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気が付けばエルフ  作者: 味醂
第一章 アッシュブラウンの冒険者
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プロローグ

初めまして味醂です。


久しぶりに小説が書きたくなって書き始めました。

投稿サイトでは初めての投稿となります。


どうせ新たに書くなら新しいジャンルへ手の伸ばそうと、異世界とそこに飛ばされた主人公の歩む道を書くことにしました。


【重要】

本作品には残酷表現、及び15歳未満の閲覧に相応しくないと思われる暴力表現・性表現が含まれます。

r15指定はあくまで自主規制であり、R18に分類される表現と度合いを超えない配慮をしておりますが、それらを確定するものでは御座いませんのでご注意願います。


【注意】

全編を通し、諸種の事情による改稿を行う事があります。

また編集環境の都合上、字下げ、段下げのインデントを行っておりません。ご容赦ください。

#2017-08-28追記:本編完結となりましたので現在順次誤字潰ししながら字下げ対応行っております。


それでは拙い文章ですが、楽しんでいただけたら光栄です。

#2017年6月8日 区切りマーク他誤字修正

#2017年6月25日 一次改稿版(字下げ無)に差し替え

#2020年7月22日 一部改稿

 プロローグ



 梅雨の終わりの晴れた日の

 いつもと変わることのない、なんてことのない日常的な風景が繰り広げられる昼休みの教室。

 その日も私は周囲の話声を子守歌にウトウトと惰眠をむさぼっていた。


 最近人気のゲームの話で盛り上がる男子たち。

 どこで売ってる小物やステーショナリーが可愛いだとか、そんな話題で盛り上がる女子のグループもいる。

 私も話に混ざることもあるけれど、先週一杯行われていたテストの為に削られた睡眠時間を今は少しでも取り戻すべく、こうして惰眠を貪るほうがよほど重要だ。


 とりわけ苦手な科目があるだとか、得意な科目があるわけでもないけれど、なんというか私は可もなく不可もなく「普通の女子高生」なのだ。



 そうして私はもうひと眠り、午後の授業が始まるまで惰眠を貪ろうと机に伏した……筈だった。




 昼休みの終わりを告げる予鈴ではなく、どこか遠くで聞こえる鐘の音で意識を取り戻した私は混乱の渦の中に叩き込まれることになった。




 だってそこは、教室の中なんかではなく、


 林の中だったのだから。



 慌てて飛び起きるとどうやら大きな樹に寄りかかって寝ていたようだ。

 人間あまりに驚くと独り言すら出ないようで、ただ唖然として周囲を見回すしかなかったのだけど。


 落ち着いて、まずは深呼吸。

 そう思い目を閉じて深く息を吸い、ゆっくりと吐き出す。

 繰り返しもう一度。


 よし、目をゆっくり開ける。


「……」


 そこは木漏れ日が差し込む比較的明るい林の中。

 意識を向ければそこかしこから小鳥の囀りが聞こる平和な風景のままだった。


 ありきたりだけど頬をつねってみる。

 ――とても痛い。


 どうしたものか?

 はっきり言って困惑を通り越して混乱の極みである。

 ともあれここで途方に暮れていても仕方ないので、私には何となく鐘の音が聞こえた方向に向かって歩き出すよりほかに選択肢は無いのだった。



 ◇ ◇ ◇



 海外旅行に行ったことはあるだろうか?

 私は一度だけイタリア南部へ旅行に行ったことがある。

 街の周囲は外壁―つまりは城壁となっており、道には石畳が敷設されている。

 そこに建つ家々もまた石造りを基本とした模式で、道を歩いていると何度も壁のような城壁を、くぐるように進んでいくのが新鮮だった。


 つまりそこにはかつてゲートが設置され、関所のようなものが置かれていたらしいことを観光ガイドが無駄に陽気に説明していた気がする。

 勿論現在ではその名残でしかないのだが、昔は夜間には街の門は閉ざされ、街の中を移動するにも検問のようなものを受けながら移動しなければいけなかったそうで、おおよそ日本で生まれ育った私にはそんな不自由極まりない生活が想像できるわけもなく、なんて面倒な仕組みをしていたのだろう?なんて思ったものだ。


 そこがかつては幾度となく戦火の只中に晒されるような、常に侵略の危機を抱えた状態での生活の光景を、単純に私は想像することすらできなかったのである。



 そして今私の目の前に広がっている光景は、なんというかその、要塞都市の風景そのものだった。


「ほら、そんなとこでボヤっとしてるんじゃないよ。こっちへ来な」


 つい立ち止まって回想に耽ってしまった私を現実?に引き戻したのは目の前の大柄な女性、やっとのことで林から抜け出した私と行き会い、ここまで私を連れてきた――というか今も現在進行形で連れまわされているのだけど、とにかく彼女はサラと名乗っていた。


 灰茶色アッシュブラウンのショートヘア。鳶色(とびいろ)の瞳をもつ彼女。背は私よりだいぶ高いだろうか。

 私も決して背が低い方ではなかったけれど、彼女は180センチにも届くのではないだろう?という位の身長がある。


 一見すればモデルさんのような顔立ちな彼女なのだか、その恰好はありていに言って「冒険者」と呼ばれる格好そのものだった。


 そう、冒険者。

 RPGなどでお馴染みの、あの冒険者である。


 改めて思うところはありすぎで、理解も追い付かない状況も加えると自然と顔には不満イッパイという表情が浮かんでしまっていたらしい。


「そんな顔するなって、もうすぐそこだから。ほら行くよ!」


 そう言って彼女は私の横に並ぶと肩を押しながら歩きだす。

 当然私もそれに合わせて一緒に歩くのだけど、なんだろう?この釈然としない理不尽な状況は?



 ◇ ◇ ◇


 ほどなくして私が彼女に連れられてきたのは街の中央辺りだろうか?

 とにかくその付近にある広場に面した建物だった。

 彼女に促されるままにいくつかあるカウンターのうちの一つに行くと、手馴れた様子で身振り手振りを交えて受付嬢に説明をするサラ。

 それらが一通り終わると受付嬢は革袋と掌大の水晶玉のようなものが乗った台座を私の前に置いた。


「ではこれから貴女には冒険者の登録と、冒険者についての説明を行います」


 やっぱりそうなるわよね。

 ここ1、2時間で何度目かになるジト目で私はただうなずくしか出来なかったのだった。


「まずあなたは冒険者として登録していただかなければなりませんが、登録には5銅貨が掛かります。いえ、御心配なさらなくても大丈夫です。登録に必要な費用は貴女を発見、保護してここまで連れてこられたサラさんへの報酬の中から充てることになりますので」


 そう言いながら受付嬢は革袋を開けると中に入っていた銅貨をサラの前に並べていく。


 そしてそこから5枚の銅貨を自分の手元に移し、サラに視線を向けると


「ではサラさん、この者はあなたが保護し、冒険者に推薦したことに間違いはなく、メンターの務めを果たすことを了承しますか?」



「ああ、私が保護して冒険者に推薦する。メンティーへの責務を果たすことをここに誓う」


 そう言いながらサラは首に掛けていたネックレスを机の上に置くと、受付嬢はそれを水晶の台座の傍らに置いた。


「今サラさんは貴女のメンターになるべくその責務を果たすと誓われました。彼女は貴女に必要なことを教え、導き、冒険者としてやっていけるようになるまであなたの保護者となります。貴女は彼女の庇護のもと彼女に教えを請い、一人前の冒険者になれるよう研鑽を積んで頂くことになります」


 えっと?

 つまりはサラさんに弟子入りしたようなものかしら?


「では冒険者章を発行しますのでこちらに手を出していただけますか?」


 言いながら受付嬢は引き出しから一つ真新しいネックレスを取り出して、水晶の台座のサラのネックレスの反対側に置くと私に手を出すように促した。


「こちらの水晶の上に手を置いてください」


 いわれるままに右手を水晶に置いた瞬間――水晶とネックレス、おそらくは冒険者章が「発光」した。或いは「発効」したのかも知れないけれど、脳内のしょうもない言葉遊びはやめにして、私は観察することに集中した。

 最初は次第に明るくなる電球のように、そして2つの冒険者章は赤い糸のような光で結ばれ、ほどなくして光が消えた。


「はい、結構です」


 にこやかな表情で受付嬢はサラの冒険者章を彼女に返すと、私に登録が完了したばかりの冒険者章を手渡した。


「ではそれを『装備』してもう一度水晶に手をかざして触れていただけますか?」


 言い回しが色々と気になったものの言われるままにする。


「そう、では『ステータス・オープン』と唱えてください」


「す、ステータス・オープン」


 若干噛んでしまったものの水晶からはぼんやりと光のスクリーンが立ち上がりそこには色々な情報が箇条書きのように書かれていた。名前、年齢、種族、身体能力etcなんだかすごい量の情報が光のスクリーンの中に揺らめいている。


「お名前は、エリス・ラスティ・ブルーノートさん。エリスさんでよろしいですね?年齢は17歳」


 ちょっと待ってほしい、私はそんな名前ではなく、真柊(まひらぎ) 慧美(えみ)という、多くはないけれどまあ日本人にありがちな名前だった筈である。

 それに何? 名前に区切り――つまりはミドルネームが入る西洋風な名前になってるだとか、そもそも私が水晶に手を触れただけで名前や年齢といった情報が浮かび上がって、ましてそれが空中に投影されるだとかいよいよもって理解の範疇を超えてしまっている。

 私が答えられないでいると不意に横から


「へぇ、エリスって名前だったんだな。それにしても氏族名もちとは。さすがはエルフってとこだな」


「え?」


 なんだろう?今とんでもないことをさらっと言われたような気がする。

 氏族名?つまりは苗字。いや、違う。そんなことでなくもっと根本的な……


『エルフ』そう、サラは間違いなくそう言った。


 ――私の事をエルフ(・・・)だと。


 エルフってあのエルフ?こう、耳が長く、華奢で魔法だの弓だのが得意なあのエルフ!?

 ハッとして自分の耳を触れてみて、私の混乱はとうとう頂点に達してしまった。


「えええええ!?」


 室内に木霊する私の叫び声もむなしく、どうやら私は気が付けばエルフに生まれ変わってしまっていたようだったのだ。





気が付けばエルフ プロローグ

お読みになって頂いた皆様に、まずは感謝の言葉を。


有難うございます。


今回はプロローグということで少々言い回しならぬ、書きまわしが読みにくく感じることもあったかと思います。次回からの本編からは少しばかり読みやすくはなると思います。

大体1回の投稿あたりおよそ3000文字前後を目安にしておりますが、テンポよく読めるようなキリで分割するために、若干前後するかと。


プロッタもなく突発的に書き始めたこの作品ですが、書きながらにドンドンと増える設定メモなどに戦々恐々としております。

ボリュームを育てすぎて途中で破綻、なんてならないように仕事に合間に書いていきますのでこの後彼女がこの世界でどの様に生きていくのか気になる方は、のんびり付き合ってやって頂けると幸いです。

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