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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
元年
14/100

ゴヨウ先生、召命を得る


 ゴヨウは「チョウガイの間」に入った。


 チョウガイとはゴヨウらを魔星の宿命に導いた、百八の魔星の神ともいうべき存在である。


 この超時空要塞「梁山泊」の中心部に位置するスーパーコンピューター、チョウガイ。


 この部屋には「百八の魔星」の中でも、僅か数名の者しか入れない。実力はトップレベルのリンチュウ、ヨウジ、コーエンらですら入れないのだ。


 魔星の機密を預かる筆頭軍師ゴヨウならばこそ、入室が許される。


 ゴヨウは薄暗い室内を見回した。まるでウェディングケーキのような形をした巨大なコンピューター「チョウガイ」が無数の光を放っている。


 部屋の天井には「宇宙マップ」が映し出されていた。マップのあちこちで光が生じては消えている。


「チョウガイ様、これは?」


“星辰…… 宇宙の乱れと共に、この大宇宙のいたるところでカタストロフィーが生じているのだ”


 チョウガイによれば、この宇宙中でーー


 光の速さで何千何万何億年とかかる宇宙の果ての、いたるところで崩壊が起きているとの事だった。


 この宇宙を一人の人間に例えればわかりやすい。宇宙は病にかかり、怪我をし、疲れはてているのだ。


 そのために生命体の住む惑星が爆発・消滅し、計測不可能なほどの命が失われているのだった。


 この大破壊がいつまで続くのかわからない。


 ひょっとすれば宇宙そのものが消滅し、ゴヨウも含めた帝都の命全ても失われるかもしれぬ。


“それでも命ある限り…… 命は前進し、進化しなければならぬ”


 チョウガイの言葉と共に、床が突如として透明になった。


 いや、これは「梁山泊」が通過している帝都の夜景が映し出されているのだった。


 夜の暗い帝都を無数の明かりが照らしている。


 終わらない町、眠らない町と帝都の人々は言う。


 無数の明かりは、まるで暗黒世界の「希望」のようだ。


 眼下の光景の美しさに見とれながら、ゴヨウの目頭が熱くなった。


「命は…… 続いていくんだ」


 ゴヨウは目元を手の甲で拭った。この星で命は数十億年の進化を経て、受け継がれてきた。


“そうだ、命ある限り……”


 チョウガイの機械音声は厳かな響きを伴っていく。


“未来を守るーー それが汝ら「百八の魔星」に与えられた召命である”


 召命とは、罪の世界に生きていた者が,神に呼出されて救いを与えられる……という意味だ。


「わかりました」


 ゴヨウもまた凛々しい表情でーー彼の平時でのシリアスモードは三分しか持続しないがーー眼下の光景を見下ろした。帝都の明かりの下で人々はーー


 命は生きているのだ。


“餓鬼畜生に構うべからず”


 チョウガイは忠告する。人間の悪意こそおぞましいものだと。


 その悪意が外宇宙からの侵略者を招いていると。


“使命を全うせよ……”


 チョウガイの言葉を聞きながら、ゴヨウの脳裏には無数の女性の姿が浮かんだ。


 女子力0と配下に陰口を言われたりするが、秘めた優しさは恵みの雨のごとし首領、天魁星ショウコ。


 その妹の地魁星アケミ。彼女はゴヨウを補佐する軍師でもある。


 正義商人レディー・ハロウィーンと侍女のフランケン・ナース。


 そしてレディー・ハロウィーンの双子の妹バレンタイン・エビル……


「未来を…… 守る」


 ゴヨウはつぶやいた。彼には命を捨ててでも守るべき存在があるのだ。たとえ力及ばずとも、最期までやるべき対象がーー


“それでこそ天道なり”


 チョウガイは沈黙した。ゴヨウは眼下の光景をまだ見下ろしている。


 そしてゴヨウは口を開いた。


「ネットは広大だわ……」


“パクるな!”


 チョウガイはゴヨウを叱りつけた。やはりゴヨウは最期が締まらない。やる時はやるのだが。

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