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No.9 罠

息を切らしたサガミが立ち止まったのは、シオンの港に並ぶ建物の路地裏だった。


「何で、逃げるの?」


サガミが大きく息を吸い込んでから言った。


そのサガミの言葉に、険しい表情の男がにらみをきかす。


「父さんは、どこ?」


サガミは大きく一歩、前に出た。


「さぁな。俺は知らねぇよ。それより、羽は持ってきたんだろうな・・・?」


男の態度に、サガミはイラつきを覚える。


「父さんの無事が分かるまでは、羽は渡さない。」


「ふざけるなっ!羽が先だ!渡せ!!」


男は、サガミの胸ぐらを鷲掴みにして怒鳴った。


「ふざけてるのはそっちだっ!父さんを返せ!!」


サガミは、男の胸ぐらを鷲掴み、怒鳴り返した。


すると、逆上した男が懐から銃を取り出し、その銃口をサガミの額にあてがった。


サガミは、男の胸ぐらから手を離し、歯を食いしばった。


「なめんなよ、くそアマ!」


「私を殺せば、羽は手に入らないけど、いいの・・・?」


「なんだとっ!?」


男は、サガミの額に当てている銃口を強く押し付けた。


サガミの表情が歪む。


「私が今、羽を所持しているとは限らないでしょ・・・?どこかに隠しているかも・・・」


そのサガミの言葉を遮るように、サガミの背後から声がする。


「その心配はない。身包みはがして確認するまでだ。」


どうやらサガミの目の前にいる男は、自分の仲間たちがいるこの路地裏へとサガミをおびき寄せる役目をしていたようだった。


サガミは、自分の行動の軽薄さに後悔した。


よく見れば、敵は全部で5人いる。


明らかにサガミにとっては不利な状況だった。


どうしようかと、頭の中で思考を巡らせているが、一向に名案が浮かばない。


「大人しくしていれば、命までは奪わない。」


その男の言葉を聞いた瞬間、サガミは背筋に悪寒のような寒気を感じた。


しかし、それは怯えからくるものではなく、心の底から嫌気を起こしているのだ。


もちろん、サガミが言われた通りに大人しくなど、しているわけがなかった。


サガミは、背後にいる男が伸ばしてきた右腕を両手で瞬時に掴むと、目の前で銃を持っている


男に向かって、背後の男を投げ飛ばした。


その間にその場を逃れようとしたサガミだったが、別の男の容赦ないパンチが飛んできた。


それをまともにくらってフラついたサガミに、もう一度男の拳が飛んでくる。


しかし、それはサガミに当たらなかった。


再び殴られることを覚悟して目を閉じたサガミだったが、覚悟したはずのパンチが飛んでこない。


サガミは恐る恐る目を開けた。


すると、パンチしようとした男の腕を誰かが後ろから掴んでいる。


「サガミ、こんな所にいたのかよ。いきなり走って行っちまうから、何かと思うだろう。」


そこにいたのは、サガミの危機的状況を知ってか知らずか現れたカイだった。


サガミは、思わぬ救いの手に、ただ唖然としている。


「何だ、てめぇはっ!?邪魔立てすると、ぶっ殺すぞ!!」


カイに腕を掴まれている男が、凄い剣幕で怒鳴った。


しかしカイは、


「こんな人気のない所にいるから、チンピラに絡まれるんだぞ。」


男のことは、完全に無視している。


そんなカイの態度に、男は顔を真っ赤にして逆上する。


「てめぇ・・・!!!俺をバカにしやがって!!」


そう叫びながら、男はカイに掴まれた腕をほどくと、素早くカイのみぞおち目掛けて拳を下から振り上げた。


しかし、その拳をカイはいとも簡単に左手で受け止めると、


「あんた、うるさいよ。」


と言って、その掴んだ男の拳で、男の顔面を殴りつけた。


男は、鼻血を出しながら、その場にへたり込んだ。


それを合図にするかのように、他の男たちもカイに立ち向かって来た。


しかし、彼らもまるでカイに弄ばれるかのようにして、倒されていった。


そして、カイとサガミの目の前には、銃を持っている男一人となった。


すると、


「あ!」


カイが、その男を指差して叫んだ。


「あんた、どっかで会わなかったか?」


その、カイの言葉に、


「お、お前は、あの時のバ・・・・」


と、男が反応したが、その口をカイは素早く塞ぎ、その手から拳銃を取り上げると、


「しぃぃっ!」


と、人差し指を口元に立てて笑顔を浮かべた。


「思い出したよ。この間、サガミの家に爆弾投げ込んだ奴だ、こいつ。」


男の口を塞ぎながら、カイはサガミに言った。


「こいつが、そうなの!?」


サガミは、抜けていた気を一瞬で取り戻すと、ドスドスと音が出るくらいの迫力の足取りで、カイに口を塞がれた男の前に歩み寄った。


男は、そのサガミの迫力にひどく怯えている。


「お前・・・!ただで済むと思うなよっ!!」


そう言って、サガミは男の腹を勢い良く蹴り上げた。


男は低い声で唸る。


「父さんは、どこなの!?早く、答えろ!!」


そのサガミの圧倒的な迫力に、男はうんうんと頷いている。


カイが、それを見て男の口から手をどけた。


「カ、カーザっていう医者の所だ!・・・・・・お、俺は、ここにサガミをおびき寄せるように言われただけなんだ!だから、許してくれ!あの爆弾だって、俺が考えてやったことじゃねぇ!!俺は命令されてやっただけだ!本当だ!!」


男の瞳は必死だった。


とても偽りを述べているようには見えない。


その瞬間、パーンッ!!という破裂音が響いた。


辺りを見渡しても、人影がない。


「ちょ、ちょっと!!どうしたの!?」


サガミが叫んだ。


破裂音の後に、男が目を見開いてその場にうつ伏せに倒れこんだのだ。


その口からは血が流れ出ている。


「う、うそ!何なのこれは・・・!?」


「誰かに撃たれたみたいだ。」


カイが、男の体を起こしながら言った。


その表情は、今まで見たことのないような真面目なものだった。


「死んじゃったの・・・?」


サガミが、カイに恐る恐る訊ねた。


すると、


「・・・あぁ、もう息をしてない。」


カイは神妙な面持ちで答えた。


サガミの顔は一気に青ざめた。


「とりあえず、この場を離れたほうが良いな。」


と、カイが言った瞬間、どこからともなく銃弾が二人に浴びせられた。


地面に当たった銃弾が、砂煙を起こす。


サガミをとっさに護っていたカイが、


「サガミ、走れ!」


と叫ぶと、サガミの腕を引いて走り出した。


二人は、全力疾走でその場を離れ、なんとか難を逃れた。

こんにちは。作者のJOHNEYです。投稿が少し滞りがちで申し訳ありません・・・。この後も、少しお時間頂くことになるかもしれませんが、どうか見放さずにお願い致します(汗)

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