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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
元年
25/100

ゴヨウ先生、意中の人と時を過ごす



 サモニャン・ニャンポーは、憧れの二次元の世界へ行くよりも、同居猫のアンドロメダと暮らす事を選んだ。


 伝説の商人、ソルジャーとブロークンハートによる「完全被甲弾」の試合は、ネットで読む事に決めたのだ。


(夢よりも雌猫を選ぶ…… これが雄猫のロマンだニャ!)


 ロマンに浸るサモニャンの隣で、悪魔雌猫アンドロメダは、キン肉ニャンを王位争奪戦まで読み終えた。


「面白かったニャ~ ビッビーンバちゃんが超かわいいニャ~」


「……他には?」


「野郎に興味はないニャ」


 アンドロメダの言葉にサモニャンは苦りきった顔でコーヒーを飲むのでした。



   **



「最近の『燃えよサモニャン』も落ち着いちゃったなー」


 知多星ゴヨウは「燃えよサモニャン」の視聴を終えると、待ち合わせ場所のカフェに向かった。


 相手はバレンタイン・エビルだ。約束の時間より三十分早くカフェに到着したゴヨウだったが、すでにバレンタイン・エビルは一人でティータイムを楽しんでいたようだ。


「お、お待たせ!」


「早いわね、まだ三十分もあるわよ」


「い、いや、まあ、その…… 君の顔が見たくて」


 ゴヨウの言葉にバレンタイン・エビルは、ほんの一瞬だけ輝かしい笑顔を見せた。


 それを見た時、ゴヨウは「もう死んでもいい……」と思った。あまりにも無欲過ぎた。過ぎたるは及ばざるがごとしである。


「どうして君は……」


 ゴヨウは言葉に詰まる。レディー・ハロウィーンが男友達と一緒に草野球や釣りに興じるのに対し、妹のバレンタイン・エビルは一人でいてばかりだ。


「一人が性に合うのよ」


「で、でもさあ」


 ゴヨウは知っている。完璧商人であるバレンタイン・エビルは、バレンタインの守護者だと。


 バレンタインにチョコの受け取りを拒み、更にチョコに込められた思いを踏みにじる者を裁く事を。


 彼女の必殺技「バレンタインの鈍色刃」が象徴するのは、バレンタインをないがしろにする者に突きつけられる、裁きの刃であるのだ。


 なのに、彼女は全く評価されないではないか。


 ゴヨウはそれが悔しいのだ。


「わたしはわたし。バレンタイン・エビルよ。それが使命なの」


「……俺は知多星ゴヨウさ」


 バレンタイン・エビルとゴヨウは顔を見合わせて笑った。恋人ではないが、強い絆で結ばれた戦友のようだった。


「まだまだね」


「え、何が」


「あら聞こえてた?」


「んー、聞こえなかった」


 二人の意味深なやり取りを通りすがりのカワウソン(超アニマル生命体)が嫉妬混じりに眺めていた。


「カワ~!」


 カワウソンは鋭い爪をひらめかせて、二人に襲いかかった。





 「七人の悪魔商人」の紅一点、ミス・パーコーメン(遠い親戚がエジプトにいる)。


 「運命の五人」の紅一点、ビッグボイン。


 二人の写真集を買うために、妻のサリアを質屋に入れようとした正義商人「仮面の貴公子」だったが……


「サリア・スペシャルー!」


 怒った妻サリアから自身の必殺技フェイバリットを食らい、仮面の貴公子はKOされた。


 妻を質屋に入れるなどと、冗談でも口にしてはいけない。むーざん、むーざん。

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