表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却花葬  作者: 涙紫月
7/26

7.裏山へ

ノートに書いたときは結構書いたな、と思ったんですが投稿してみると少なくてすぐ完結しそうなので、どうでも良い話をねじ込むかもしれません。<(_ _٥)>

塗色は裏山を登っていた。

頭に思い浮かぶ、記憶に顔を歪めながら。

「チッ、結構広いな」

家を出てから40分以上経っている。

小さい裏山とはいえ、全体を見て回るには時間がかかりそうだ。

飛彗が帰ってくるまで、まだ時間がある。

もっと進もうと、塗色は足を早めた。


さらに10分。

同じような景色にあきながらも道無き道を歩いている塗色は、ふと足を止めた。

どこからか、子供の泣き声が聞こえる。

「こんなところに…、誰が…」

独りつぶやきながら、けもの道を進んだ。

草をかき分けながら進んでいると、拓けた場所に出た。

壊れかけのお堂がある。

そのすぐそばで、黒髪を真っ直ぐに伸ばした、着物姿の小さい女の子が泣いている。

塗色は、少し躊躇いながらも女の子に近づいていった。

髪に留めてある赤いリボンと、着物の薄桃色に自然と目がいく。

「どうしたの?…名前は?」

女の子のすぐそばにしゃがみ込んだ塗色は、優しい口調で話しかける。

「うぅ。うぇーん」

だが、女の子は一向に泣き止む様子がない。

「え、えっと…、どうすれば…」

子供との接点がほとんど無い塗色は戸惑ってしまう。

しかし、まだ嗚咽が収まらない様子で女の子の方が話し出した。

「…っ迷子になったの…。うぅ、はやく帰りたい…。怖いよぉ…」

もっと泣き出しそうな雰囲気に、塗色はさらに戸惑ってしまう。

「だ、大丈夫だよ。だから、ほら、ね?泣き止んで…」

女の子はまた話し出した。まだ泣いている。

「…まちがって、お花にさわっちゃったらあぶないの…。忘れちゃう、から…。お兄ちゃんも、はやく帰らないときっと見つけちゃう」

え。

塗色は声すら出なかった。

(それって、まさか…)

忘却花葬のことなんじゃないか、塗色はそう思った。

風の音も鳥のさえずりも女の子が泣く声も、塗色には聞こえなかった。

時が止まった、気がした。

(忘れさせる、花。忘却花葬は、全ての記憶を消す花なんだろうか…。そんなのはダメだ。俺が忘れたいのは…)

黙った塗色に、女の子は話しかける。

「どうしたの、お兄ちゃん。お兄ちゃんも迷子なの?」

「…っ」

違う、俺は大丈夫だ。迷子なんかじゃない。

そう言おうとしたのに、声が出ない。

完全に泣き止んだ女の子が顔を上げ、大きな瞳で塗色を覗き込んだ。

「お兄ちゃん。どうしてそんなに怯えた顔をしているの?」

ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ