第10話 着任、アルクロン共和国
~天界-イオリたちの戦いが一段落した頃~
「…お前、何を考えている」
神と称される者たち、その1柱である〈武神〉は、現在、
いつも飄々として掴み所がない1柱、深謀遠慮の元(もと)〈永久見の策士〉に、問いただしていた。
「何かなぁ、特に何もやってないはずだけど」
「…あの青年に受け継がせた〈提督〉…お前、本来の権能を殆ど封じて受け継がせたな」
「あらら、気づいちゃったの?!」
あちゃー、と天を仰ぐオーバーリアクションをとる元〈永久見の策士〉に今度は抑えきれない怒気を込めて、威圧しながら告げる。
「今すぐ、本来与えるはずだった権能を〈提督〉に与えろ」
「…何故だい?」
返ってきた答えは、〈武神〉でさえゾッとする程、平坦な声で、圧倒的な圧を放っていた。
「な、何故って、お前っ、転生者は俺らがスキルを与えるから、対価としてその世界の住人より、
基本スペックが低くされているんだぞ!あんな欠陥スキルでは」
「大丈夫!僕は越えられる試練しか与えないからっ」
「なっ…」
絶句する〈武神〉に構わず、元〈永久見の策士〉は次の試練について候補を述べる。
「次はどうしようか、スキルを暴発させて身近な人が死ねば、上に立つものとしての孤独。
…もしくは、誰か身近の人々に裏切られれば、人を物として扱える非情を持つようになるかな…?」
そんな 、現〈狂気の戦略師〉を見て、〈武神〉は数万年間、誰にも見せなかった西洋剣の剣先を、
自身の敵と定めた者に向けた。
~そして、現在~
「あっ、イオリ君お帰...何故イオリ君にベッタリくっついているの、グラナート...?」
ニコッとした顔、しかし全く目が笑っていない姫様。
「フフッ、イオリはただ、わたくしの身を案じて寄り添ってくれているんですわ」
イオリはイオリで、新たな修羅場に巻き込まれていた。