14.忘却花葬
わかりにくい表現、たくさんあるかもしれません。m(_ _)m
着替えた塗色は、飛彗に声をかけずに家から出て行った。
飛彗は気づかない。
少しふらふらしながらも、しっかりとした足取りで塗色は歩いていく。
今日の空は暗い。
いつもはギラギラ眩しい太陽が、分厚い雲で隠されている。
塗色の視界が少しぼやける。
涙が頬をつたって流れていく。
理由なんて分からずに、涙が溢れて止まらない。
昨日も登った裏山を、塗色はまた登り始める。
目的の場所など無いはずなのにあるかのように、迷いのない足取り。
誘われる。
何に。
花に。
そう。花に呼ばれている。
さぁ食事の時間だ。そんな声が聞こえたような気がした。
雨が降り出しそうで降らない、暗い空の下。
塗色は歩き続けている。
そして、着いた。
普通の山の傾斜。
だが、そこには異様なものが一つ。
他の草木に紛れることなく、赤く、光り輝いている。
見た目は彼岸花に似ているだろうか。
だがそれよりも大きく、明らかに異常。
人間の本能が危険を告げるような、
赤。
塗色の視界も赤く染められ、花が占め始める。
怖い。
恐怖を感じるようなものなのに、きっと人は、これを美しいというのだろう。
「これが…」
忘却花葬。正しくは、忘却花葬と呼ばれるもの。
忘却花葬とは、勝手に人が名付けたものだ。
花が少し動く。
瞬間、赤い光が塗色を包み込む。
「うっ…!?」
ツルが体に巻きついてくる。
今までの全ての記憶が、頭の中に蘇ってくる。
それはまるで、走馬灯のよう。
赤い光に包まれて。記憶が、広がる。
息が苦しい。
水中にいるような、そんな感覚。
そして、一番脳裏に焼き付いてきたのは。
『ちょっと!』
声が、
『待ちなさい』
聞こえる。
大好きな母が倒れる姿。
ツルが巻きついて離れない。
(…っ。それを喰らう気か!…ダメだ、やめろ。その記憶を消すな…!俺が消え去りたいのは…)
花が何故か、たじろぐような姿を見せた。
次の瞬間には、花が離れる。
ハァハァ、と息を吐き、膝をつく塗色。
そんな塗色のそばに歩み寄るものが一人。
塗色が顔を上げると、そこにいたのは坊さんのような格好をした、老人。
まさか。そんなはずはない。
塗色も知っているこの男は。
「じいちゃん…!!」
目を見開く塗色に、祖父・総次郎は微笑んだ。
読んでくださった方、ありがとうございます!!!




