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知多星ゴヨウ  作者: MIROKU
元年
13/100

レディー・ハロウィーン、レジャー大帝GWと対峙す

 人知を越えた力を持ち、世界の富と経済を司る存在……


 人は彼らを「商人」と呼んだ。


 正義商人レディー・ハロウィーンは、レジャー大帝GWとの激しい闘争を予感していた。


 が、レジャー大帝GWは十連休という多忙の中で、気の毒なくらい疲れきっていた。


「ぶつぶつ……」


 レジャー大帝GWはレディー・ハロウィーンを前にしても、心ここにあらずの様子だった。


 彼は十連休を激務で過ごし、僅かな間に痩せこけてしまった。精神的にも落ち着かないようだ。


「ち、ちょっと! しっかりしなさいよ!」


 レディー・ハロウィーンはーー暑い日が続いているので、早くもキャミソールにショートパンツ姿だーーレジャー大帝GWの情けない姿に、金切り声を上げた。


「そんなんで『完璧パーフェクト商人』なんて名乗れるわけ? しっかりしなさいよ!」


 レディー・ハロウィーンは敵であるレジャー大帝GWを元気づけた。


 ああ、彼女は厳しくも優しい。


 欧州系の二十歳前の美少女(実際は四年制大学も卒業しており、年齢より若く見える)であるレディー・ハロウィーンは、華奢ながらも長い手足に麗しのショートヘアーを持つ。


 そんなレディー・ハロウィーンに叱咤激励されても、レジャー大帝GWは鬱状態から回復しない。十連休中は休みなく、徹夜も数日している。


 打倒レディー・ハロウィーンどころか、自身の健康と命の管理すら危ういようだ。レディー・ハロウィーンが心配するのも仕方ない。


 性格がきついと思われているレディー・ハロウィーンだが、彼女の心は海より深く大地より広い。


「ほら、これあげるから元気出しなさいよ」


 レディー・ハロウィーンはレジャー大帝GWに何か差し出した。彼は受け取るや否や、両目を大きく見開いた。


 それはマイクロビキニを身につけたフランケン・ナースが中ジョッキを手にして微笑む、ビールの宣伝ポスターだった。


“この一杯が好き”


 などとポスターの端に書かれているが、これは果たしてフランケン・ナースの心理なのだろうか。それはわからない。女心は真のミステリーなのだ。


 このポスターは帝都中の飲食店に配布されているが、盗難が多発ーー


 中にはネットで売られているケースもある。高値であるにも関わらず、あっという間に売れてしまう。


 これもフランケン・ナースの人徳と深い谷間の魅せる業か。彼女は、次はプールの宣伝ポスターのモデルになるという。


「やってやるふうっ!」


 レジャー大帝GWはポスターを手にして眺め、絶叫した。レディー・ハロウィーンはドン引きした。


「ありがとう、レディー・ハロウィーン! 君とはいい強敵ともでいられそうだよ!」


 レジャー大帝GWは上機嫌で去っていった。レディー・ハロウィーンはため息をついた。


「でかいのがいいなら、ホルスタインと結婚すればいいんだわ……」


 レディー・ハロウィーンはため息をもうひとつついた。スレンダーな彼女はボリュームが足りなすぎるのを自覚しているからだ。


 今年の夏は……とレディー・ハロウィーンは決意を新たにするのでした。めでたし、めでたし。

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