第7話 港湾都市アルヒェに到着
アルクロン共和国首都、アルヒェ。アルクロンは、他国と違って亜人と呼ばれる獣人等の半亜人を
差別無く受け入れる、数少ない大国である。
それ自体は、素晴らしいと思う。魔物の脅威の中で、人種差別やってんなんてバカらしい。
実際、差別してる理由はー。
「おお!海だ、きれーだな。あっ、あっちに魚があれなに!?」
「え!?あれはイカですよ!?魚ではないです!」
なんで、コイツらこんなにハイテンションなんだよ...。
あと、何で普通の観光客みたいに楽しめるんだよ。
「な、なぁ、カエデ、姫様。ここってもしかしなくても軍都だよ?」
「ん?それが何?」
「確かに軍都ですが、それが...?」
二人共何て図太い神経持ってやがんだろう。
「...分かりやすく言おうか、お前らが、田舎から上京したばかりの人みたいな
天然コントのおかげで、憲兵がさっきからこっち見てんの!メッチャ怖い顔で!」
俺の指摘でようやく気づいたらしく、二人とも憲兵の方を見る。
「おっ!ホントだ!ちょっと挨拶してくるー」
「は!?ちょっ、カエデー!」
死ぬ気か!?真っ直ぐ一番怖い顔の人の方に行ったぞ!?
「――――」
「―――――」
何か話し、あっ帰って来た。
「あっ、兄さん。あの人、ジャックさんっていう名前で、今日は桜様がアルヒェに立ち寄る、という連絡を受けてその御迎えと警護の為に待ってたんだと」
えっ?じゃあずっとこっちを見てたのは...。
「でっ、桜様と思われる人物が現れて、声をかけようとしたけど、観光を楽しんでおられたから声をかけられず、取り敢えず警護の任務を全うしようとしてたんだって」
「ちょっとジャックさんに謝ってくる!」
............................
<5分後>
「いえいえ、気にしないで下さい、ではご案内致します」
ジャックさんは怒らず、笑って許してくれた。
どうやら、その見た目で、そういう誤解は結構あるらしい。
ジャックさんは23歳なのだが、そのフレンドリーな性格に合わない岩の様な顔とスキンヘッド、
体はアメリカのラグビー選手みたいな体つきのおかげで友達が出来ず、七夕に友達をくださいと書いたほど...。(あれ?目から涙が)
「どうしましたっ!何か不快な思いをさせてしまいましたか?」
「…すいません、目にホコリが入ったっぽくて」
「だ、大丈夫ですか?ここ綺麗に整備されてるはずなんですが、
今日は何故か目から涙を流す人が多いですね」
「そ、そうなんですか…」
絶対、泣いた人たち、貴方の話を(偶然)聞いた人ですよ。
そんな鈍いジャックさんに案内された場所は、憲兵団の詰所だった。
「取り敢えず、イオリ君が撃退した盗賊団はうちが責任を持って引き受けよう」
「はい、お願いします」
「じゃあ、調書を書かなくてはいけないから、幾つか質問に答えてくれ」
「あっ、それは私がします。イオリ君は疲れているので」
「姫様...?」
「20人相手に1人で戦っていたのでイオリ君よりも、離れて客観的に見れていた私やカエデが適任だと思います。...それに私はさっきも貴方に守られているもの」
「…気づいてたのか…?」
「さぁ、なんのことでしょうか」
姫様がそう言うと、カエデも
「そーそー、兄さんは働きすぎなんだって、少し休んでどけって」
そう言われ、俺は突如出来た暇をもて余しながら、アルヒェをいく宛もなく歩きまわった。