19.私の話
久しぶり(?)の更新です!
課題があるので、遅くなりました…(^^;;
次回も少し遅いかもです。(まだ終わってないので)
ここで飛彗は、話をやめた。流れてしまった涙を、拭くことはなく。
塗色は、固まったまま動くことができなかった。
ただ考えられたのは。
(じいちゃんは昔の記憶がないんだ…。飛彗ばあちゃんを庇ったせいで)
そのことが頭の中で、ぐるぐると回り続ける。
「総次郎さんを連れて、私は山を下りました。知らない場所、知らない人。自分が誰かもわからない。不安だったでしょう。総次郎さんの家族は、泣いていました。…私は、総次郎さんもその家族も傷つけ、人生を狂わしてしまった」
飛彗は吐き出すように言った。
塗色はじっと、黙ったままだ。
「私はその日から、総次郎さんのそばにいるようになりました。私が総次郎さんの全てを奪ってしまった。その罪滅ぼしになるのかはわかりませんが、私が、新しい記憶を良いものにしたいと思ったからです」
飛彗は、一息ついてまた話し始める。
「私達は、大人になって当然のように結婚しました。総次郎さんの記憶には、私しかいないのですから、当たり前ともいえますね。総次郎さんの家族は、言っても何もわからない総次郎さんを、途中で諦めていたんです。私は…、相手にされなくても諦めなかった。…いいえ、諦めるなんてことをしてはいけなかった」
飛彗は、今まで伏せていた目を上げ、塗色を真っ直ぐ見つめる。
その瞳からは、強さを感じることができる。
だが、次の瞬間にはもう、その瞳は揺れていた。
「ねぇ、塗色。あなたは何をしようとしているの?私は、不安でたまらない。死のうなんて思わないで。記憶を消そうなんて考えないで。お願い…」
感情的になる飛彗を、塗色はただ見つめている。
「飛彗ばあちゃん。忘却花葬に会ったら、絶対に全ての記憶を消されるわけではないんだよね?」
塗色がやっと口を開いたと思えば、それは今、あまり関係のないように思えること。
「ええ…。運が悪かったり忘却花葬に変な刺激を与えなければ、全てではないと思いますが…。未知の花なので、それすらも正しいかわかりません」
悩みながら答える飛彗。
そして、その返答を聞いて少し微笑んでいる塗色。
「そっか。…それなら良かった」
「え?」
塗色の言葉の最後は小さく、飛彗には聞こえなかったようだ。
2人の間に沈黙が流れる。
「塗色?」
口を開いたのは、やはり飛彗。
だが、
「…」
塗色は答えない。
少しして、塗色が立ち上がった。
「もう…、寝るよ。また明日、おやすみ」
そう言って、飛彗に目を向けることなく、塗色は部屋をあとにした。
読んでくださった方、ありがとうございます!!




