表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
10/144

上層区

こんにちは。

味醂です。

お待たせいたしました第10話公開です。

第9話と合わせてお読みください。

 上層区



 ベロニカの洋品店で打ち合わせを終えたエリスとサラはその場でベロニカの用意した衣装に着替えると教会のゲートへと来ていた。

 エリスの持参した紹介状を確認すると傍らに控えていたメッセンジャーに指示を出し、少しの間待つように伝えると、待機室へと案内して持ち場に戻る。


 エリスのように許可証をもたないものが上層区に入るためには、原則紹介状が必要となる。

 勿論用もなく入るというのは無理で、訪問先に確認のためのメッセンジャーを派遣して、その家のものがその訪問を正規の訪問だということを認めれば、そこの従者が門まで迎えに上がるという事になる。



 30分ほど待たされただろうか?

 門番に呼ばれゲート前に再び戻ってくるとゲートの反対側に一人の女性が立っていた。


「初めまして、グローリー男爵家よりあなた方をお迎えに参りました。わたくしは同男爵家にお仕えさせていただいているリーリカと申します」


 恭しく頭を下げ、自己紹介をする彼女に倣って、こちらも自己紹介をする。


 ベロニカさんに教わった通りに――


「お迎え有難うございます。初めまして、私はエリス・ラスティ・ブルーノート。こちらの彼女はサラ。ベロニカ女史からの依頼でグローリー男爵夫人へお会いしに参りました」


 スカートの裾を軽くつまみ、やや伏目に会釈をすることも忘れない。


 途中門番さんがなにかぎょっとしたような気がしたけど、そこまで気にする余裕がない。

 うっかりしたらあっという間にボロがでそうなのだ。


「それでは通行を許可する」


 そういって門番さんが何か合図をすると、ギィギィガラガラと音を立てて門の内側の一部が開いた。

 なるほど、全部を上げ下げするよりは実用的よね。

 なんて考えながら門を通り抜ける。


「それでは私についてきてください」


 リーリカはそう言って歩き出す。

 速過ぎず、遅過ぎず、なんとも絶妙な速度で、流れるような足取りで歩く姿が美しい。


 初めて踏み入れる上層区は中層までの様相とは明らかに違っていた。

 塀が多く、道も綺麗に整備されており清潔に保たれていた。

 一番の特徴といえば生活臭が極めて少ない。

 静まり返る街。

 勿論時折馬車や通行人が行き来はしているのだが、喧噪といったものとは皆無だ。




 グローリー男爵家はゲートからそう遠くない位置にあった。

 メインストリートを少し行って、そこから左に一度曲がり、そのまましばらく行くと突き当りに門があった。


 既に門は開けられているのは来客を迎えるためだろうか?


 そのままリーリカについて屋敷へと入る。

 大きな扉を潜るとそこは素敵なホールだった。


「やだ、素敵……」


 赤紫の絨毯が敷き詰められたホールは吹き抜けになっており、正面奥には剣を自分の前に突き立てて、仁王立ちしている石像があった。それを囲むようにぐるりと階段が緩やかなカーブを描いて対に作られている。


「ねぇ、サラ、素敵なホールね」


「そうだな、貴族城館には何度か行ったことがあるけど、このホールはなかなかないレベルだ」


「うふふ、嬉しいことを言ってくれるわね」


 不意に声を掛けられた。


「ベロニカがどうしても見せたい娘だちが居るって言ってたけれど、本当に二人とも素敵なお嬢さん達だわ」


 私たちに声をかけてきたのは、ベロニカさんの幼馴染だという、グローリー男爵婦人であるロゼッタ婦人であった。


「あの、お初にお目にかかります、私エリス・ラスティ・ブルーノートと申します」


「お初にお目にかかります、あたしはサラといいます」



 慌てて自己紹介をするとロゼッタ婦人は微笑みながら


「そんなに畏まらないで頂戴。私も元はこの街の平民の出なのよ?それに今は主人も留守にしているの、もっと楽にして頂戴な」


 なんて、なんとも気さくに話してくれたのだった。


「それでは皆様こちらへどうぞ」


 リーリカさんが私たちを案内してくれる。


 通された部屋は真っ白いけれど、どこか温かみのある部屋だった。


「さあ、もっとこちらに来て、その素晴らしい姿を見せて頂戴」


 言われるままに歩み出て、会釈をする。

 歩いて見せる。

 たまに婦人からの指示(リクエスト)があり、その通りにこなしていく。


 ひとしきりしたところで、今度はサラの番だ。


「エリス様はこちらにどうぞ。お茶のご用意ができています」


「あ、おか……いえ、ありがとうございます、お茶頂きます」


 と一足先にソファーに失礼してお茶をいただきながらサラと婦人のやり取りを見る。


「エリスさんが可憐というならば、サラさん、あなたは美麗ね。服装が服装なら男装の麗人なんて言われて人気が出そうだわ」


 確かに言われてみればサラは塚系寄りだ。

 背が高く、美人で、それでいてハッキリとした芯の強さを感じる。

 冒険者としてやっているだけあり、体も引き締まっていて、それでいて出るところはしっかり出ている。

 今はドレスを着ているのだが、普段のボーイッシュな出で立ちでも華やかさが消えたことはない。

 こうして私からみても、本当に美人さんだと思うのだ。

 時代が時代であったら、その美貌とハッキリとよく通る声の持ち主であるサラは大女優になれていたかもしれないのだ。

 それくらいのカリスマを感じる。



 ひとしきり堪能していると二人がこちらに戻ってくる。


「お待たせしたわね、リーリカ?エリスさんにお茶のおかわりを。あとお菓子を持ってきて頂戴」


「かしこまりました、奥様」


 ほどなくしてテーブルの上は紅茶と色とりどりのお菓子が花を咲かせたのだった。



 ◇ ◇ ◇


 かくして始まったお茶会は途中から加わったロゼッタ婦人の娘のミリアお嬢様を交え楽しいものとなった。

 ひとしきり今回私たちの着てきたドレスの話や、私の身の上話をしたのちに婦人は一つのお願いをサラにしたのだった。


「この娘に少しでいいの、護身術の手ほどきをしてほしいのよ」


「奥様、お言葉ですが護身術とは諸刃の剣となります、却って危険を増やす場合もあるのです」


「えぇ、わかっているわ。でも、この娘は少し内気なところがあってね、こうして家の中では元気なのだけど、外にいるときはなかなか大きな声を出したりもできないようなの。だから一瞬でも助けを呼ぶだけの時間を稼げるようになってくれると、私たち夫婦としても安心なのだけど」


 少し考えていたサラは、何度か頷くと


「わかりました、そこまで判っておいでならば少しだけ手ほどきをいたしましょう。しかし今日一日でというわけにはいきませんが、どうしましょう?」


「それもそうね、それならば数日泊まっていらっしゃい。大丈夫、ベロニカには私の方から連絡をいれておくわ。同時にあなたが着ているタイプのドレスも注文することにしましょう。それでベロニカには十分意味が伝わるでしょうし、あなた達の荷物もこちらに届けるように言付けするわ」


「でれではそのように。ではミリアお嬢様、早速ですが時間が限られますので、まずは基礎からお教えいたしますが、大丈夫ですか?」



 ミリアは頷くと、サラの手をとって庭へと出て行ったのである。




「そうそう、エリスさんには少しお話があるの。よろしいかしら?」


「勿論です、奥様。どのようなお話でしょう?」


「そうね、いくつかあるのだけれど、良ければ一つ確認の為でもあるのだけれど、私にステータスを見せていただく事はできるかしら?勿論秘密は厳守すると誓うわ」


「いえ、そんな秘密だなんて」


「いいこと?エリスさん。ビジターのあなたにはまだピンと来ないかもしれないけれど、ステータスは安易に他人にみせてはダメよ?危険だわ」


「そう、なんですか。」


 私はそう答えるしかなかった。


 とりあえずステータスを見せると少しだけ婦人の表情が硬くなった気がした。


「そうね、エリスさん。貴女のステータスに刻まれている名前についての事なの」


「名前、ですか?」


「そう、名前。この世界では氏族名を持つ者は尊重されるの。平民では氏族名はなく、私のように後から得るのが普通なのだけれど、ステータスに最初から刻まれている名前は、たとえこの世界で貴族でなくても、尊いものなのよ?きっとあなたはいずれどこかの国から叙勲されることになる筈。同時にそれは他の貴族からの攻撃の的になるということでもあるの。だから、見方によっては弱みを掴まれるステータスは極力見せないほうがいいわ」


「それでしたらエリスとだけ名乗っておくほうが良いのではないですか?」

 と私が聞くと、


「とんでもない、特に番兵や貴族に名乗るときは、是非名乗るべきよ!」


「ベロニカさんにも似たようなことを言われたのですけれど……」


「そうね、ベロニカはあれで色々と機転が利くわ、でも、貴女のその顔だと理由が今一つわからない、そうよね?」


「はい」


 そうしてリーリカさんは私に元来からつけられている名前の尊さをまるで神の教えを説くかの如くに説明するのだった。


 名前についての力説がおわるともう一つ話というか頼まれごとをされた。


 エルフの本を翻訳してほしいとのことを。


 私がエルフ文字しか書けないというと、内容を教えてくれれば自分で書くという。

 一度本を取りに出て行った奥様は、1冊の重厚な本を手に戻ってきて私の前に置いた。


「この本なの。エルフが記した、エルフの伝記などについて書かれた本よ。どう?読めそうかしら?」


「では失礼しますね」


 そういって本を手に取る。


 本の冒頭には歌が書かれていた。

 世界樹に祈るエルフの歌だった。



こんにちは。

味醂です。


気が付けばエルフ 第10話をお読みいただきましてありがとうございます。

新たにブックマーク頂いた方々にも千の感謝を。


元々9話と10話で一つの話ですがおよそ7000字とボリュームが大きくなってしまいましたので分割させて頂きました。

話をまたいで前話冒頭へとつながるわけですが、いかがでしたでしょうか?


上層区に営業おしごとにきた二人ですが、成り行きで数日逗留することになります。

都合で名前の公開が後になりましたが

グローリー家に仕えるリーリカ

グローリー男爵夫人のロゼッタ

男爵夫婦の娘のミリア

と、ここにきて一気に人物が増えてしまいました。


上層区での数日の間に二人は一体何が起こるんでしょうか?


それでは次回は11話でお会いいたしましょう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ