤い機体の人型ロボットだが、右手には大型二連ビームガンを、左手には大型のタワーシールドを構えていたがーー


 足裏に備えられた風火輪で、ローラースケートのように猛烈な勢いでビーム砲飛び交う戦場に踏みこんだ。


「分離!」


 ゴヨウはローラーダッシュしながら重装改を操作し、分離させた。


 腰から上の上半身は分離して戦闘機形態へ変形しーー


 下半身は前面部にタワーシールドを装着、更に大型二連ビームガンを主砲にして戦車のような形態へと変形した。


「うおおお!」


 上半身の戦闘機形態を操縦し、ゴヨウは敵ロボットへ両肩に一門ずつ備えつけられたビームガンを連射した。


 音速を越える速さで宙を飛び交いながら行われる射撃に、四つ足の戦闘ロボットは抵抗もできずに破壊されていく。


「この辺は元ネタ通りだな!」


 地上ではチョウガイが操縦する自装改ーー


 重装改の下半身にタワーシールドと二連ビームガンを装備した戦車のごとき自装改が、突進力を活かして突き進む。


 二連ビームガンから放たれた光線が、四つ足の戦闘ロボットをまとめて貫き、破壊していく。


「ーー出てきたぞ!」


 ゴヨウはコックピット内で叫んだ。空に浮かんだ宇宙戦艦、通称「女の城」から白銀色の機体が飛び出してきたのだ。


 無人の四つ足戦闘ロボットは、全て撃破されていた。


 ゴヨウの駆る飛装改は大きく旋回して、地上へと舞い降りていく。


 そして土煙をあげて疾走する自装改と再びドッキングし、重装改へと戻った。


「うおおお!」


 ゴヨウの重装改は勢いを止めぬ。


 飛来してきた白銀色の機体の打ちこんできた斧を、タワーシールドで受け止めた。


 数十トンにも及ぶ重金属の激突は、火花を散らし、耳をつんざく轟音を辺りに響かせた。


 ゴヨウの重装改は素早くローラーダッシュして距離を取った。


 白銀色のロボットは背に翼を持つ有翼人のごときフォルムをしていた。


 その右手には、原始的ながら重装甲をも破壊する重厚な手斧が握られていた。


「ーー勝負だ!」


 ゴヨウは叫ぶ。途端に彼の駆る重装改は二連ビームガンとタワーシールドを投げ捨てた。


 そして左腕装甲内に収納されていた金属製の鞭を引き抜いた。


 鞭は光と共に一本の輝く両刃の剣と化した。


 雄叫びを上げてゴヨウの重装改は敵へローラーダッシュで突き進む。


 「女の城」に捕らわれた「宇宙の意思たる女神」の分身を助け出すため、ゴヨウは最高の心技体で挑んでいく。


 荒野の戦場で、鉄巨人の一騎討ちは続いたーー

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