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忘却花葬  作者: 涙紫月
18/26

18.全てを忘れる

飛彗視点の過去話。

次回からは飛彗視点ではないですが、少し過去の話が続きます。

赤い、(あか)い光が、目に焼き付いています。

自分は、両親のことを忘れ、私が知らない世界になってしまう。

忘れられる方も、忘れる方も辛いのです。

あの紅い光に包まれて、私はそれを理解しました。

ツルに巻き付かれ、私の足は宙に浮きました。

誰かを呼ぶことすらできなかった。

そんな時、です。

足音が聞こえてきました。

宙に浮いたまま動けず、目だけを音のした方に向けました。

草をかき分け、出てきたのは。

総次郎さんだったんです。

私を見て、こちらに走ってきました。

来ちゃダメなのに、危ないから来ないで。

そう思ったのに声が出ませんでした。

口の中でだけ、呟いたと思います。

走り出した総次郎さんは、花の前で立ち止まりました。

そして花に手をかざし、何か、光が放たれたような気がしました。

すると、私に巻きついていたツルは離れていったんです。

しかしそのツルは…。

…ごめんなさい。大丈夫ですよ、塗色。

…そのツルは、総次郎さんの方に伸びていったんです。

ツルは総次郎さんに巻き付き、花から赤い光が強く放たれました。

眩しくて、私は目を瞑ってしまったようです。

少し経って目を開けると、花は消えていて、私と総次郎さんの2人になっていました。

地面に手を付き、うずくまっているままの総次郎さんに私は近づきました。

大丈夫?という、心配の声と、お礼も伝えたと思います。

総次郎さんは顔を上げました。

私と合わせた目は、酷くうつろ。

誰だ?

そう聞かれました。

私とあまり、話したことがないから覚えていないのかと思いました。

でも総次郎さんは、一度遊んだことがある子のことは忘れないような人です。

わからないの?

と、私は聞き返しました。

総次郎さんは答えませんでした。

少し周りを見渡して、小さな声で

ここはどこだ

と呟いているんです。

その時の衝撃を、私は今でも忘れることができません。

あぁ、この人は。

何もかも忘れてしまったんだ。

読んでくださった方、ありがとうございます!!!


次回も短くなるかもです。

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