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夢追人の紡ぐ世界  作者: 匠瞳
第1章 「初体験」
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第1章5 「夢を見たんだ」

ーーあの少女は、いったい何だったのだろうか。


夕食を終え、食器を片付け、部屋へと足を運びながら今日のあの出来事を思い返すタクト。


サヤが風呂に入ってる間に宿題を終わらせに向かう最中だった。


相変わらず今朝の足の痛みが消えたままだが、そんなことすらも思い出すに至らない出来事が起きたのだ。


部屋に入り、宿題に手をつける。


「ーーー終わってしまった。」


宿題の数が少ないため、ほんの数分で終わらしてしまった。

次に頭をよぎるのは、やはり今日のあの少女のことだ。


淡い金色がかった白の髪を風になびかせ、エメラルドの海を入れたような淡い翠の瞳。

別れ際に魅せた純白の翼がこの世ではあり得ることではない、この世の人とは思えないことを物語っていた。


「ソニア、って言ってたなぁ。」


少女はソニアと名のり、サヤとの仲を話し、純白の翼でその場を颯爽と去っていった。


「ーー今夜、会おう?」


ふと、少女が別れ際にタクトの目を見て放ったその言葉が脳裏に浮かび、思い出してしまった。

ソニアという名の少女はタクトにも会っていたような口ぶりでそう言い残していった。


思考を巡らすタクト。その後ろで部屋のドアを開き、入浴を終えてタオルで頭を拭きながら妹のサヤが部屋に入ってきた。


「終わったよー。」

耳に心地よい鼻濁音が流れ込み、サヤがタクトへ話しかける。


「へーい。」


応答し、椅子から腰を上げて着替えをタンスから引き出すタクト。


部屋着を取り出し、部屋のドアを開けて風呂場へと向かう。


ガチャん。ーー部屋に一人になったサヤ。

頭を拭きながら部屋の隅の扇風機に手をかける。

ドライヤーを取り、鏡を見ながら髪を乾かす。


長く美しい黒に染まった髪を丁寧に櫛を入れながら乾かす。

お気に入りのピンク色の部屋着で身を包むその容姿は異性にとどまらず、見た人をみとれさせる美貌であった。


扇風機の作る風で熱を逃がしながら、今日の春の風に身を当てた放課後を思い出す。


「ーーソニア、ちゃん。」


そう、少女は名乗った。タクトと考えることは一緒で、やはりサヤもあの不思議な少女に頭を悩ませていた。


正直サヤはあの少女に思い出がなかった。

記憶の中だだけでなく、アルバムの中にすらなかったのだ。


ここまでくると、少女は人違いをしているのでは。

と、思っていたが、名前を知っており、何故か翼も生えていた。いや、出現したというべきか。

とにかく、普通ではなかった。


そのことを踏まえると、とでもではないが記憶にないことに逆に自分を心配してしまうようになる。


「ーー眠い。今日はもう、いいかなぁ。」


与えられた宿題は学校で済ました為、することは特にない。

あとは寝るか、いつものようにラノベ、アニメ、ゲームや兄と談話などか日々の常だが、今日はやけに眠かった。


ーーいつもよりやけに、、、眠かった。


髪を乾かし終わり、時刻は夜の8時過ぎ。

寝るには早く、しかしすることもない。

頭には少女のことでいっぱいいっぱい。

日直で朝が早かった分の疲れなのか、やけに眠い。


椅子から立ち上がるサヤ。


「ーーぁ、あれ。」


立ち上がると同時に、立ちくらみのような感覚がサヤを襲う。そしてそのまま、二段ベッドの下、タクトの寝床へ身を放りる。


視界がボヤけ、強烈な眠気のような、まるで強制的に夢へと導かれるようにーー、


ーーサヤは眠りに落ちた。


◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌


視界が開き、寝ぼけたような視界がそこにある。


世界がボヤけ、瞼をパチパチとさせ、視界に光の鮮明を求めた、


ゆっくりと、ゆっくりと、


そして、目の前に見える光景に、サヤは息を飲んだ。


「ーーぁう、、うぐふ、。」


そこには兄、タクトの姿が。



いや、タクトだけではない。


漆黒の装束に身を包み、手には禍禍しい大きな鎌。


顔は見れない。そのまっ黒な後ろ姿からはこの者がどういったモノなのか推測ができない。


「ハァ、う、、ぐ、、」


すると、突然タクトの胸あたりから黒い霧状のモヤがではじめ、タクトが苦しみ始めた。


顔が強ばり、しかしそれがどんどん冷めていく。

まるで、生気を吸い取られたかのように。


ーーそして、


「お疲れ様」


「ーーえ、」


ズシャっ!


黒い塊から横滑りに振られた大鎌が、タクトの首をはねた。


その光景にサヤが息をのむ。事態の把握が遅れる。そしてそれが追いついた時、


「ーーぁ、」


世界に黒いカーテンが降ろされた。


◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌


「うぁぁぁぁ!!」


ベッドの上で豪快に叫ぶサヤ。


「サヤっ!サヤっ!ーーッ、どうした!しっかりしろ!」


頭を抱え、恐怖に怯えるかのように蹲るサヤ。

その絶叫に焦り、風呂に入っていたタクトがタオル一枚を身にまとい、サヤの元へ駆け寄り声をかける。


「ーーぁ、あぁ、ご、ごめん。もう大丈夫よ。」

「どうしたよ急に。ーー怖い夢でも見てたのか?」


息が荒いサヤは整える。そして、落ち着きを取り戻し、額の汗を拭う。

身体も汗でグッショリになり、風呂の意味が消された。


そして、サヤはふと、タクトの方を向く。


「怖い夢、そう、だったのかな。」

「ーー?」


ーーただの悪い夢。ただの悪夢。すこし過剰に反応したが、たかが夢だ。そう、思い込んでしまえばいい。


「まぁ、少しはリアリティとファンタジーがコラボした、恐怖な体験ができたかも。」


そう、タクトに微笑しながら口を開くサヤ。


その笑顔にはタクトも安堵するが、心配するには尽きない。


「なら、いいんだけどな。てか、俺のとこで寝転がってまで寝るとか、お前らしくもねぇ。疲れてんのか?」


自分の寝床で寝る妹にそう問う兄のタクト。

このように、時々サヤは疲れからタクトの寝床に体を預け、そのまま睡眠するということも少なからずあった。

大概はアニメやラノベの見すぎで疲れ、「ちょっときゅうけーい」などと言って、そこまで深刻な感じではなかった。


が、今回はどこか違った。

風呂場まで聞こえた絶叫に、流石に焦りを感じるタクト。


ーーいつもとは違う。


「ちぃっとね、怖い夢見ちゃったよう、てへ。」

「まぁ、それならいいんだが、だったら、今日はもう寝とけ。疲れてんならその方がいいだろ。」


「そうするう。ーーそう、夢だったんだよね。」


「ーーん?」


「あたし、夢を見てたんだよ!うん!夢だ夢だ!」


そう言い残し、二段ベッドの上、サヤの寝床へ梯子をつたってのぼる。


ふと、サヤがタクトを見る。


「ん?ーーおやすみ。」

「ーー、うん!おやすみー。」


なにかあったのだろうか。そう思える表情のサヤと目が合うタクト。


おやすみと告げ、部屋の電気を消す。


ーー、


ーーー、


ーーーー、



夜に刹那が飛び、安寧の刻がすぎる。


タクトの寝息が下で聞こえる。


「ーー、夢、を見たんだよね。」


そう口ずさみながらも、

再び瞼が重くなり、夢の世界へと堕ちる。


ーー今日もまた、終わろうとしていた。



やっと1日目が終わった感じです。


そろそろ本題に入るので、ここで飽きずにどうかご試読お願いします!

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