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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
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それぞれの午後1

こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ11話を公開いたします。

まとめてしまうと少々ボリュームが大きくなってしまいますので1と2に分けました。


ごくっくりお楽しみください。

 それぞれの午後1



 ある晩のこと。

 街から遠く離れたのどかな村が焼き払われた。


 とある街道の片隅で、キャンプをしていた商隊キャラバンがモンスターの群れに襲われた。


 とある街の薄暗い路地の奥、酔っ払いの男が排水溝へ引きずり込まれ姿を消した。



 一見なんの脈絡のないような、些細な日常の一面である。



 夢を見ている。



 真っ白で、どこまでも真っ白で、或いは真っ平な平面なのか、ともかく白いというイメージしかもてない空間に、私の意識は浮かんでいた。


 既視感デジャヴを感じながら私は耳を澄ませている。


 やがて浮かび上がる白い光は語り出すのだ。



 最初はただのシミかと思った。

 もしかしたら自分の影が映っただけなのかもしれない。


 しかし星が傾くにつれ、シミもその位置を変えていった。


 長く長く月日がたったころ。

 シミのなかから這い出した何かが移動を始める。


 再び長い月日が過ぎた。

 シミは消えるどころか増えていた。


 世界の風に乗って、少しずつ、少しずつ、その勢力を拡大するように。



 それからまた長い月日が過ぎた。思ったより星が軽くなってしまっていることに気が付く。

 魂が思っている以上に戻ってきていた。

 私はあわてて輪廻の環の中に戻す量を増やしたのだ。

 すると今度はどうだろう?

 星は急に重くなりだした。


 私は気が付いた。

 シミは私が考え得なかった何者かだという事に。


 星の声に耳を傾ける。

 シミは異形の魔物のようだ。

 変質し、輪廻の環から零れ落ち、滓のようにどんどんと蓄積してしまう。



 声を届けよう。


 しばらくするととある村に強い光をまとった赤子が生まれた。


 赤子の成長を見守る。


 数十年の月日が経つと、光は世界を旅してめぐるようになった。

 シミに光が触れると、そのシミが消えていく。


 その世界で初めて勇者と呼ばれ、のちに勇者王と称えられた者がついに動き出したのだ。

 勇者は世界を旅して、その星を浄化していった。


 やがて大半のシミも消えたころ、私は安堵のため息をついていたものだ。


 それからまた数年が経ったころ、光が2つに増えた。

 光が増えた大陸からシミは消えたが、光はその大陸から動かなくなってしまった。



 今は遠い遠い昔の話だった。



 私は世界の平穏を願いつつ少し休むことにしたのだ。





 ◇ ◇ ◇



 午後になり寝室にも陽が差し込むようになる時間、訪問者によって私は目を覚ました。

 返事をして、身なりを整える。

 エリス達をロゼッタのところに送り出してからベッドにもぐりこんだのだ。

 ぼんやりする頭を振り払い、戸口に向かう。


 どうやらロゼッタのところの使用人らしい。

 早速注文を取ってくれたらしい。

 共に届けられた手紙に目を通すと、私はエリスとサラから預かっていた荷物と心づけを戸口の使用人に渡した。

 まだ小間使いの少年は表情を明るくして何度も頭を下げると、荷物を抱えて屋敷の方へ走り去っていく。

 あの様子ならば荷物の中を見るなんて不埒なことはしないだろう。


 早速ロゼッタの注文に取り掛かりたいところなのだけど、もうひと眠りしてからでないと途中で力尽きてしまいそうだ。


 美容に睡眠不足は一番の敵なのだ。


 水差しから水を一杯カップに注ぐと、それを持って再び寝室へと戻っていった。



 ◇ ◇ ◇



「もう一度お願いします」


 何度目だろうか?

 かれこれ一時間ほど休みなく訓練を続けている。

 訓練というには少々優しいものだが、まだあどけなさの残る目の前の少女にはなかなか辛いものがあるだろうに。


「いや、少し休憩にしよう」


「でも……」


 健気で真面目な少女は言い淀んで不安に顔を翳らす。


 私は彼女(ミリア)を手招きして並んで歩きながら説明した。


「いいかい? ただ数をこなすだけではダメだ。勿論繰り返した動作はそのうち自然と体が覚えるものだ。でもそれだけではあまりにも効率が悪い、なぜそのような動きになるのかを、きちんと考えるんだ」


「考えて、ですか」


「そうだ。例えば、右腕を掴まれたとする。その時に相手がどちらの手で掴んだかはわからないけれど、腕を伸ばして掴んでいる場合、相手の重心はその時崩れているんだ。ここで自分も腕を伸ばすと、力負けしてしまうけれど、自分の腕と体をくっつけるようにすれば、自分の重心は腕の体の近くに自然と集まるんだ。そうすると相手は急に重くなったと錯覚するのさ」


 説明しながらどうにも自分には人にものを教える才が無いように感じた。

 ミリアが話を理解できていないのはその顔をみれば一目瞭然だ。


 訓練は始まったばかりと言え、少し訓練の仕方を考える必要がありそうなのは明白だ。

 やれやれ、これはとんでもない安請け合いをしてしまったかもしれない。

 戻ってくる私たちに気が付き、笑顔で「お疲れ様」と声をかけてくれる銀髪の美少女(エリス)に癒されながら私は頭をフル回転させるのだった。



 ◇ ◇ ◇


 その日、昼食の下拵えをしていた私たちに届いた連絡は、お客様が二名数日の間ご滞在になるという内容だった。

 周囲の者をみると、みな目を輝かせ、中には声に出してまで気合を入れている者すらいた。


 しかしそれもわかるというもの。

 なにせ私たちの本分は料理をすることだ。

 グローリー家の厨房を任された我々五人のコックはここしばらく仕事に飢えていたのだ。


 ここ一月ほどの間、旦那様は領主様の命により、各地の調査へ赴いている。

 残るロゼッタ奥様とミリアお嬢様はどちらも食が細く、あまり多くの料理を召し上がられない。

 出来る限り工夫を凝らし、少量でも品数を揃え、様々な味の変化で少しでもしっかりと食べて頂けるように努力をしているつもりではあるが、思ったようにいかない。

 我々五人はそのことに悩んでいたのだ。


 グローリー家では 執事が一人、メイドが三人、料理人が五人、庭師が一人と、見習の小間使いが一人、合計十一人の使用人がともに住んでいるが、使用人の食事の用意はメイドたちの仕事なのだ。

 旦那様がご在宅なら時折開かれるパーティーで、存分に我らの力を発揮することもできるのだが、それでもパーティーが無ければ三人分の食事の用意だけである。

 早いとこもっと御子息やご息女がお生まれになれば賑やかな食事風景を支えることが出来るのだろうが、まだしばらくは変わりそうにない。


 そこに飛び込んできた二名の客人である。


「よし、私はもう一度食材の在庫をチェックする、誰か御客人の好みなどをメイドたちに聞くように伝えてくれ」


「わかった、では私がリーリカ殿にでも聞いてくることにする。その間に残りの者は今夜のコースを検討してくれ。コック長からの食材の検分が終わったら皆で検討したコースからメニューを作り上げるぞ!」


「では昼食の準備が終わり次第すぐに晩餐の準備だな!」


 厨房にこだまする歓喜の声。


 その夜、用意された夕食を前にした四人は、その品数に目を剥いたのだった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ11話をお読み頂いた皆様、ありがとうございます。

また新たにブックマークして頂いた方、以前からブックマークして頂いている方、励みになります。

ありがとうございます。


今回は短編集みたいな感じですね。

前話、前々話で一気に増えてしまった登場人物の件もあり、各人とその周囲の午後というものを書いてみることにしました。


それではまた 気が付けばエルフ12話でお会いしましょう。


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