第5話 サスライの行商人
この数年間は色々あった。
「おーい!イオリさん、お待ちかねの魔導書持ってきたぞ」
「セルさん、お久し振りです」
セルさんは行商を始めて駆け出しの頃からの2年ぐらいの付き合いだ。
「久し振りじゃな、今日はとっておきの差し入れを持って来たぞ」
そう言ってセルさんから手渡された数冊の本を見ると、
「おっ、<爆発>の魔導書じゃないですか。あっ、でもお代が」
「ははは、お代は前回のアレでチャラだから安心しろ」
セルさんはにっと笑うと、外套を肩にかけて去って行った。
ここ数年は、親元を離れて出稼ぎ中だ。
「ん?兄さん、それは...」
年季のはいったバンダナを額に巻いた弟が問いかける。
「ああ、セルの翁からの贈り物」
「へぇ、セルじいさん来てたんだ」
弟のカエデも12歳となり、一緒に旅に出ている。
でも、正直言ってカエデの身体能力や魔力量は、俺をとっくに凌駕している。
今の格好は俺と同じジンベイだが、色は朱色を基調とし内側は鎖かたびらの様な防具を着けている。
「イオリ君、今回の行商での、消耗品と商品の補充品、まとめておきまし...どうしました」
「...いや、何でもない、何でもないよ」
なぜか姫様も旅に同行している。
でも、もう諦めている。だって221回も言って、そのたび諦めずについてくるんだから...
カエデなんて暢気に「221、かぁ。後一回でコンボだったのに」と言っていたが
例えるなら、この星全ての人類の天皇的なポジションだぞ、いいの!?といつも思う
なんで、ご両親もこんな旅の同行を許したんだか。
しかも、めんどくさいのが、
「兄さん。ここから先は村とかしばらく通らないしさ―」
「イオリ君、別に先を急ぐ理由もありません、仕事も終えていますし―」
「「戦闘訓練しようぜ(しましょう)!!」」
「嫌だ」
「まぁまぁ、兄さん、そんなこと言わずにさ」
「そうだよー、今日こそ勝ちたいのです」
弟と姫様がやる気満々で、少しめんどくさい。
「あー、この魔導書読み終わったらな」
「「(...この人絶対、やらないな)」」じとっ
何でそんな目で見られなきゃ行けないんだよ。
こういった知識は、持っておいて損は無いってのに。
さて、セルさんから貰った本、どんな内容何だろう、とウキウキしていると、
「(何か兄さんが、俺らが睨んでんのに嬉しそうだぞ!?)」
「(やっぱり、イオリ君はMなんじゃ...)」
「聞こえてんぞてめぇら!?あと、やっぱりって何だよ!泣くぞ!?」
とんだ風評被害にあった。
「「すいませんでしたー!!」」
2人を叱りながら、(天皇クラスの人叱ってるけど、打首獄門とかなんないよね?)
ふと、過去を思い返す。
ネットに入り浸り、面倒臭いと思って、誰とも繋がりを持たなかった自分
Mとか何とか言われながら友達と、ワイワイやってる自分。
ああ、そうか。
こんな目に遭わせてくれるあたり、この神様も意地が悪い。
だって、前世で下げて、来世で上げるんだもの。
「はいはい、分かったよ。さぁ、戦闘開始と行こうか」