第8話 <宝玉名>持ちジャイナ·グラナート·ホウレイ
~数時間前 姫様たちとわかれた後~
「...はぁ、何して過ごすかぁ」
正直、初めて来る街だから暇潰ししにくい、
「...ああ、綺麗だ...」
だが、海を見れるのは元日本人としては、懐かしく思ってついつい何時も見ていたくなる。
そうして、どのくらい時間が経ったか分からないが、さざ波の音のみが響く場に現れた、おそらく俺と同じか、少し年下の赤い短髪少女に、
「あなたがイオリね...わたくしと決闘しなさい!」
と、言われた。
もちょとマシなフラグ立てて欲しいなぁ、神様。
「えっ?て言うかあんた様は一体何処のどなた様?」
「わたくしは、ジャイナ·グラナート·ホウレイよ」
流石に驚いた。グラナートって言えば<宝玉名>1つで、位は姫様の斎の次ぐらいに偉い雲の上の人何だが。
「で、<宝玉名>を持つ名家であられるグラナート嬢が、平民の俺に何故決闘を挑まれるのですか?」
「…だって、あなた、サクラ様に馴れ馴れしいのよ!下賎な平民のくせに!」
「…ふーん、それだけ…?」
「ま、まだあるわよ。私たちは高貴なる者なの、だから、あなた達と同じ目線なのが気に食わない。…ひれ伏しなさい」
こりゃまた、酷いな。
赤い3倍の男のセリフがよく分かる、偏見を持った人間を育てるなんて、どれほど罪深いことか。
…助ける義理はないんだけど、きっとこの有様を見れば、姫様は救おうとするんだよなよなぁ……はぁ。
「…その決闘買った」
~そして、現在駐在所に隣接されている訓練所~
グラナートは、装飾が施された白銀の甲冑と剣を帯び、対象的に俺はいつものジンベイに暗器と籠手、腰に帯びた太刀のみ。
「平民というのは、装備も貧弱ですのね」
もう勝った気でいるのか、グラナートは上機嫌だ。
「わたくしが勝ち、あなたをサクラ様から引き離しますわ」
決闘をするにあたり、俺たちは勝った者の要求に従うことになっている。
「...はいはい、どっからでもどーぞ」
審判はジャックさんが快く引き受けてくれた。
「それでは、参ります、わ!」
瞬間2メートル先にいたはずのグラナートが、一瞬で彼女の剣の間合いまで近づいていた。
(まぁ、悪くない。それなりに修練は積んでるらしい)
「これで、終わりですわ」
彼女は、俺に向かって剣を振り抜き、次いで硬直した。
「え!?わ、わたくしの剣は...?」
「何があっても、思考が止まるのは戦場だと即戦死ものだな」
俺は右手でもて余す剣を見せつけながら続ける。
「成る程。こいつはミスリルで出来てるな、さっきの速さのタネはこれか」
ミスリルは魔術によって生み出された金属で、従来の金属と比べ、圧倒的な強度を誇り、また
魔術によって生み出されたため、魔術陣を予め組み込んで、魔力を込めると性能を底上げ出来る。
「まぁ、姫様やカエデには基本性能は敵わないが、まぁまぁ得意なんでな。
実戦経験のないお嬢様には負けねぇよ」
「...わ、わたくしをどうする気」
グラナートは震えた声で問う。
だが、それに答えたのは、俺ではなく。
「ジャイナ·グラナート·ホウレイ、決闘の権限をイオリ君から私に譲り受け、貴方には私たちと共に国々をまわってもらいます」
「え…?」
驚愕するグラナートに姫様は続けて言う。
「貴方の様な考えは、私も持っていました」
「っ!ならば、何故!」
「……ねぇ、ジャイナ。親の見せる籠の中の景色は楽しいの…?」
「っ!」
「そゆこと、じゃあこれからよろし―」
俺の言葉は突如起こった閃光、爆音と爆風によって途切れる。
再び視界がひらけると、街は火災や悲鳴が飛び交い、遠くからは味方の軍服でない軍服を着て、武装したを男たち。
「勘弁してくれよぉ」
平穏という言葉は、とうの昔に去ってしまったらしいと、俺は思った。