3/26
3.俺は
「ふう〜。おなかいっぱい」
お腹を押さえながら、塗色は畳の上に寝転がった。
「たくさん食べましたね」
飛彗はお茶を飲みながら、塗色を嬉しそうにながめている。
「すげー、美味しかった。ごちそうさまでした」
起き上がってお茶を飲む。
「それは良かったです。片付けはやりますから、ゆっくりくつろいでください」
「うん、ありがとう。…ちょっと部屋行ってくるね」
そう言って立ち上がった塗色に、飛彗は声を掛ける。
「あの部屋はもう、あなたの部屋ですからね。自由に使ってください」
「うん」
塗色は、戸を開けて肌寒い廊下に出る。
一人になった飛彗は、塗色が出て行った場所を長い間ながめていた。
塗色は6畳ある和室に入って電気を付けた。
ここは飛彗の夫が、年老いてからよく過ごしていた部屋らしい。
塗色は、届いた荷物から1冊のノートを取り出した。そのノートは、何も書いていない表紙でシンプルなものだ。
腰を下ろし、机の上でノートを開く。
塗色はペンを取り、こう書いた。
《忘却花葬 場所》
そして、
《死》
と。