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忘却花葬  作者: 涙紫月
21/26

21.俺の話

塗色視点の話です。

完結が近づいてきた…(>_<;)

俺はごく普通の家庭に生まれた。

初めての、自分達の子供。

愛情いっぱいに育ててくれた。

物心がついたときに、俺は自分のある才能に気づいた。

才能、とはいえないのかもしれない。

もしかしたら…、

呪い。

たとえば、母さんと目を合わせると、大好きな弟が目の前で死んだときの情景が俺の頭の中に流れてくる。

他の人からは大切な家族、ペットが死んだ時のこと。死にたくなるほど辛かったこと、そんなことが見えてくる。

忘却花葬は、記憶を喰らう花。

俺のじいちゃん、総次郎は忘却花葬によって記憶を消された者。能力者。

俺の母さんは、普通の人間。

俺は、忘却花葬の能力(ちから)の一部のようなものを少し受け継いでしまっていたようだ。

別に困ったことは無い。

一瞬見えて、すぐに消える。

ただ、それだけ。

俺は、母さんが死んでしまったとき責任を感じた。

最初は、俺が殺したわけではないと考えるようにはしていたけど。

俺には弟がいる。

仲が悪かったわけではない。

でも、ほとんど話すことはなかった。

合わないのだろう。

全てが。

俺だけと話さなかったわけではない。

母さんとも話しているところも、ほとんど見たことがなかった。

父さんとは、普通に会話をしていた気がする。

一度、あいつは俺に言ったことがある。

『あんなクソ女から産まれてきたなんて、考えただけでも吐き気がするね。なぁ、兄さん?』

母さんの何が嫌なのか。俺にはわからない。

顔立ちもよく、俺と同じくらい頭もよかった。

外では、仮面を被った紳士。

家では、嘲笑以外をしない悪魔。

母さんが死んだ時、あいつは言った。

『…ホント死んでくれて嬉しいよ。…兄さんが殺してくれたんだね…』

最後は、呟くように。

だけど、そう言ったあいつが顔を上げ俺と目が合った瞬間見えたのは。

母さんが病院で息を引き取った時のことだった。

そのとき俺は、ものすごい後悔に襲われた。

あぁ、こいつも。

こいつにとっても、ちゃんとした「母親」だったんだ。

誰にも気を許せない、仮面が本当になってしまった弟の、唯一を奪ってしまった。

胸が苦しい。

涙が出そうで、出なかった。

泣いてどうする?母さんは戻って来ない。

俺は殺人を犯したことにはなっていない。

それでも俺は、自分のことを人殺しと思うようにした。

母さんの命を奪った。

周囲の人を悲しませた。

弟の心の一部を殺した。

死んでも償えきれない。

だけど、

生きていても償えない。

読んでくださった方、ありがとうございます!!

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