ゴヨウ先生、宇宙の意思を感知す
知多星ゴヨウは夢を見た。
それは美しい女性が土をこねて、人の形にしーー
命を吹きこむと、その土の人形は肉ある身となって、台の上に立ち上がったのである。
まるで母親と幼い息子のやり取りを見るようだった。
「ただ、それだけなんだけどさ」
ゴヨウは百八の魔星の神、チョウガイに告げた。
“……それは宇宙の意思たる天なる母ではないか”
チョウガイは言った。
この宇宙を造った存在は女の超神であると。
「そうなんだ、天帝様じゃないのか」
“……天帝様より上位の存在だ。噂にしか聞いた事がないが…… なんでお前に存在を匂わせるかな”
まあ、そんな事がありーー
バレンタイン・エビルと待ち合わせしていたゴヨウは、出かける事にした(能天気100%)。
途中、レディー・ハロウィーンが外出しているのに遭遇し、彼は駆け寄った。
レディー・ハロウィーンはバレンタイン・エビルの双子の姉だ。バレンタイン・エビルがロングヘアーに対して、レディー・ハロウィーンがショートヘアーという事をのぞけば、ほとんど瓜二つだ。
「ショートヘアーも似合うねー!」
ゴヨウはレディー・ハロウィーンに駆け寄っていった。彼はショートヘアーが好みだったから、バレンタイン・エビルが髪型を変えたのだとはしゃいでしまったのだ。
「な、何よ、アンタ!」
レディー・ハロウィーンは右フックでゴヨウを殴り飛ばした。彼女は男が大嫌いだから、ナンパしてくる者には問答無用で鉄拳制裁だ。
「に、似合うよー! 綺麗だよー!」
奥歯をへし折られたゴヨウは訳がわからないながらも、必死でレディー・ハロウィーンに向かっていった。
(なんか嫌われるような事したっけ!?)
その疑念がゴヨウを必死にさせる。彼とて好きな相手に嫌われたくはない。それゆえの果敢なアタックだ。夏にはバレンタイン・エビルをプールに誘おうと思っていた。
ーー彼女の水着姿が見られるなら死ねる!
ゴヨウの必死の一念だが、人違いのレディー・ハロウィーンには通じない。
「な、何よ! しつこいわね!」
「俺と一緒にプールに行こうー! 海でもいいー!」
人違いから始まった二人の喜劇的やり取りを、これまた通りすがりの天殺星リッキーと天威星コーエンの美女が目撃した。
「おおー、ゴヨウ先生が女を口説いている!」
「い、いつの間にこんなに立派になって……」
ゴヨウの姉貴分であるリッキーとコーエンは、ゴヨウの甲斐性が微笑ましかった。
正義商人ブロークンハートのように、己より強い者に立ち向かう気概こそ、男の甲斐性なのだ。
「負けんじゃねーぞー!」
「骨は拾ってあげるわー!」
ワイルドな美女リッキーと、和服姿の美女コーエンの声援を受けて、ゴヨウは無我夢中でレディー・ハロウィーンに挑んでいく。
「プールがダメならキャンプ場とか!」
「うっさーい!」
レディー・ハロウィーンの肘打ちに、ゴヨウは遂にダウンした。
1ラウンド、2:37秒の出来事だった。
こんなダメな男ゴヨウだが、彼は天母の存在を朧気ながら感知した。
何が起きるかわからない。戦いはまだ続くのだ。




