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突然の訪問

こんにちは。

キミとの出逢いを開いて頂きありがとうございます。

こちら「突然の訪問」は投稿後すぐ編集を行いましたので最初読まれた方はお手数ですが再度編集後の続偏を読んで頂けたら光栄です。


7000字近いページとなりましたが気長にお付きあい頂けたらと思っております。



――カチャカチャ

 


 「ただいまー。」


 帰ってきてからまず向かった先は、キッチンとリビングをすり抜けうさちゃんのお家を設置するお部屋。


――ペタペタペタッ

カラカラ

ドサーッ


 「ふぅー。一回で全部持ってくるには流石に重すぎたな」


 ここは普段ほとんど使っていない部屋。床にカーペットを敷き、本棚がある程度のシンプルな場所である。

 クローゼットには、床にすのこを敷き来客用の布団一式置いてあるくらい。自分の洋服は、寝室のクローゼットにあるためここは空っぽの状態である。


 ここをうさちゃんの専用部屋にするつもり。物がほとんど無い為、常に解放していても問題なく運動するには十分なスペースだと思う。

  とりあえず、材料だけこの部屋に置いて食材をキッチンに持っていく。


 食材をとりあえずリビングのテーブルに置き、洗面台へ向かった。手洗い、うがいをして消毒スプレーをする。

 出掛け先から帰ってきたら必ずする、日課の1つである。


 キッチンに戻り食材を冷蔵庫と常温ストックカゴに移した。


 そして、ただいまの挨拶をようやく告げられる。リビングの壁に沿うように置いてある水槽で優雅に泳ぐ可愛らしい私の同居人へ。


 「プクプクー、お留守番ありがとうね」


 そう、プクプクに声をかけると帰ってきて早々スルーして隣の部屋に行った事を怒っているようでプクーと膨らんでしまった。


 「あー!!プクプクだめー!ごめん、謝るから戻ってー」


 フグはよく膨らむイメージがあるが、実際膨らむには負担をすごくかけてしまう。

 膨らむのは、一瞬で胃に沢山の水を溜め込むからで、その水を吐き出し元の体に戻るには個体にもよるが1時間かかったりする。

 それに歳を重ねれば負担は大きくなるため今のプクプクにはあまり良くない。

 今回は水量も少なかった為、すぐに戻ってくれた。


 「ごめんね、プクプク。新しく迎えたい子がいてね、その子のお家を作ろうと思って材料買ってきたの」


 そう話しかけると

『へぇー、そうなんだー。どの子ー?』と言うように上下にパタパタ泳ぎ始めた。


 「今日はまだ来てないよ。でも、写真はちょっと撮らせて頂いたんだー」


 リュックからスマホを取り出しプクプクにうさちゃんの写真を見せた。手続きの時、建物内や人を避けるために撮っておいた、持ち込み用の写真だった。ハコの隅に身体を丸くし、

"あっちむいてほい"をしている姿だった。

 プクプクが水槽の硝子越しに画面を見て水槽内を円を描くように泳ぎ始めた。プクプクがこの行動をするのは機嫌が良いときやこちらの意見を受け入れてくれているとき。


 「ありがとう、プクプク。うさちゃん迎えられる日が楽しみだね」


 プクプクも元気になったところで、キッチンへ向かい料理開始。遅めの昼食、カルボナーラを堪能した。

 リビングのソファーに腰掛け少し休憩。流石に半日で色んな事が起こりすぎた。


 <あー、自分でもびっくりするー。いくらなんでも出会ったその日に私が迎え入れるなんて。岩谷さんもびっくりしただろうなー>


 そんなことを考えていたら眠気が襲ってきて少しだけ寝入ってしまった。


――<…!!>

 <今何時だ!?>


 テーブルに置いておいたスマホで確認した。

 『15:32』


 <はぁー。30分くらい寝ちゃったか>


 んーと、背伸びをして立ち上がりキッチンへ向かった。コップ一杯のお茶を飲み干し、気合いを入れた。


 「よし、うさちゃんのお家作り開始!」


 木材はホームセンターで自分の好みにカットして貰っていた為、家ですることは材料を組み合わせること。

 うさちゃんも歯が伸びる動物で木も良く囓るため釘はあまり使用したくない。なので極力『継ぎ手』という手法を使う。


 大工一家に生まれた私は小さい頃から沢山の木と触れあってきた。小学校低学年の頃は『大工や鳶職人になる』と言っていたほどだ。高所で作業する大人の人を見ると凄く格好良く見え、憧れもあったからだ。

 その為、図工が大好きで夏休みの自由工作は色んな物を作った。設計と言う言葉を聞くと胸が高鳴ったりもしたりする。


 今でも作ることは好きでプクプクの水槽やテレビの台は自家製である。

 お店に行って既製品を探したもののやはり自分で作る方が使い勝手が良かったり、何より愛着がわく。


 バルコニーに木材を持っていき作業を行う。床掃除を軽減するためビニールシートを敷いておいた。

 まず本体となる部分を作る。長方形のハコを作り、天井は半分取り付けもう半分はそのまま。

 メッシュワイヤーを口の形になった木の真ん中に置き開閉出来るように固定して本体に合わせる。

 そして他部分もパタパタと組合せ頭の中で設計した形となった。

 なんとか完成させて一作業を終わらせた。


 「ふぅ。何とかできた」


 ひとまず、木屑等を払ってお家を部屋の中に持っていく。

 部屋の片隅にお家を寄せて一先ず、バルコニーの片付けを行った。1つの袋にまとめてバルコニーの端に置いておき、今度のごみの日に出すつもりだ。


 ビニールエプロンを脱ぎ取り、部屋へ戻る。


 ホームセンターの袋からフローリングマットとタイルカーペットを取り出した。途中で見つけこれは便利アイテムだと思い、何セットずつか購入してきた。


 うさちゃんが跳び跳ねたりしたとき着地する際のクッション材だ。

 壁側周囲にはタイルカーペットを敷き中央にフローリングマットを敷く。フローリングマットの方がクッション性が高いからだ。

 そして、色を分けて壁側に寄らないようにしつけをつけるつもりだ。窓は勿論硝子の為、危ないこととクローゼットや壁を引っ掻いたりマーキング(自分の尿で縄張りを示すこと)をしないように促す為である。

 

 敷き終わったマットの上に、お家を置く。

 設定場所は扉の正面奥の壁側、マットの一枚前。

 要するにフローリングマットの上。


 これでうさちゃんのお部屋が完成した。


 スマホで時間を確認する

 『17:36』


 2時間くらいの作業だった。

 

 言い忘れていたが、私の家には時計と言うものがない。時計があると見たくもないのに時計の針に目が行ってしまい、常に時間に縛られているようで何だか窮屈なものがあるから。

 時間は自分が気になるときに見れれば言いと思う性格の為、大半スマホで確認する。


 完成を喜びスマホでパシャリと記念撮影。

 まだ、主役のうさちゃんはいませんが…


 一段落着いたところで、ココアを一杯堪能していたときである。


 『ピロロロンッ、ブーッブーッ』

 と着信がなった。


 <あれ?電話だ。誰だ?>


 見ると、『岩谷さん』と表記されていた。

 すぐに電話をとる。


 <うさちゃんに何かあったのだろうか>


 「はい、まり…」

 「あ!茉莉亜ちゃん。出てくれて良かった」

 「岩谷さん、どうかしたんですか。うさちゃんに何か…」

 「今ね、お店にうさちゃんの飼い主が来られてるんだけど出てこれるかな?」

 「飼い主さんが!?」


 電話を切ってすぐにお店に向かった。


 19:00閉店の為お客さんは数名だった。

 瑠花ちゃんに代わり、永富くんが入ってレジの接客をしていた。


 そんな永富くんにペコりと会釈すると、こちらに気付いて咲梨ちゃんを呼んでくれた。


 「茉莉亜ちゃん。ごめんね、わざわざ来てもらって。作業中だったんでしょ?」

 「ううん。全然。作業は終わって一段落ついてたとこだったんだよー」

 「早っ!てか、そっちの方がよっぽど悪いじゃん。折角、ゆっくりしてた時に店長から電話なんてー」

 「いやいや。そんなことないって。それより、飼い主さんて…」

 「あ、そうそう」


 そう言いながら、咲梨ちゃんが手招きをして寄ってきたので耳を寄せた。


 「何かね、結構複雑というか…」


 咲梨ちゃんの話によると、

 飼い主さんは女性で最初パパさんの奥さんとなったうさちゃんをショップで見て連れて帰ったそう。とても馴ついて良い子だったのをみた、彼女の彼氏さんが1羽じゃ可哀想だからとパパさんを連れて来たんだとか。



 まず、うさぎが独りだと悲しくて…なんて聞くけれどあれは違うと思う。うさぎはうさぎ同士だと反って縄張り争いが激しい。女の子は特にである。飼い主に馴ついて寂しがったりする面も出てきたりするがそれとはまた別の話だ。



 話を戻すと


 パパさんがママさんの異性とは気付かず、ずっと一緒にしていたそうで一緒に過ごし始めて半年程たった頃にママさんの様子がおかしくなったとのこと。 

 周りにある布やティッシュなどを自分のケージに入れ始めて終いには自分の毛をむしりとっていたそうで。

 それを見た2人は寒いのか、何かの病気なのかと思いながらも食欲もあるため様子を見ることにしたそうです。

 その一週もしない内にケージから出て来ないママさんの下を見るとピンク色のものがピクピク動いていることに気付いて慌てて取りだそうとした彼氏さん、パパさんがそれに気付いて彼氏さんの手を噛んだことで事態は大きくなり、ママさんだけは残して2羽を放すことにしたと。

 でも流石に生まれたばかりでは、あまりにも可哀想だからショップで見かける大きさになるまで待ち、ここにお店があることを知っていた為どうにか助けてくれることを願い岩谷さんたちのいない隙を見計らって置いて行ったと言うのが経緯。


 2羽のことは忘れろと言われたものの、ちゃんと見つかったのか心配でゆらりと見に来た所、岩谷さんと鉢合わせし事の経緯を話すことにしたと言うものであった。


 あまりにも現実的に辛い事実を聞かされ、私は愕然とした。うさぎが可愛い動物なのは違いないがそのせいでこういったトラブルが起きている。

可愛いからとどんどん家に迎えて良いという理由にはならない。その1羽1羽を思い入れる気持ちが大切だと思う。

 今回もまた、知識が不十分のまま共に生活をしてしまったのが問題だと思う。

 うさぎが妊娠できるようになるのは個体にもよるが、生後6ヶ月程から。早くて、3ヶ月で妊娠するうさぎもいるが母子共にリスクが高まる為、半年過ぎ1年以内程度が初産の理想とされている。

 2羽を共にし半年程度過ぎた頃となると丁度ベストな頃だったとなる。

 しかし、妊娠に気付かず食欲が増加しているママさんにいつも通りの量でご飯をあげていたとしたらママさんとお腹にいた白ちゃん、そしてもしかすると他にも兄弟がいたかもしれないその皆に負担がかかったはずだ。

 無事に生まれてくれた白ちゃんそしてここまで立派に育ててくれたママさんそして、彼氏さんから2羽を守ったパパさんに感謝するべきと思った。

 きっと、赤ちゃんに人の匂いがついていればママさんは育てることを止めていたはずだから。


 一通り咲梨ちゃんから話を聞いて、飼い主さんと岩谷さんのいる奥の方へ向かった。



――コンコンッ


 「失礼します」

 「茉莉亜ちゃん」

 

 扉を背にして座っていた岩谷さんがこちらを振り向き、席をたった。


 「こんばんは。初めまして、沢原茉莉亜と申します」


 こちらを向いて座る女性に挨拶をした。私と変わらないくらいの年齢だろうか。目を真っ赤にして、出されたコップを両手で強く握り締めていた。


 「あ、えっと…」

 「茉莉亜さんは、今朝一緒にうさちゃんを見つけて手続きに同行してくれて、パパさん…グレーの子を引き取りたいと申した方です」

 「そうだったんですね。星村紗由莉と言います。この度はご迷惑をおかけして申し訳ないです」

 「いえ、お話は従業員の方から一通り聞いてきました。それで1つお伺いしたいのですが」

 「何でしょうか」

 「うさちゃんについての本を買われたことはありますか?借りられたでも構いません」

 「本…」

 「沢原さんが言う本というのは、飼育の本ですよ」

 「あ…いえ。借りたことも買ったことも」

 「そうですか。どうして手にされなかったんですか?」

 「以前、ワンちゃんを飼っていたことがあって動物を飼うことが初めてという訳ではなかったからですかね」

 「すみません、一言言わせていただいてよろしいですか?」

 「はい」

 「うさぎと犬は違う生き物です。見た目も違えば飼育内容も違います。たった1冊手に取っていれば、この様な事態も回避出来たかもしれません。今回一番被害にあっているのは3羽のうさぎであって私たちでも貴方たちでもありません」

 「すみません…」

 「大丈夫ですよ。全て星村さんが悪いという訳ではありません。世間的トラブルは増えているのが現状なのです。

 茉莉亜さんは、そういったトラブルを少しでも減らせるように人と動物が心から触れ合えてからお家へ送り届けられるお店を開ける様に日々努力されている方なのです。

 なので、今回の件は彼女も凄く傷付いていますしだからこそパパさんを引き取る決意が強いのだと思いここにお呼びしたのです」

 「すみません、むきになってしまって…」

 「いえ、こちらが悪いのに。ですが、ポポちゃんの新しい飼い主さんがこんなに優しい方と知れてよかったです」

 「え?」

 「星村さん、茉莉亜ちゃんにパパ…ポポちゃんの里親になってほしいそうだよ」

 「いいのですか?」

 「はい。店長さんから事前にお話を聞いて感心したんです。環境が整うまではここで預かって欲しいと言われたとか。全然私何かとは違うなって。売れちゃう前にとか思ってすぐ連れて帰ってお世話なんて全然分かんないのに知ってるようにしてこの子まで迎えて結局手放すなんて…考えれば最初のルルも売約のようなことも出来たんですよね…だから、この子にはこれからいっぱい幸せになってほしいんです。それには、茉莉亜さんが必要だと思うのでお願いします!」


 そういって彼女は腰をあげ精一杯頭をさげた。


 「ポポちゃんのこと幸せにします。こちらこそよろしくお願いします」


 「「「グズッ、うぅっ…」」」

 <んん?>


 横と後ろを見てみると…

 鼻をかみ興奮で眼鏡が真っ白になった岩谷さんとドアから顔を覗かせ涙ぐむ咲梨ちゃんと永富くんがいた。


 「なんでもう、このお店には涙腺が弱い人ばかりなんですかー」

 「それは、涙腺が弱い店長が従業員選んでるからですよー」

 「類は友を呼ぶというじゃないですか」


 なんて答えが返ってきて呆れている所をふと目の合った星村さんに笑われてしまった。



 「それでは、これで失礼します。閉店過ぎまですみません」 

 「構いませんよ。お話できてよかったです。また、いつでもいらしてください」

 「「白ちゃんが待ってるよー!」」


 と咲梨ちゃんが白ちゃんを抱っこして永富くんというと


 「また会いに来ます。茉莉亜さん、改めてお願いします。それと…」

 「はい。どうかされました?」

 「お友達になってもらえませんか?ルルちゃんの事とか相談したりできたらなんて…」

 「え?私!?」

 「ご迷惑でしょうか」

 「全然!いや全く!」

 「よかった!これ、私の連絡先です。」

 「ありがとうございます。ご連絡しますね」

 「はい。待ってます」


 そういって星村さんはお店を後にした。


 「ところで、茉莉亜ちゃんポポちゃんのお家出来てるとか?」


 岩谷さんに、そう言われ


 「一応…」


 と言いながら、スマホを出し見せると


 「「「いいじゃーん!」」」

 「これなら、全力で遊び放題だね」

 「てか、これお家というより丸々部屋じゃん」

 「流石、茉莉亜ちゃんだな…よし、今からポポちゃんのお引っ越し決定!」

 「はい!?」

 「これだけ環境が整ってるなら大丈夫!家も近いし明日明後日と日を延ばすより、今日連れて帰ってゆっくりさせたがこの子もきっと負担が少ないよ。折角ここに慣れてまたとなるよりさ」

 「まぁ…」


 「じゃ、飼育道具一式とポポちゃん。道具は俺たちで運ぶから茉莉亜ちゃんはポポちゃん連れてきてー」

 「ちょっと…」

 「いいじゃないですか。店長嬉しいんですよ。飼い主と話せたことと茉莉亜ちゃんが里親になれたこと」

 「俺が来たときソワソワしててトイレ我慢してるのかと思ったくらいですよ」

 「なにそれ」

 「「それくらい嬉しいってこと」」


 「明日も休みなんでしょ?みんなでゆっくりしときなね」

 「「おやすみなさーい」」 



――カチャカチャ


 パタパタッ


 「ただいまー。新入りのポポちゃん来たよー」


 と、うたた寝していたプクプクに話しかけると上下に泳ぎ出した


 「ポポちゃん今日は疲れてるからまた後でね」


 残念そうにするプクプクをよそにポポを部屋へ連れていった。



 これから、ポポとプクプク3人の暮らしが始まる。

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