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忘却花葬  作者: 涙紫月
25/26

25.今

もうすぐ完結です。

いつも読んでくださってる方、本当にありがとうございます!

「忘れても、いいんです。亡くなった人を忘れるのは、仕方のないことだと思うんですよ、私は。だって人間ですよ。いろいろな人と出会っていく。その一人一人を覚えていられますか?無理だと思います。でもそれは、決して情がないわけではありません。自然な現象だと思うんです。

生きている、『今』に出会った人だけ覚えていればいいんです。何より大切なのは、過去でも未来でもなく、『今』ですからね」

塗色は、顔を上げて飛彗を見る。

「…だけど、俺はっ…」

「生きなさい、塗色。お母さんが死んだときのことを覚えていたければ、そのままでいい。忘れそうになったのなら、忘れてしまえばいい。

お母さんも、自分のことを楽しい記憶で塗り替えてくれるなら、喜ぶはずです。

生きていれば、いつか幸せなことがある。信じるだけでも良いのです」

俯いていた飛彗は、顔を上げ、塗色を見つめる。

ふわり、といつものように微笑んだ。

「大丈夫。きっと大丈夫」



戻って来たような気がした。母さんがここにいるような。

午後の日の暖かさが戻って来た。

暖かい。

温かい。

生きていく心地が、血の流れを感じることができる。



「…うん。俺、ちゃんと生きるよ。母さんの分まで生きて、斗庵(とあん)を俺が支える」

塗色も微笑む。

それにつられて、飛彗の微笑みも深くなる。

「生きていれば、いつか幸せなことがある。信じるだけでも良い。…あなたのお母さんがよく言っていた言葉です。覚えていますか?」

「覚えてるよ…。一生忘れない。一つ一つが、大切な思い出だからね」

塗色の言葉を聞いた飛彗は、目を見開く。

「…初めて、『思い出』という言葉を使ったんじゃないですか?」

「え…?そうかもしれない…」

塗色は記憶を探るが、覚えがなく驚いている。

そんな様子を見て、飛彗は笑っている。

「そう。記憶とは、思い出なのです。あなたはいつも、記憶、記憶、と言ってどこか他人行儀なようでした」

「…」

「…ちゃんと思い出と思えるようになったのなら…、塗色。あなたはもう、大丈夫ですね」

また、いつものように微笑む。

そして、そのまま倒れた。

「ばあちゃん!!」

安心したら、眠くなってしまったのですよ。

塗色はどこからか、そんな声を聞いた気がした。

読んでくださった方、ありがとうございます(*´˘`*)♡


次回、完結予定です!短いです、多分。

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