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〇日目.1 出会い
チリチリと陽射しが肌を灼く中、公園のベンチで一休みしていると、風変わりな人物から声を掛けられた。
夏なのに、黒いフェルトハット、黒いスーツ、白いシャツ、手には年季の入ったステッキ、それを持つ手は白い手袋という、記号の塊のような人だった。
帽子を脱ぎ、会釈と隣に座る許可を求めたその人は、今も一緒に座っている。
しかし、お年寄りの退屈しのぎの相手のつもりだった僕は面喰らっていた。
その人が語る言葉を理解出来ないでいたからだ。
僕の勘違い、聞き間違いだったかもしれない。そう思って、先程と同じ言葉を口にした。
「……もう一度、いいですか?」
「はい。ご理解いただけるまで確認されるのは、大変結構なことでございます」
先程と何ら変わらない問いに対して、嫌悪感を出すこともなく、それどころか少しばかりの喜んでいるようにも感じる。
黒いスーツを着た初老の人物は、先程と同じ言葉を、同じ抑揚で繰り返した。
「異世界旅行に興味はありませんか?」
蝉の鳴き声が五月蝿くなり始めた夏の朝、僕は異世界文化交流会会長を名乗る人物と出会った。