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夢追人の紡ぐ世界  作者: 匠瞳
第1章 「初体験」
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第1章 4 おかしな少女

アドバイスもらっての次話となります。

他にもおかしな点どんどん指摘お願いします




―――一人の少女を前にして、その場でただ佇む兄妹。

春の夕暮れが眩しくも柔らかく、部活生の輝く汗を照らし、帰る生徒を気持ちよく家へと送り返してるようだ。


その少女は橙色の日差しと、春の心地よい風が送り込んで来た使者のようだった。

少女の口から初めて発せられたのは、妹との過去を想像させる言葉だった。

しかし、サヤは呆然とした顔をみせる。


「えー、と、会ったことあるかな?たぶん、人違いじゃない?」


最もな答えだ。今のサヤにはそう感じるだろう。

二人の間柄を知らない兄のタクトが口を挟むことが出来なかった。

二人の美少女をただ見守るしかない、第三者になってしまっていた。


「⋯⋯⋯覚えて、ないの?」


少女の表情がかすかに曇り、サヤは焦りを見せる。

タクトからしたら、抜けている妹のど忘れかなにかだろうと、とくに問題視はしなかった。

頭を悩ませるのは少女の姿だ。

薄い純白の肌着のような装束に裸足。

ランドセルやバッグらしきものは背負ってなく、学校帰りの姿を思わせない軽い服装だった。

兄の問題はサヤの今の状況よりは軽視できるものだ。サヤは自らの発した軽い一言で悪い空気を作ってしまっていた。


「えー、と、ほんとにごめん。私どっか抜けててね、あなたのこと忘れちゃったのかも。あ、名前!お名前なんていうのか教えてくれない。」


これで解決できるとは思ってもないが、とにかく会話でこの場の空気を変えてしまいたい一心の言動だ。

少女はふとサヤの目をみつめ、一度目をつむり、顔を上げた。


「私のなまえ⋯⋯は、 ソニア。」


「ソニア、ちゃん?」


初めて聞いた名前だ。と、サヤの表情が物語る。

見た目同様、少女の名前は外国人っぽい名だった。


「ソニアちゃん。ソニアちゃん。⋯⋯ん〜、、ソニアちゃん?」


しかし、名前を聞いてもなお、サヤは少女を知らないといった態度だ。

少女は続ける、


「楽しかった。⋯⋯また、遊びたい。」


「うえぇ!ほんとに!?私、あなたとそんなに遊んでたの?」


少女の思い出にはサヤがいるらしい。

サヤの名前を覚えており、遊んだのが楽しかったという。


ヒュォーーーーー・・・


ふと、強い春風がふいた。

三人の髪を撫で、会話を切り裂いて過ぎていった。


「⋯⋯⋯帰らなきゃ。」


「・・うぇ?」


突然の帰宅を告げられ、気の抜けた吐息をしてしまった兄と妹。

あっさりと話を切られ、これでよかったのかと呆然とするサヤ。


「え、とー、うん、さ、よなら。」


「うん、さよなら、サヤ。と、お兄ちゃん。」


「うぇ?あ、あぁ!じゃーな。」


まさか自分の存在を覚えていたのかと、タクトは急な別れの告げにごもってしまった。

ともあれ、最悪の出だしからここまでたどり着けたコミュ障の兄妹からしては上出来であった。

コミュ障が会話の中で最も心が落ち着く瞬間。

会話の途切れ、もしくは別れを告げられるより他ない。


少女は二人に背を向け、てくてくと歩き出した。

それを見送る二人。胸をなでおろすようにホッとしていた。


ーー次の瞬間だ。


ファサァ、バサッ!


「・・・えぇーー!!!?」


少女の肩甲骨からは、天使のような、色が白一色。こんなにも白なのかと目を麗されるほどの純白の翼が両肩から飛び出してきた。いや、出現したのだろうか。

ホッとしたつかの間の衝撃に二人は、口をあんぐり、その場で足を固め、少女の変わりすぎた容姿をただ凝視。


「⋯じゃぁ、また今夜会えるといいね。」


不思議な発言を告げ、可愛らしい笑顔で手を振る少女。

そのまま上昇。翼を使い慣れたように羽ばたかせ、空に軌道を描き、空高く舞ったと思えば、建物の陰に消えていった。

残されたサヤとタクトは、ただ見守り、少女が消えると、その言葉通り、サヤの方が息を吹き返した。

衝撃映像を前に息をすることを忘れてしまっていた。


「・・・アハハ、ハハ⋯。」

会話を切ったのはサヤの不可思議な微笑。

言葉にすることができず、ただただ目の前の衝撃をどうにかしようとしていた。

アニメ好きからしたら信じたいような信じられないような、感情がきりきり舞いだ。

ましてや兄はそこに魂あるのだろうかと疑うほどの固まり具合。

二次元の中の容姿を目の前に頭がいっぱいになっていた。

その場で二人は固まっていたが、サヤが切り出す。


「あ、あんなことってほんとにあるんだねぇ!アハハハハ。、、、あ、あたし達も、帰ろっか。」

頼りない兄の肩を二度叩き、正気に戻して帰宅を仰ぐサヤ。

その行動で兄はやっと息を吹き返した。


「はっ、、! あ、あぁ、そうだな。帰るか。」


「うん、帰ろ。」


二人の刻が戻り、何事もなかったかのように帰り道を歩き出した二人。

これは家での話題になること間違いなしだ。


「ソニアちゃん、、、かぁ。」


ふと少女の名前を口にしたサヤ。


昔遊んでいたという口ぶりに頭が悩まされる。

また会えることを望むだろうか。それともこのまま別れて記憶から少女の姿が、先ほどの出来事を忘れたいと思うべきか。悩むサヤ。


「アルバム、あるかなぁ。」


とりあえず手当り次第彼女のことを調べ、それでもわからなければ諦めよう。と、心の中で開き直るサヤ。


「さっきのことは、秘密にしないとなぁ。翼が生えてる少女を見たとか、信じられる見込みないし。」


少女との接点のないタクトは、真実を語ることを諦め、今日のことはサヤに任せていた。


ヒューーー、、、心地よい、柔らかい風が吹いた。


夕暮れは綺麗で、帰り道を橙色に輝かせながら、二人の帰り道を見守っている。

何もなかった一日が一変。不思議な少女との出会いで波瀾な一日だった。


出会って話して翼で飛び立っただけと思う人もいるだろうか。?

コミュ障の二人が初対面にあんなに話せたのは、二人にとっては波瀾である。


ともあれ、帰り道。二人は歩道をカップルのように足並みを揃えて歩く。


「あ、今日の晩ご飯は一緒に作るからな。忘れたとは言わせないぞ?」


「わかってるよぉ。忘れるわけないじゃん。楽しみにしていますぅ。」


兄と妹の仲の良い会話が飛ぶ。

先ほどの会話はしないと決めたようだ。


幸せを感じさせる会話を語りながら歩き、家へと足を進ませる。


ーーー タクトのその足は今朝の痛みを忘れていた。


「ただいまぁ。」と、タクトが言うと、

「おかえりぃ。」と、サヤがふざけて応答。

仲睦まじいやりとりだ。


「今日も学校、おっつかーれさーん。」


二人の声が玄関に揃って響く。

靴を揃え、靴下を脱ぎ、制服を脱いでハンガーにかける二人。


「ハンバーグ、、で、いいか?」

「うん、そうしようか。」


部屋着に着替え、二人でキッチンに並ぶ。


外も暗くなってきている。


ーーー家から晩ご飯の支度をする、いい匂いがたちこみはじめた。



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