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4叔母さんのお願い

「 養女って。なんで?」

「 性転換した事によって、あなたの生活は、今までと百八十度違う物になるわ。新しい生活を送るのに、不安が少ない方がいいと思うんだけど。どおかな?」


叔母さんは、じっと俺の顔を見てる。

そういや、兄貴が昨日気になる一言を言ってたけど、この事だったんだ。

――本当は、じっくり考えたほうがいいのかも知れないけど、もう俺の中で答えは出てる。

一年と三ヶ月前に、俺の実の両親と双子の姉は、ドライブに行った帰りに事故で亡くなってる。

俺は生まれた時から、原因不明病気による発熱でしょっちゅう入院してるんだ。

その日も入院してて、双子の姉 律が『 夕陽も元気になったら行こうね』と約束してくれた。

――だけどもうそんな約束をしてくれる人はいない。


俺を引きとってくれた兄貴には、感謝してる。だけど、帰ってきても、お帰りって言ってくれる人はいないし、学校であった出来事を話そうにも、兄貴は忙しくて、いつも後でって言われるし、仁も新しい生活に慣れるのに背一杯で、なかなか俺の相手をする余裕がないみたいで、俺はちょっと寂しかったりする。小さな子みたいで恥ずかしいけど。だから、


「 お願いします。」


ペコリと頭を下げる。叔母さんのクスリって笑う声が聞こえた。頭を下げてるから見えるはずないけど、苦笑いしてるのがわかる。



「 頭下げられる事じゃないけど、まぁいいか。じゃ手続き進めておくわね。」

「 わかった。」


話がすんで病室に帰る途中、1人の男の子と出会った。

男の子って言っても、多分俺より3歳か4歳は上だ。身長がとても高くて、180センチあるのかな? 顔はジョーニーズのニノジュンに少し雰囲気が似てるだ。


「 あら林原くん。どうしたの?」

「 瞳子さんこんにちは。クラスの友達の見舞いに来たんです。」

「そうなの。」

「 あのその娘。仁の妹ですか? 」


林原くんと呼ばれた男の子は、俺の方に視線を送りながら、質問してきた。

俺はなんとなく恥ずかしくなって、車椅子を操作して、叔母さんの後ろに隠れた。


「 ああ。違う違う。私の姪よ。去年亡くなった私の兄の娘。夕陽、隠れてないで、出てきなさい。」

「……やだ。恥ずかしいもん。」


俺の一言に苦笑いしながら、林原さんは、俺の目の前にやってきて、自己紹介を始めた。


「はじめまして、僕は、林原拓人って言います。君の名前は?」

「平原夕陽。」


ぶっきらぼうに答えたにもかかわらず、林原さんは、嫌な顔ひとつせず、「いい名前だね」って言って、俺の頭をポンッと撫でた。


「そうだわ。林原くん。お願いがあるんだけど、いいかしら?」


叔母さんは、林原さんに目一杯近づく。林原さんは、若干ひき気味に答えた。


「 いいですけど。」

「 あのね。この娘の勉強みてやってくれない? 入院してるから、学校の勉強遅れてるのよね。」

「 そういう事なら、お安い御用です。」

「 じゃ退院したら、うちに住む事になってるから、その時お願いしようかな。」

「 わかりました。」


俺の知らないうちに話が進んでるし。


「じゃ、夕陽ちゃん。バイバイ。またな。」

「 バッバイバイ!」


俺は、どうにかそれだけ言ったのだった。

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