百八の魔星、決死を覚悟す
時空要塞「梁山泊」の司令室に緊張が走った。
宇宙の彼方に敵を発見したからだ。
モニターに映し出された映像に、天魁星らは絶句した。
宇宙の果てまでを埋め尽くさんとするほどの大軍ーー
宇宙戦艦が数百以上も映っているではないか。
「外宇宙からの侵略者…… ですかな」
厳かに告げたのは天機星だ。居並ぶ勇士らも緊張の表情である。
「どうするんだ?」
天暗星は腰の剣の柄に手を添えながら言った。もちろん主である天魁星に尋ねたのだ。
「ーー梁山泊、前進じゃ」
天魁星は静かに言った。普段はおちゃらけた彼女も、いざとなれば肚を据える。
天魁星は勝ち目のない戦いに挑もうというのだ。
「それでこそ我が主! 先鋒はぜひ自分に!」
声に喜びを秘めて、天空星が言った。かつては軍人として愚直なまでに民を守ってきたが、軍の上層部は彼に責を押しつけて処刑しようとした。
「こりゃあ最高の戦いになりそうだぜ……」
凄絶な笑みを浮かべる天暗星。彼は倍率数百倍の試験に合格したエリートだが、同僚に妬まれ、上司に疎まれた挙げ句に処刑されそうになった。天暗星は死に場所を求めていた。
「酔いが醒めたな」
天雄星もまた静かな面に不屈の闘志を浮かべ、モニターを見つめていた。
元八十万天軍槍棒師範という輝かしい経歴を持つ彼だが、親友に裏切られ、妻は凌辱されそうになったので自害した。
絶望の果てに百八の魔星の一人となった天雄星もまた、華々しい最期を飾る事を望んでいた。
「ーーうむ、行くぞ!」
天魁星は不敵な笑みを浮かべて妹の地魁星に命を下す。時空要塞「梁山泊」は、堂々と帝都の空へ浮かび上がり、宇宙へと飛び立った。
「わらわは、わらわの旗の下に生きるのよ……」
天魁星は小さくつぶやいた。彼女の旗印は「義」である。
義とは羊の我と書く。
大人しそうに見えても、いざとなれば、家族や仲間を守るために、己を省みずに敵に向かっていくものだ。
「百八の魔星」を乗せた時空要塞「梁山泊」は、ゆっくりと、だが確実に戦場へと向かっていった……
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悲壮感(男のロマン?)漂う展開だったが、宇宙から来たのは、異星人アナスタシアらの一族であった。
五千年ほど前にアナスタシアらと袂を分かった、同族なのだという。
“え、この星の男と私達、子供できるの?”
「できるわよー」
アナスタシアは明るく軽く答えたので、数百の宇宙戦艦は、この星のあちこちに不時着した。子孫繁栄のために……
「いまいち決まりませんでしたね~」
天機星「知多星」ゴヨウは膝を叩いて大笑いした。
天魁星らは、なんとなく恥ずかしくなったので、みんなでボーリングとカラオケに出かけたのでした。めでたし、めでたし。




