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16 妬み


「 なんで、あんたみたいなのが、林原拓人さん彼女なの?」

「はい?」


編入翌日。教室に入ったとたんに、気が強そうな()にからまれてしまった。周りには、友達というか取り巻きと思われる男女数名。恐らく、昨日睨んできた連中だと思う。

その()は、緩やかにウェーブした長い髪を、わざとらしくかきあげながら続ける。


「 とぼけんじゃないわよ! 林原拓人さんに彼女が出来たって、夏休みに情報が出回って、私達が、ネットワークを駆使して、調査したら、あんたの名前が浮上したのよ」


周りの連中は、うんうんって頷いてるけど、それって、ストーカーじゃね? ヤバくないか? いや、それより前に。


「……なんで、拓人さんの事知っとんよ」

「 なんでって、林原さんが、この学校の生徒だったからよ。私、去年、お姉さんと一緒にバスケ部の試合を見に行った時、林原さんが、活躍してるの見てから、好きになったの。この学校を受けたのだって、林原さんがいたから。まさか、バスケの強豪校である桃宮高校へ、外部進学なさるなんて、思ってなかったけど」


うっとりとした声で、話してたと思ったら、般若のような顔で、ギロっと俺を睨む。


「 いつか私を選んでくれる。そう信じて、 毎回試合を観に行ってたのに、林原さんは、あんたみたいな、ちんちくりんで、男女(おとこおんな)を選んだのかしら! 納得いかない」

「なんでって言われても」


拓人さんは、『 一目惚れしたんだ』って言ってたけど、本当なのかわからない。

そもそも付き合う事になったのだって、成り行きだもんな。


答えに行き詰まっていたら、彼女の逆鱗に触れたんだろう。噛みつかんばかりに、怒鳴ってきた。


「 答えられないの! だったら、別れなさいよ!」


なんで、そんな理不尽な事言われなきゃなんないんだよ。だいたい、こいつ何様だ。さっきから、拓人さんが、自分を選んでくれるとか、好き勝手な事ばっかり言うてからに! ムカツクし。


「 嫌だ! 別れもん。拓人さんは、俺を選んでくれたんじゃもん! お前みたいな他力本願なやつに盗られたくない!」

「 っ! なんですって!」


――何言ってんだろ。少女漫画みたいなセリフを言うって、どうなん?

だいたい、他力本願って俺も似たようなものじゃないか?


しばらく、お互い睨みあって、膠着状態になってると、長い黒髪を一つにまとめグレーのパンツスーツを着た女性教師――副担の佐藤先生が入ってきた。




「 高宮と愉快な仲間達は、音無妹をいじめてるのかな?」

「 いじめてません」

「あっそ。わかってると思うけど、いじめじゃなくても、口論以上の喧嘩は、ペナルティの対象だからね」

「 はい」

「 んじゃ、さっさと席に着いて。朝のホームルーム始めるよ。田中先生、ご親戚に不幸があって、お休みだから、私が変わりにやるから」


俺と高宮と呼ばれた()とその仲間は、一睨みしてから席に着いた。


はぁ面倒な事になった。厄介な娘に絡まれたなぁ。

これが、俺と高宮さんのトラブルの始まりだった。


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